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週刊スモールトーク (第506話) 安倍晋三・銃撃事件(2)~消えた銃弾と複数犯説~

カテゴリ : 人物社会

2022.08.26

安倍晋三・銃撃事件(2)~消えた銃弾と複数犯説~

■銃撃事件の真相

安倍晋三・銃撃事件の様相が一変した。

当初のストーリーは、山上容疑者が旧統一教会への個人的恨みから、教団と関係がある安倍元首相を射殺した・・・ところが、その後、瓢箪から駒(ひょうたんからこま)。政治家と旧統一教会の関係が露見し、別の狙撃手がいたという複数犯説まで飛び出した。

情報が錯綜している。

この状況で真実を報道するには、明敏さと権力に屈しない勇気が必要だ。ところが、上級メディアのテレビがとった方針は、深く考えない「決め打ち」。事実関係が不明で闇が多い「複数犯説」はガン無視、善悪が明白な「政治家と旧統一教会の関係」にフォーカスしている。これなら、正義の味方を気取れるし、オウム真理教以来、宗教に批判的な日本国民にも受け入れられる。一挙両得だ。

つまり、真実の追求ではなく、受け狙い。

ところが、そのテレビも一枚岩ではない。

日本テレビは「政治家と旧統一教会」を積極的に報道し、高い視聴率を得ている。一方、NHKは消極的だ。政府・自民党は、旧統一教会と深い関係なので、この件には触れたくない。そのため、国営放送のNHKとしては、報道を抑えるしかないだろう。

つまり、積極的に報道して視聴率を取るか、政権に忖度して身を守るかの二択。本来、メディア(ジャーナリズム)の使命は、真実を報道すること、政権の暴走を防ぐこと。でも、そんなきれいごと言ってたら、食べていけない、背に腹は代えられない、というわけだ。

一方、下級メディア?「Youtube」は忖度の必要がない。そこで、危険な「安倍晋三・銃撃事件の真相」に手を染めている。すでに、動画の数では「銃撃事件の真相>政治家と旧統一教会」。しかも、そのほとんどが、単独犯説ではなく、複数犯説だ。

あぁぁ、陰謀論ね。

たしかに怪しいが、根拠がないわけではない。安倍元首相を治療した奈良県立医科大と、司法解剖した奈良県警の公式見解が、大きく違うのだ。

■弾道の謎

銃による傷を「銃創」、銃弾が入った銃創を「射入口」、銃弾が出た銃創を「射出口」という。

まずは、奈良県立医科大の福島教授の記者会見から。

死因は、心臓および胸部の大血管の損傷による失血死。銃創は、頸部(首)正面に2か所にあり、体内に2発の銃弾が入ったとみられる(射入口)。大きさは非常に小さい。心臓の壁に穴が開いており、1発が心臓に達していた。左肩にも傷があり、首から入った銃弾が貫通していった可能性がある(射出口)。銃弾は(2つとも)確認できなかった。

つまり、銃弾は首から入り、心臓と左肩に達したので、弾道は「上から下」。さらに、左肩の傷は「射出口」である。

もし、これが事実なら、安倍元首相に当たった銃弾は、山上容疑者が撃った弾ではない。根拠は2つある。

第一に、山上容疑者が撃った銃弾は、90m離れた立体駐車場の側壁、高さ4m、5m、8mの3カ所で発見されている。つまり、弾道は「下から上」。

第二に、山上容疑者が発砲した瞬間、安倍元首相の左肩は、山上容疑者に向いていたから、左上腕の傷は射出口ではなく、「射入口」である。銃弾がブーメランのように旋回しない限り。

事実関係を整理すると、

奈良県立医科大の見解:弾道は上から下。左肩の傷は射出口。

山上容疑者が撃った弾:弾道は下から上。左肩の傷は射入口。

すべて、真逆。つまり、安倍元首相に当たった銃弾は、山上容疑者が撃った銃弾でない。

では、銃弾はどこから来た?

