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週刊スモールトーク (第97話) パソコン進化論Ⅱ~汎用から専用コンピュータへ~

カテゴリ : 科学

2007.09.30

パソコン進化論Ⅱ~汎用から専用コンピュータへ~

■青天の霹靂

2007年9月12日、安倍晋三首相は突然、辞任を表明した。参院選の歴史的敗北、閣僚の不祥事、国民の辞めろコール、与党と野党のステレオ集中砲火を浴びて、燃え尽きてしまったのだ。とはいえ、安倍首相本人の過失やスキャンダルは見あたらず、ちょっと気の毒な気もする。

その後すぐに、世間の目は後継者問題に向けられた。騒動直後は、小泉内閣、安部内閣を内から支えてきた麻生氏が大本命だった。ところが、最強の対抗馬が現れる。なんと、元首相の小泉純一郎氏。

そして、一夜明けた9月13日、事態は急展開する。福田氏が名前が急浮上し、翌9月14日には、総裁選に出馬表明したのである。この時点で、自民党内派閥の指示を受けた福田氏は、麻生氏を圧倒、大本命となった。一夜にして、日本国首相の大本命が入れ替わったのである。まさに、政治の世界は一寸先は闇。何が起こるかわからない。

一方 ・・・

青天の霹靂はコンピュータの世界でも起きるかもしれない。たとえば、何十年も君臨したデファクトスタンダード(事実上の標準機)が入れ替わるとか。そう、パソコンがコンピュータの主役から滑り落ちる ・・・ かつて、日本のデファクトスタンダード「NEC PC-98」が消えたように。

1990年代初頭、PC-98が世界標準のIBM PC(DOS/V)に駆逐される、とふれ回っていると、
「98がなくなる?あんた、バカじゃないのか」
と言われた。
そして、数年経った1997年の暮れ、PC-98は静かに退場した。

工業製品はシェアが高いほど有利である。大量仕入れで部品が安く買え、量産効果でコストダウン、結果、販売価格が劇的に下がるからだ。つまり、数の論理。PC-98が主役を降りたのは必然だった。ところが今、その矛先がIBM PCに向けられている。パソコンがコンピュータの主役から引きずり下ろされようとしているのだ。

■発熱問題

少し前、秋葉原でアキバ系の仕事をしているS君が遊びに来た。以前、勤務していた会社の元部下である。S君の会社は、7年間で売上が2倍、店舗販売もネット通販も大繁盛。おかげで、パソコンの設置台数が300台を突破したという。一方、急増するサーバーに頭を抱えていた。サーバーとはデータを一括管理するコンピュータ(パソコン)のことである。

多数のサーバーが吐き出す熱風が、オフィスに滞留し、冷房が効かないのだという。秋葉原ビル街の灼熱地獄が、室外機の冷却能力を超えたのだろう。恐ろしい話だ。S君は、システム管理者としての辛い立場を2時間もぼやきつづけた ・・・

S君:
「とにかく、パソコンの数が半端じゃないんで、発熱と電気量がすごいんです。もうすぐ、ビルの許容電流を超えるんですよ。なので、電気を食う機器を起動するときは、他の機器の電源を切るとか、もう、何やってんだか ・・・ 何かいい手はないですか?」

「メインフレームはどう?」

S君:
「メインフレーム?昔流行った汎用大型ってやつですか?今どき、古いでしょ。だいたい、汎用機と発熱と何の関係があるんです?」

「パソコン100台より、汎用機1台のほうが、電力も発熱もスペースも少なくてすむ。100馬力の自動車を作るとして、1馬力のエンジン100 基より、100馬力のエンジン1基の方が効率がいいし、燃料も節約できる。それと同じ理屈」

S君:
「うーん、わかったような、わからないような ・・・」

「だいたい、100台管理するのと、1台管理するのと、どっちが楽だと思う?それに、汎用機の信頼性は抜群なんで、めったにダウンしない。パソコンは、年中落ちるけどね」

S君:
「なるほど、管理の手間が減るのはありがたいですね。でも、そんなに良いものが、なんで流行らないんですか?」

「そりゃ、費用だよ。パソコンでシステム組むほうが、はるかに安い」

S君:
「えっ、費用?手間が省けりゃ、おカネなんかどうでもいいですよ。うち、ぜんぜん儲かってますから ・・・」

「・・・」

というわけで、今のパソコンは四面楚歌、歴史的な危機にある。かつて、駆逐したはずの大型汎用機までがパソコンを脅かしているのだから。だが、最終的にパソコンを破滅させるのは次世代モバイルコンピュータだろう。このちっぽけなコンピュータは、10年以内に、パソコンをコンピューティングの王座から引きずり下ろす。

