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週刊スモールトーク (第95話) 夢分析Ⅲ~深層心理~

カテゴリ : 思想

2007.08.19

夢分析Ⅲ~深層心理~

■夢5話・天空の家

絶食していたら変な夢を見た。家にいる。父が弱っている。母は元気だ。まだ大学生らしい。父と2人でTVを見ているが、なかなか面白い。内容はこうだ。2人の娘がいる。2人は遊びに行ったまま行方不明になった。じつは、2人は夢の中にいるのだ。ボーリングで人を倒していたら、その罰として、夢から目覚めなくなったのだ。原因は、同じ夢の中にいる中年のおばさんだ。顔は見えないが、夢世界に巣くう魔女らしい。このおばさんのせいで、2人の娘は元の世界には永遠にもどれない。

TVを見た後、大学に行く。今日は遠足だ。みんなで自転車に乗り、ペダルを漕ぐ。漕げば漕ぐほど垂直に浮き上がり、やがて、天空に達した。空中に浮かぶ大きな家がある。中に入って、宴会場らしき大部屋を通り、最上階にいく。そこに、古めかしい小道具に囲まれた3人の老人がいた。2人は爺さん、1人は婆さんだ。

3人は人生を懐かしんでいる。人生はあっというまだ、とかなんとか。そこで、彼らに説教をする。
「そうやって郷愁にひたっていれるだけまだ幸せだ。戦争に行った者はうかばれない」
すると婆さんは切り返す。
「あんたは、前世は兵隊だったのさ」
そういえば思い出した。名前は○○××。陸軍歩兵。シンガポールにて戦死。顔写真まで思い浮かんだ。血の巡りの悪そうな顔だった。大した人生ではなかったようだ。

この夢は、未来ではなく、特異な過去、前世を再現している。予知夢ならぬ、前世夢?最初の夢に登場する2人姉妹の話も面白い。2人が行方不明になった理由は、2人が夢から覚めないから、というくだり。
「現実世界から2人が消えた」
という事実が、
「夢の中にいる2人にとって現実世界が消えた」
にすり替わっている。つまり、「見失った」ことは同じなのだが、主体が客観(現実世界)から、主観(2人の娘)にすり替わっている。こんな複雑な筋書きを寝ている間に思いつく?夢の深層心理はかくも深淵である。

■第6話・復讐される魂

次は、シリアスで怖い夢。この夢を見た知人は、中学生の時、父を病気でなくしている。

大きな鏡の扉を開けると、父がベッドに横たわっていた。身体を触ると、しびれるくらい冷たい。父は告白する。
「私は殺されたのだ。私を利用しようと、ちょろちょろ動き回っていた邪悪な奴らに。私は奴らに踊らされていたのだ。よく聞きなさい。自分がうまくいかないのを不幸だと思い、社会が悪いとか、運がないからだとか、人のせいにする人々は、来世こそ恵まれて成功してやるという魂に復讐されているのだ

この夢を見た知人は、目覚めた瞬間、いつもの夢とは異質のものを感じたという。別の世界にいる父が、自分に語りかけてくれたというのだ。この知人は、宗教が大嫌いで無神論者だったので、耳を疑った。

それにしても、父が語った最後のセリフはなんとも印象的だ。そもそもこの知人は、読書などしないし、詩や文学とはおよそ無縁だ。目の前で小学生が、シェークスピアの戯曲をそらんじるような違和感があった。夢の世界の支配者は、個人のパーソナリティ(知能+性格)とは別次元にいるのかもしれない。夢の深層心理は深く複雑だ。

この夢は、予知夢、前世夢とも違う。ただ、何か重要な事を伝えようとしているように見える。霊が存在するか分からないが、あえて命名するとしたら、霊界夢?コワイコワイ。

■第7話・逆転する時間

以前、フランクフルトからロマンティック街道(ロマンティシュシュトラーセ)を抜け、ローマまで行ったことがある。ロマンティック街道は、街道沿いに美しい街が並んでいる。中でも、ローテンブルクは中世にタイムスリップしたような錯覚を覚える。街はずれのトイレに行くと、中世の衣装そのままの老婆が立っていた。少し、多めにチップを払うと、老婆はいたくよろこんで、
「Danke Shane!Danke Shane!Danke Shane!」(ありがとう)
童話のような世界だった。

