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スモールトーク雑記

■ヤモリとブス猫 2013.10.27

夜、風呂に入っていると、窓にヤモリがはりついている。白い腹を窓にくっつけて、何か目論んでいるようだ。

窓には、小さな虫たちがいて、羽根をばたつかせている。どうやら、それを狙っているらしい。

夜、窓に虫が集まるのは、暗闇の中で、窓から洩れる灯りに、虫が惹きつけられるから。

つまり、我が家の小さな風呂窓は、ヤモリの狩り場というわけだ。

それにしても、ヤモリの身体能力恐るべし!長時間、疲れもスキもみせず、窓ガラスに張り付いている。

それがいかに凄いことか、ヤモリの姿をそのまま、自分の姿に置き換えてみると、よくわかる。

つまり・・・

いい歳したおっさんが、両手両足に吸盤を装着し、風呂場の窓ガラスに張り付いている!?ただのデバガメ、変態だが、問題はそこではない。

過酷な重力に抗して、垂直方向の支えなしに、水平方向の吸着を頼りに、ぶら下がる・・・これで一体、何分もつというのだ?

ところが、ヤモリはどうだろう。そんな重力地獄をものともせず、切り立った垂直面を、地平面を歩くがごとく、シャカシャカ歩き回っているではないか。

そして、獲物が射程距離内にはいると、長い舌でペロリ!

こりゃ凄い!

ところが、くだんのヤモリは、プレデター(捕食者)としてはいまいち。

というのも、僕が見た限り、ハンティングに成功したのは一度だけ。たいてい、最後の「舌でペロリ」で逃げられている。

ヤモリの静から動への急峻な立ち上がりは、驚くべきものがあるが、相手の虫たちも、負けず劣らず俊敏だ。弱肉強食世界は厳しい。だから、みんな真剣なのだ。

少しは見習わなくては。

そんなある晩のこと、寝ていると、外でバリバリ異音がする。風呂場のあたりだ。

懐中電灯をもって、現場にいくと、エコキュートのヒートポンプのプロペラに、雑草のつるが巻き付いている。それがひっかかって異音を出しているのだ。

眠くて寒いのをこらえながら、プロペラにからんだつるを排除した。

そのとき・・・

ヒートポンプのすき間にヘンなものを見つけた。

なんと、あのヤモリではないか!

よくみると、目をつぶっている。どうやらご就寝中らしい。

それにしても、なぜこんな狭苦しいところに居るのだろう。理由はすぐにわかった。ヒートポンプを触ると暖かいのだ。つまり、床暖房!

エコキュートは、夜、電気料金が安いときに、電気でお湯をわかすシステム。だから、夜中に稼働する。その間、ヒートポンプのモーターも回転するので、その余熱で、上部が暖かくなるわけだ。

しかも・・・

ヒートポンプのすぐ上に、風呂の窓(ヤモリの狩り場)がある。距離にしてざっと30センチ。

窓でハンティングした後は、自由落下にまかせて、ヒートポンプに直行。そのまま、床暖ヒートポンプで快眠。

ヤモリにしてみれば、願ったり叶ったりのスポットではないか。

貧乏な我が身を思うと、家賃を徴収したいくらいだ。

それにしても、こんないいスポットをよく見つけたのものだ。近場のヤモリ不動産で、我が家を斡旋しているとは思えないから、「食事&宿泊が徒歩1秒圏内→超お得」に気付いたのだろう。

つまり、あんな小さな頭で、「一石二鳥」を理解している?これは驚きだ。

そう思うと、このヤモリが急にいとおしくなった。いつか、連れ合いを見つけ、子供をつくって、家族で住むのだろうか?ヤモリにそんな習性はなかったか・・・

翌朝、カミサンにこのことを話すと、いつもの責任感で、家の外のつるを一掃すると言い出した。それはそれでありがたいのだが、ヤモリを驚かしたり、害を与えないよう念を押しておいた。

使命感に燃えた働き者なので、ゴキブリにしろ、何にしろ、家に害を与えるものは、容赦しないからだ。

そういえば、4年前のゴキブリ事件は今も謎のままだ。あれは不思議な事件だった。今でも思い出すと、深く考え込んでしまう。

翌日、帰宅して、カミサンに「ヒートポンプのつる」の件を聞いた。つるは完全に一掃したという。

さすが。

次に、あのヤモリのこと聞いた。すると、カミサンは、驚くべきことを言った。

「シッポがなくなっていたわよ」

僕は動転した。

トカゲにしろヤモリにしろ、何かに襲われて命が危なくなると、シッポを切り離し、敵がそれに気を取られているスキに、その場を脱出する。これを「トカゲのシッポ切り」という。

ということは、あのヤモリは命が危なかった!?

猫にでも襲われたのだろか?

近所にタチの悪い猫がいて、僕の自動車のボンネットの上をよく徘徊する。エンジンの余熱で暖かいので、床暖房だと思っているのだ。おかげで傷だらけじゃないか。

それにしても、あのブス猫(メスかどうかも判らないが)ぶくぶく太って、ふてぶてしい面構えで、じつに憎たらしい。

きっと、あの猫にやられたのだ。そう思うと、ブス猫に腹が立つと同時に、ヤモリが不憫になった。

その後、風呂に入って窓に目をやるのだが、あのヤモリがいない。体調でも崩したのかな。それとも、あのブス猫にやられたのかな。

というわけで、飼っているわけではないが、あのヤモリに情が移ってしまい、今は僕の心の家族になっている。

それにしても、こんなことで時間を費やすとは・・・いよいよ焼きが回ったかな?それとも、断酒のせい?

by R.B

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