そのキーテクノロジーになるのは、
1.専用コンピュータ
2.ウェアラブル(wearable:身につける)
3.リーン(lean:ぜい肉のない)

■専用コンピュータ

最近、ウィルス対策ソフトが肥大化したせいで、パソコンの動作が異常に重くなっている。おかげで、ある業務がお手上げの状態。通常のデータベースで扱えない特殊なデータ群から新しいデータを作成するソフトなのだが、そもそもが、重い。データを作成、編集した後、データ生成に20分もかかる。

ところが、ウィルス対策ソフトをインストールしたら、40分以上かかるようになった。一文字訂正するだけで40分!?しかも、今流行のデュアルコアプロセッサも効果がない。すべての処理に順番があり、並列処理できないのだ。そこで、編集をまとめて行い、目視でチェックし、データ生成処理の回数をできるだけ減らしている。都合の悪いことこの上なし。もし、データ生成が1分で終了したら、作業効率は飛躍的に向上するのに ・・・ 金に糸目はつけないから、なんとかならないものか?

たぶん、今のパソコンではムリだが、カスタマイズすれば、何とかなるかもしれない。ということで、アランチューリングを真似て、先の「データ生成」専用の仮想コンピュータを考えてみた(理論ではなく実装手段)。

まずは、CPU(頭脳部分)。シングルコアでクロック数が最大のものを選ぶ。先のデータ生成処理は、データ処理の順番が決まっているし、入出力処理もないので、並列処理の意味がないからだ。

次に、回転数とシーク速度が最大のハードディスクを選び、RAID0を組む。RAID0はストライピングと呼ばれ、複数のハードディスクに分散して書き込むので、速度は劇的に向上する。信頼性に劣るが、こまめにバックアップすれば問題ない。つまり、スピード最優先。

最後にOS。このデータ処理は、ディスクからデータを読み込み、参照し、加工・統合するだけなので、入出力処理や他のサービスはいらない。だから、高機能なWindows、Mac OS、Linux は不要。シングルタスク・シングルユーザーのOSで十分だ。じつは、単一アプリケーションソフトを”爆走させる”には、これが一番速い。たぶん、Windowsとは1桁は違うだろう。

さらに、先のアプリケーションソフトを書き直す必要があるので、C++言語の開発環境も必要だ。以上、ハード、OS、アプリケーションソフトを極限まで最適化すれば、たぶん、100倍以上は高速になる(と思う)。この激速マシンをインターネットから孤立させ、ウィルス対策ソフトを取り除けば ・・・
20分÷100=12秒!素晴らしい!これこそ、究極のリーンコンピューティング(lean:ぜい肉のない)。ところが一つ問題がある。そんなOSも、C++言語開発環境もこの世に存在しない。

現在のパソコンは、ハードはカスタマイズできるが、OSは選択の余地がない。Windows、Mac OS、Linuxから選ぶしかないのだが、いずれも、マルチタスク仕様。世界中どこを捜しても、シンプルで高速なシングルタスクOSは存在しない。OSさえ、選択できれば、アプリケーションを100倍高速にできるのに。個人的には、この需要は少なくないと思っている。

ということで、「専用コンピュータをカスタマイズ」するビジネスをやりませんか?仕様は次のとおり。
1.ハードをカスタマイズできるように、機能をモジュール化する。
2.メモリ容量とファイル容量の無限ナシ(論理的に)。
3.CPUとメモリ、メモリとディスクを独立した超高速バスでつなぐ。
4.オーバーヘッドがミニマムのシングルタスクOS。
5.C++言語開発環境

ん~、これって自作スーパーコンピュータ?一見、ムチャクチャな話だが、自作パソコンの市場があるのだから、自作スパコンもアリかも。どうせ、誰もやらないだろうから、ニッチでオンリーワンなベンチャー創業者として歴史に名を残せるかもしれない。もちろん、破産する可能性もあるけど。

というわけで、何でもかんでもパソコンですませる時代はやがて終わる。次世代コンピューティングは、
汎用コンピュータ → 専用コンピュータ
とパラダイムシフトするだろう。そのとき、コンピュータは再び多様性と夢をとりもどすに違いない。

《つづく》

by R.B

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