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週刊スモールトーク (第52話) ヨハネの黙示録Ⅱ~四騎士~

カテゴリ : 思想

2006.06.23

ヨハネの黙示録Ⅱ~四騎士~

■4つの聖書

キリスト教の聖書には、旧約聖書と新約聖書がある。旧約聖書は、物語性が強く、神話のように面白い。だから、映画にはうってつけ。たとえば、「創世記」をモチーフにした「天地創造」。1966年のアメリカ・イタリア合作映画だが、上映時間はなんと3時間もある。まだ、CGがない時代で、「ノアの方舟」や「バベルの塔」は本物かと思うほどリアル(本物は見たことはないが)。

また、「出エジプト記」をモチーフにしたのが「十戒」。1956年のアメリカ映画で、主演は「ベンハー」、「猿の惑星」のチャールトン ヘストン。モーセが海を分かつシーンで映画史にその名を刻んだ。こちらは、上映時間は4時間。ということで、聖書の映画は上映時間が長い。天罰を畏れて制作者に気合いが入った?

一方、新約聖書はイエスの言行録が中心なので、映画にはハードルが高い。そもそも、神の子を描くわけで、制作するほうも神経を使う。最近では、メル ギブソン監督の「パッション」が話題になった。イエス キリストの受難にフォーカスした異色の映画で、シナリオも映像もキャストも全くスキがない。

新約聖書は、「4福音書」、「使徒の言行録」、「使徒の手紙」、「ヨハネの黙示録」からなる。この中で、キリスト教会にとって重要なのは、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの「4福音書」だ。一方、最後の「ヨハネの黙示録」は他の聖書と毛色が違う

ヨハネの黙示録は、ヨハネが語った予言の書である。ただし、世間で知られるヨハネとは別人(らしい)。キリスト教で有名なヨハネは2人いる。1人は「洗礼者ヨハネ」。砂漠で苦行したあと、ヨルダン川を拠点に、
「メシア到来にそなえて、悔い改めよ」
と説いた。また、悔い改めたあかしとして、ヨルダン川の水でバプテスマ(洗礼)を行った。イエスを洗礼したのもこのヨハネである。キリスト教世界では聖人に叙せられている。

ところが、洗礼者ヨハネの最期は悲惨だった。おそらく、あのユダよりも。ガリラヤの領主ヘロデ・アンテパスに投獄され、宴席の余興として斬首されたのである。首は盆にのせられ王女サロメにあたえられた(イエス キリストⅢ~神の計画~)。

もう1人のヨハネは、イエスの12使徒の1人。4福音書の1つ「ヨハネの福音書」の著者とされる。このヨハネは、先の洗礼者ヨハネの弟子だったが、のちにイエスの弟子になっている。そして、12使徒の中でただ一人、イエスの十字架刑を見とどけている。ところが、「ヨハネの黙示録」の著者は、この2人のヨハネとは違う(らしい)。

ヨハネの黙示録は著者が謎なら、内容も謎。この書は、
「世界の終末、審判の日に備えるよう、7つの教会に送ったメッセージ」
という形をとっている。また、文体もユニークだ。他の新約聖書はイエスの言行録なので、分かりやすく正確に伝える必要がある。そのため、文体は明示的で教訓的。ところが、ヨハネの黙示録は暗示的で神秘的。真逆なのである。

もう一つの特徴は「寓話」形式。つまり、動物の行動や対話を用いて、訓話を象徴的に語るのである。また、内容は抽象的で、どのような解釈も成り立つ。真相をあえて隠すかのように。ここで、具体例を示そう。ヨハネの黙示録 第6章である。

■ヨハネの黙示録 第6章1節~8節

小羊がその七つの封印の一つを解いた時、わたしが見ていると、四つの生き物の一つが、雷のような声で、「来たれ」と呼ぶのを聞いた。

そして見ていると、見よ、白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、弓を手に持っており、冠を与えられて、勝利の上にもなお勝利を得ようとして出かけた。

小羊が第二の封印を解いた時、第二の生き物が、「来たれ」と言うのを、わたしは聞いた。

すると今度は、赤い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、人々が互いに殺し合うようになるために、地上から平和を奪い取ることを許された。また。大きな剣(つるぎ)を与えられた。