安倍元首相の首の正面から入り、上から下へ貫通しているなら、狙撃地点は山上容疑者の反対側。しかも高い場所だ。現場写真をみると、その位置にビルがあり、その屋上から撃ったとすれば、辻褄が合う。もちろん、これを認めたら一大事だ。

山上容疑者の他に狙撃手がいた!?

一方、奈良県警の見解は、奈良県立医科大と真逆である。

司法解剖の結果、左上腕(左肩)を撃たれて、動脈を損傷したことによる失血死(心臓ではない)。

つまり、弾道は下から上で、左上腕の傷は射入口である。これなら、山上容疑者が撃った銃弾に一致する。ただし、銃弾が左上腕から入り、動脈を損傷したとすれば、心臓には至らない。そのためか、奈良県警は「心臓の損傷」には触れていない。奈良県立医科大の福島教授の見解と矛盾することは明らかだ。

というわけで、奈良県警の見解が真実なら、山上容疑者の単独犯、奈良県立医科大の見解が真実なら、複数犯である。どちらかが、誤認したか、ウソをついているわけだ。

だが、一つ確かなことがある。

救急医学が専門で、高度救命救急センター長(福島教授)が、「心臓の壁にあいた穴」を誤認するわけがない。

それは、会見の質疑応答から明らかだ。

NHK記者:心臓に到達したということなんですけども、損傷というのは激しいものでしたか?

福島教授:心臓の傷自体は大きなものがありました。

NHK記者:具体的に言うと、その傷というのはどういった形の傷?

福島教授:銃弾による心損傷、大きな穴ですね、心臓の壁にあいた穴です。

専門医が、心臓の穴と盲腸の穴を誤認するはずがない。

じゃあ、奈良県立医科大が正しい?

話はそう簡単ではない。

まず、ビルの屋上からあの距離で狙撃するには、短銃ではムリ、ライフル銃しかない。だが、ライフルで撃たれたとすれば、その瞬間、人体に微妙な動きがあるはず。ところが、安倍元首相の銃撃映像(ノーカット版)を何十回みても、それが確認できない。一方、山上容疑者の発砲による反応はハッキリ見て取れる。

そもそも、ライフルの銃創なら福島教授が言う「非常に小さい」はありえない。

■消えた銃弾

もう一つ不可解なことがある。

消えた銃弾だ。

参議院の青山繁晴議員は、自民党の部会でこの事件を追求した。その際、あらたな矛盾が露見する。警察が、銃創は盲管銃創と明言したのだ。「盲管銃創」とは、弾が貫通していないこと。つまり、銃弾は体内に残っているはず。ところが、銃弾は体内で見つかっていないという。

弾は貫通していないけど、体内にない?

じゃあ、弾はどこ?

本当は、盲管銃創ではなく、銃弾が貫通した貫通銃創なのでは?

ところが、それでも謎が残る。奈良県立医科大の福島教授は、銃創が3つと断言しているからだ。

銃弾が貫通すれば、射入口と射出口が1セットで、銃創は「偶数」のはず。つまり、銃弾が1つなら銃創は2つ、銃弾が2つなら銃創は4つだ。ところが、実際の銃創は3つ!?

どういうこと?

可能性は2つある。

第一に、福島教授が銃創と考えた3つの傷のうち1つは、銃創ではなかった。つまり、銃弾は1発で、銃創は射入口と射出口の2つ。これなら、貫通銃創は成立する。福島教授は銃創は「非常に小さい」といっているから、誤認した可能性はあるだろう。

第二に、銃創は3つあった。この場合、銃弾は2つで、1発は射出口がないから、体内で消えた。

銃弾が、体内でどうやって消えるのだ?

待ってました!