昼食をとるために、レストランに入り、テーブルについた。するといつの間にか、イスの横に犬がちょこんと座っている。それを見たウェイトレスがすかさず、
「Do you have a new friend ?」
周囲は爆笑。ヨーロッパ人はジョークを欠かさない。

カレンダーでおなじみのノイシュヴァンシュタイン城もロマンティック街道沿いにある。謎の死を遂げたルートヴィヒ2世の城だ。ふもとから城まで馬車で行くのだが、道程はヨーロッパならでは風情がある。

このロマンティック街道の旅で、珍しい夢を見た。「時間が逆転する夢」である。朝、鐘のなる町、たぶん、フィレンツェ(だったと思う)。

入りくんだ部屋がつづく建物の中をさまよっている。細長い回廊の横に大きな窓がある。窓の外を見ると、抜けるような青い空に、銀白色の巨大飛行船が飛行している。地上のレーザー砲台が、この飛行船に向け、無数のレーザービームを照射している。飛行船に命中したレーザービームが火花を散らしている。ものすごい臨場感だ。これは自分が住む世界ではない、別の世界なのだ、と思っている。巨大飛行船から、人間が墜ちてきた。あまりのリアルさに悲鳴をあげる。

さらに、細長い回廊を進み、小さな部屋に入る。すると、隣の部屋で、
「命が危ない」
と言う声が聞こえる。面倒くさいなぁ、と思いながら歩いて行くと、男が横たわっていて、息を引き取ろうとしている。なぜか、それが自分の分身だと分かった。そばに、黄色いタンがある。このタンがのどにひっかかって死んだのだ。もっと早く来て、合体していれば命は助かったのに、と思っている。その瞬間、悲しみがこみ上げてきた。
「やめてくれ」
と何度も叫ぶ。やがて、死者をとむらう悲しい鐘の音が聞こえてくる。そこで、目が覚める。外では本物の鐘が鳴っていた。

長い夢だが、ストーリーを時系列にならべると、奇妙な矛盾がある。夢だから当然?そうではなく、現実の矛盾である。時間が逆転しているのだ。

詳細を説明しよう。
① 回廊を歩く(夢)

② 飛行船が飛んでいる(夢)

③ 自分の分身が死ぬ(夢)

④ 鐘が鳴る(現実)

⑤ 鐘が鳴る(夢)

夢の中の「① → ② → ③」の筋書きの結果、⑤となる。つまり、⑤の夢を見るために、「① → ② → ③」の夢が創られたわけだ。一方、⑤は「④鐘が鳴る(現実)」によって創られる。

ところが ・・・

現実の④が起こって、初めて⑤が創られるはずなのに、⑤の原因となる①~③の夢は、④が起こる前に創られている。つまり、夢の製造器は、現実の④が起こる前に、それを予知して、①~③の夢を創ったことになる。原因と結果が逆転している。まるで、タイムマシンの「時間のパラドックス」だ。

ユングの心理学では、この矛盾は次のように説明される。現実の④が起こったとき、⑤を刺激し、ほぼ同時に、別々に存在する表象群のうち、①~③が意識化される。そして、目覚める途中、または、その後で、これらの心像群は自我による時間的、あるいは合理的な糸によってつなぎ合わされ、先のストーリ一となる。

分かったような、分からないような ・・・ それにしても、このような複雑な処理が、無意識にしかもリアルタイムで処理される、というのが凄い。夢の深層心理はおそろしく複雑にみえる。ユングの心理学書にも、夢が創られるメカニズムは記されているが、どこか、ウソっぽい。もっとも、心理学をサイエンスと認めない人も多いのだが。ということで、別の視点から見てみよう。参考にするのは「コンピュータモデル」。

