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週刊スモールトーク (第77話) 宇宙家族ロビンソン(4)~幻のサード シーズン〜

カテゴリ : 娯楽

2006.12.17

宇宙家族ロビンソン(4)~幻のサード シーズン〜

■未放映のサードシーズン

宇宙家族ロビンソンは、アメリカではサードシーズン、日本ではセカンドシーズンで打ち切りとなった。アメリカの配給元のトランスグローバルは、サードシーズンをTBSに売り込んだが失敗、日本では放映されなかった。理由は本国のアメリカ同様、視聴率の低迷。

アメリカでサードシーズンが放映されたとき、視聴率も評判もさんざんだった。それでも、プロデューサーのアーウィン・アレンは、番組続行に執着した。第4シーズンにつなげるため、サードシーズンの最終回でも、ロビンソン一家をアルファセントリーに到着させなかったのである。ところが、サードシーズンのあまりの不評に、CBSは第4シーズンをキャンセル、幻の第4シーズンとなった。宇宙家族ロビンソンは、原題「Lost in space」どおり、宇宙の迷子となったのである。アルファセントリーに到着することもなく、地球に還ることもなく、ロビンソン一家は今も宇宙をさまよっている

少年時代、宇宙家族ロビンソンにサードシーズンがあるとは、夢にも思わなかった。子供心にも、あんな最終回はないと思い、次のシーズンが始まるのをひたすら待ち続けた。時は過ぎ、高校から大学へと進学、ある日、下宿でTVを観ていると、宇宙家族ロビンソンをやっていた(再放送)。懐かしさのあまり、全話をチェックしたが、やはりセカンドシーズンで終わり。ロビンソン一家は無事アルファセントリーに着いたのか、それとも、宇宙のもくずと消えたのか?少年時代のあのフラストレーションがよみがえった。

大学を卒業し、就職し、長い年月が経ち、宇宙家族ロビンソンの記憶も薄れていった。ある日、行きつけのLD店に行くと、なんと「宇宙家族ロビンソンLDBOX」があるではないか。宇宙家族ロビンソンと昭和40年代のあのカンカクがよみがえった。幻のサードシーズンも発売されるという。値段も確かめず、その場で予約。少年のように心がときめいた。ロビンソン一家は無事アルファセントリーに着いたのか?それとも・・・

1ヶ月後、会社に電話が入った。LD店からだ。宇宙家族ロビンソン・サードシーズン最終回が収録された「宇宙家族ロビンソンLDBOXVol6」が入荷したのだ。5時きっかりに退社し、車を飛ばして店に行き、LDBOXを購入、そのまま帰宅した。もちろん、最初に見たのは「最終回」だった。

■サードシーズン最終回

「第83話(最終回)宇宙のガラクタ屋」。まず、登場人物をじーっと見る。ロビンソン博士とドクタースミスは、ファーストシーズンから全く変わっていない。ジュディも、相変わらず綺麗なお姉さん。ところが、ウィルは顔の相まで変わっている(成長期だったから)。そしてペニー。ジュディより体が大きくなり、父・ロビンソン博士の説教を神妙に聞き入っていた少女の面影はない。

これじゃ・・・感情移入できん

それでも、宇宙家族ロビンソンのメンバーはみな同じ。ただ、みんな歳を取っただけだ。気を取り直して、画面に見入る。

ストーリーはサードシーズンのスタンダード、つまり、たわいもないドタバタ。ジュピター2号は、修理のためある惑星に着陸する。そこに、ジャンクマンなる廃品回収ロボットがいた。ジャンクマンは惑星の磁力で金属を引きつけ、それを溶鉱炉で溶かして、商売をしている。ジャンクマンは、フライデーのパーツに目を付け、ドクタースミスに話をもちかける。食料と引き替えに、フライデーのパーツを手に入れようというのだ。ドクターは、いつものように、フライデーを簡単に言いくるめる・・・

ドクタースミス:
「お前の部品と食物を交換するんだ」

フライデー:
「私ヲ売ルノデスカ?」

ドクタースミス:
「真空管や電線で、ウィルやペニーの命を救えるんだよ」

フライデー:
「軽率ナ発言デシタ」
「親友ノタメナラ何デモシマス」

ドクタースミス:
「感激だよ、涙が出そうだ」

ドクタースミスお得意のそそのかしモード、それに簡単にのせられるフライデー、いつものパターンだ。その後、ジャンクマンはジュピター2号まで手に入れようとする。そのいきさつはさておき、ジュピター2号が乗っ取られる、なんてことは一度もなかった。かつてないイベント・・・やっぱり、最終回なんだ!