また、第三の封印を解いた時、第三の生き物が、「来たれ」と言うのを、わたしは聞いた。そこで見ていると、見よ、黒い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、はかりを手に持っていた。

すると、わたしは四つの生き物の間から出て来ると思われる声が、こう言うのを聞いた。「小麦1マスは1デナリ、大麦3マスも1デナリ、オリーブ油とぶどう酒とを、そこなうな」
※1デナリ:労働者の1日分の賃金

子羊が第四の封印を解いたとき、第四の生き物が「来たれ」と言う声を、わたしは聞いた。

そこで見ていると、見よ、青白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者の名は「死」と言い、それに黄泉(よみ)が従っていた。彼らには、地の四分の一を支配する権威、および、剣(つるぎ)と、飢饉(ききん)と、死と、地の獣らとによって人を殺す権威とが、与えられた。

この中で、白い馬に乗った者が第一の騎士、赤い馬に乗った者が第二の騎士、黒い馬に乗った者が第三の騎士、青白い馬が乗った者を第四の騎士である。これら四人の騎士は「ヨハネの黙示録の四騎士」とよばれている。

これほど抽象化すれば、どんな解釈も成り立つだろう。たとえば、米ソ冷戦時代なら、白い馬はアメリカ合衆国、赤い馬はソ連で、米ソによる全面核戦争、という具合に。

■悪魔が最後にやってくる

というわけで、ヨハネの黙示録をモチーフにした映画はたくさんある。その中で、正統派オカルト映画の傑作とされるのが「オーメン」だろう。また、正統派とB級ホラーのグレーゾーンにあるのが「悪魔が最後にやってくる」。この映画はイタリア・イギリス合作で、1979年に公開された。B級ホラー色を払拭するため、カーク ダグラスを主演にすえている。映画としてはそこそこ面白いのだが、TVで放映されたことはないし、DVDもBlu-rayもナシ。

ストーリーは、主人公ケイン(カーク ダグラス)が、サハラ砂漠に巨大な原子力発電所を建設するところからはじまる。この発電所は、7つの角を広げる怪物のような形をしていた。そのため、第3世界の人々はこの建設に猛反対する。砂漠の洞窟に刻まれた古い文字が、黙示録の予言を暗示していたからである。

その予言によれば、反キリスト者が操る7つの頭をもつ獣が、人類を火の中で滅ぼすという。それでも、ケインと息子のエンジェルは建設を強引に推し進めた。その後、ケインは妻を失ったが、女性ジャーナリストのサラと再婚し、サラは身ごもる。

ところが、最先端科学を研究する科学者から、誕生する子は産まれながらの反キリスト者だと教えられる。生むべきか、殺すべきか?ところが、真の反キリスト者はこの赤子ではなく、別の所にいた。

理論付けは荒っぽいが、SF映画としてはそれなりに面白い。ところが、当時は話題にもならなかった。マニアックな月刊SF映画雑誌「Starlog(スターログ)」に一部紹介されただけである(今は休刊=廃刊)。

じつは、この映画の真の主役は「7つの頭をもった獣」。ヨハネの黙示録ではおなじみの反キリスト者、サタンだ。この獣は、ヨハネの黙示録第13章に記されているが、「ヨハネの黙示録 第12章3~4節」にも登場する。

■ヨハネの黙示録 第12章3~4節

また、もう1つのしるしが天に現れた。見よ。大きな赤い龍がいた。それに、7つの頭と10の角があり、その頭に7つの冠があった。

その尾は天の星の3分の1を引きよせ、それを地に投げ落とした。龍は子を産もうとしている女の前に立っていた。女が子を産んだとき、それをむさぼり食うためである。

抽象的だが、怖ろしい内容だ。正典なのに、どこか外典(アポクリファ)っぽい。まぁ、その分、創作意欲をかきたてるわけだが。というわけで、ヨハネの黙示録は正統派聖書の中にあって、唯一孤高の異色の聖書なのである。

《完》

by R.B

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