■夢の仕組み

人間の脳は、3つのことを同時にできない。どんなに頭が良くても、左手で数学の問題を解きながら、右手で英語の問題を解き、同時に、目の前の息子を説教する、なんてムリ。

ところが、夢ではそれができるのだ。
1.夢のシナリオを書く
2.シナリオを映像と音で再生する
3.観て楽しむ

これを1人で、しかもリアルタイムで同時にやっているのだ。一体、どうなっているのだ?一方、コンピュータなら造作もない。「マルチタスク」のおかげで、文書を書きながら、ムービーを再生しながら、ウィルス対策ソフトでウィルスチェックをすることができる。

昔のパソコンは、マルチタスクを1つの頭脳(CPU)でやっていた。A、B、C3つの処理がある場合、
1.1/100秒間、Aをやる。
2.次の1/100秒間、Bをやる。
3.次の1/100秒間、Cをやる。

ところが、人間にとって、
「A+B+C=3/100秒」
は一瞬。だから、AとBとCが同時に処理されたように見えるわけだ。有り体に言えば、インチキ並行処理、正式名称は「タイムシェリング(時分割)」。

最近、「デュアルコア(Dula Core)」のCPUが普及している。1つチップに、2つのCPU(頭脳)が搭載されたものだ。上のインチキ並行処理と違って、2つのCPU(頭脳)で本当に並行処理している。今後は、1チップに複数のCPU(頭脳)を搭載する「メニーコア(Many Core)」が主流になるだろう。

では、人間の脳は、インチキ並行処理、ホンモノ並行処理のどっち?たぶん、後者だろう。人間は、数学・英語・説教の例をみるまでもなく、「インチキ並行処理」は苦手なので。ただし、ホンモノ並行処理は意識的に使うことができない。夢の深層心理の奥に隠された夢の製造器だけが使うことができるのかもしれない。ということで、人間の脳はメニーコア(Many Core)に違いない。

■第8話・完全な世界

何年か前、完全無欠の夢をみた。小さな家と大きな木があって、真っ青な空と一体化している。見えるのはそれだけなのに、世界のすべてがそこにあった。あの瞬間に湧き上がった感動は忘れられない。

この夢は自分の実体験とは無縁なので、何か普遍的なものにリンクしているのだろう。この世界を創造し、この世界の運行をつかさどる力の源につながる何かだ。でないと、
「世界のすべてがそこにあった」
とは感じないだろう。無意識、夢の深層心理は、普遍的真実への架け橋かもしれない。

■現実世界と夢世界

現実と夢の共通点は、視覚、聴覚、嗅覚、触覚で感知できること、体験が記憶されること。一方、相違点もある。夢は現実世界とは違い、すべてが直接的で具体的で象徴的だ。そのため、現実よりはるかに強く感じる。矛盾だらけで、意味不明なのに人の心を揺さぶるのは、そのためだろう。

もう一つの違いは「存在のありかた」。夜空に浮かぶ満月を眺めた後、背を向ければ、月は視界から消える。だが、月そのものが消滅したわけではない。ところが、夢の世界では、月そのものが消滅する。というより、自分が見えていないものは、初めから存在しない(たぶん)。存在そのものが、個人の認知に依存している。つまり、夢はその人専用にカスタマイズされたオンリーワンの世界なのである。万人のために用意された現実世界より、夢世界のほうが感動的なのはあたりまえ?

とういことで、夢は主観、現実は客観。普通に考えれば、ホンモノは客観、つまり、現実?

でも、もしかしたら ・・・

夢から目覚めて現実に戻るのと同じように、現実から目覚めて、別の世界に戻る可能性もある。それが死であり、輪廻転生なのかもしれない。ミクロ世界の最強理論「量子力学」によれば、我々が確かなものだと思いこんでいる物質でさえ、幽霊のような波動であることが分かっている。

デカルト曰く、
「我思う、ゆえに我あり(cogito, ergo sum)」
自分が思うことが、自分が存在している証拠である。

しかし ・・・

「思う」を確認できるのは自分だけ。周囲の人々が「思う」かどうか確かめようがない。「思う」は「思う」主体にしか認知できないのだから。つまり、周りの人が存在しているかどうかも分からない(デカルトの論法を信じれば)。ひょっとすると、存在するのは自分だけで、この世界は自分が生み出した幻影なのかもしれない。毎日見ている夢のように ・・・

《完》

参考文献:
(※)河合隼雄 著 ユング心理学入門 培風館

by R.B

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