ところが、間一髪のところで、ウィルの機転で、ジュピター2号をとりかえす。食料の代わりに、溶鉱炉に溶かされ予定だったフライデーも無事救出。その横で、金属塊に埋まった巨大ダイヤを取り外そうとするドクタースミス。カネに目がくらんだドクターお決まりのパブロフの条件反射だ。やがて、なにかのはずみで、溶鉱炉にのみこまれそうになるドクター、それを間一髪で救い出すフライデー。そこで、エンディング・・・

えっ?なにっ?

これが、少年時代から想い続けた宇宙家族ロビンソンの最終回だった。

■サードシーズンの佳作

玉石混淆(ぎょくせきこんこう)。良いもの(玉)と悪いもの(石)が混じっている様をいうが、駄作の誉れ高いサードシーズンにもいえるだろうか?つまり、1つぐらいまともなエピソードがあってもいいのでは、という期待である。確かに、SFネタとしては面白いエピソードもある。例えば、「第67話未来への飛行(Flight into the future)」。

ジュピター2号が宇宙を航行中、いつものようにドクターがヘマをやり、小型宇宙艇がドクターとウィルとフライデーを乗せたまま発進、未知の惑星に着陸する。そこで、ジュピター2号も小型宇宙艇を救うべく、惑星に着陸。小型宇宙艇のウィルとジュピター2号のロビンソン博士は、無線で連絡し、同じ惑星にいることを確認する。ところが、どういうわけか、相手を見つけることができない。やがて、ウィルとドクタースミスは、猛烈な睡魔に襲われる。

2人は、15分ほど寝て起きて、フライデーがすっかり錆びついていることに気づく。やがて、ジュピター2号を発見するが、植物に深く覆われ、長い年月が経過したように見える。唐突に、2人の地球人が現れ、このジュピター2号は270年前のものだと言う。つまり、ジュピター2号のグループと、小型宇宙艇のグループは、同じ空間にいながら、時間が270年もずれていたのだ。

ありがちなパラレルワールドネタだが、もうひとひねり、ふたひねり、欲しかった。というのも、このエピソードの結末はあまりにもあっけない。実は、時空がずれていたのではなく、この惑星に住む機械が幻影を見せていた、というオチ。では、この機械はなぜ、人間に幻影を見せたのか?この惑星を立ち去って欲しかったから・・・あらら。確か、フライデーも同じ幻影を見ていたはずだが、幻影は人間の心で見るものなのに、機械のフライデーがどの部品で幻影を見たというのだ!などと、普通のB級SFでは、突っ込まない所でも、突っ込みたくなる。

パラレルワールド、時空の歪み、地球の歴史、ロビンソン一家の歴史、ネタは悪くないのに、この顛末。それでも、このエピソードはサードシーズンではマシな方。誰が脚本を書いても、誰が監督でも、出来は同じ。おしなべて、つまらない。これでは、「玉石混淆」どころか、「玉無石有」。

■混迷のサードシーズン

不評のセカンドシーズンを改善したはずのサードシーズンが、サイテー・・・一体何が起こったのか?プロデューサー、アーウィン・アレンの怠慢?いや、不評だった「ファミリードラマ」をやめて、「探検・冒険」を前面に打ち出している。ファーストシーズンもセカンドシーズンも、舞台のほとんどが同じ惑星だったのに、サードシーズンでは、毎回宇宙に飛び出し、違う惑星、違う宇宙でのストーリーになっている。さらに、惑星上陸用の小型宇宙艇まで登場させている。

しかし・・・

つまらないものは、何をしてもつまらない。それがドラマというものなのだ。

エピソードは全部で83話もあり、マンネリ化も仕方がない、というフォローもあるだろう。ところが、SFドラマ「スタートレック・ヴォイジャー」は172話もあるのに、中盤以降、どんどん面白くなる。とくに、最後の2作はトイレも行けない。マンネリ化はシリーズの長さとは関係がないのだ。

宇宙家族ロビンソンは、TVゲームも、インターネットも、携帯電話もない時代だからこそ、輝いていたのかもしれない。なにもかもが不足していたけど、宝石のように輝いていた昭和40年代。あれから60年経った今、宇宙家族ロビンソンの時空は凍結されたままである。

《完》

参考資料:
「宇宙家族ロビンソンBOX」パイオニアLDC株式会社

by R.B

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