陰謀論者の出番だ。

いわく、体内で溶けるガリウム弾を使用した。そんな弾丸があるらしいが、少なくとも山上容疑者の銃弾ではない。彼が撃った銃弾が駐車場の側壁で見つかっているから(直径9.5ミリ前後の球弾)。

もちろん、陰謀論者はひるまない。

だから、言ったじゃん。別の狙撃手がいて、ビルの屋上から、ライフル銃でガリウム弾を撃ったんだ。

論理として成立するが、そこまで具体的に言い切るには、物的証拠が必要だ。とはいえ、陰謀論で片付けるのも危険である。真実が混在していることがあるからだ。たとえば、安倍晋三・銃撃事件がおこる前に「政府・自民党と旧統一教会はズブズブ」と言おうものなら、「あぁぁ、陰謀論ね」と一笑に付されただろう。

というわけで、安倍晋三・銃撃事件は、あらゆる可能性を排除せず、すべての仮説を検討するべきだ。重要なのは、信念や主義ではなく、データである。

冷静に考えてみよう。

今回の事件は、日本の元首相で、現役の国会議員、しかも自民党最大派閥の領袖が射殺されたのだ。もし、山上容疑者の他に狙撃手がいたとしたら、組織的犯罪の可能性がある。山上容疑者と連携する、もしくは、影で利用するためには、綿密な計画、ヒト・モノ・カネが必要だからだ。その場合、動機は私怨でなく、政治・利権だろう。個人的な恨みつらみで、こんな大掛かりな暗殺を企てる者はいないから。

■組織犯説

では、組織犯だったとしたら、犯人は誰?

安倍元首相が死んだら得をする者。

政治理念なら、リベラルとグローバル(安倍元首相は保守、反グローバル)。国外なら、日本と敵対する国家。国内なら、反安倍勢力だろう(とくに選挙区)。

もし、主犯が国外勢力だったら、国内の反安倍勢力と連携した可能がある。安倍元首相の正確な行動スケジュールを知る必要があるからだ。もしそうなら、政府は真実を隠蔽するだろう。真実を公表すれば、日本は主犯国家に強い態度を取らざるをえなくなり、行き着くところは戦争だ。ところが、日本は核を持たないから、通常戦で勝利しても、核で脅されておしまい。初めから結果は見えている。つまり、国益優先なら、真実を隠蔽するしかない。

これが、日本は戦争は二度としません、軍隊を放棄します、核は保有しません、血を流さなくてすむ金儲けに専念します・・・で金満大国になった代償なのだ。日本の対外純資産残高は411兆円(2021年)で、世界一のお金持ち。ところが、核で脅されれば、パァ、何の意味もない。日本は本当に歪な国だ。

安倍晋三・銃撃は恐ろしい事件だが、善悪で論じるのは不毛である。この事件は、道徳・倫理ではなく、人間最強の原理「損得・利害」に基づくからだ。

というわけで、安倍元首相の死を望む者は多かった。この世界は、上に行けば行くほど、敵は増えるから当然だろう。

安倍元首相が死んだこと、死因が失血死であることは間違いない。だが、弾道が「上から下」か「下から上」かは、今もわかっていない。この差は大きい。山上容疑者の単独犯か、複数犯かに分かれるからだ。

この事件は、1963年のケネディ大統領暗殺事件を彷彿させる。

1963年11月22日、第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディが、ダラスで暗殺された。1時間後に、リー・ハーヴェイ・オズワルドが犯人として逮捕された。ところが、その2日後、ジャック・ルビーというチンピラに射殺される。犯行場所は、ダラス警察署というからビックリだ。しかも、多くの報道陣がつめかける中で。

ルビーは、その場で現行犯逮捕され、裁判で死刑判決をうけた。だが、死刑が執行される前に、肺がんで死ぬ。「オズワルドを殺害したとき、自分は誰かに操られていた」と謎めいた言葉を残して。

事件発生から1週間後、ケネディ大統領暗殺事件を検証するウォーレン委員会が設置された。そして、翌年の9月27日、調査報告書が公表される。

結論は「オズワルドの単独犯行で、大統領は後方から撃たれた」。

これを信じるアメリカ国民は少ない。単独犯とされるオズワルドは、警察署内で射殺され、法廷に立つことさえできなかったのだ。また、銃声が複数の方向から聞こえたという証言もある。つまり、複数犯、組織的な犯罪を示唆している。陰謀論が巻き起こるのは当然だろう。事実、主犯の候補は枚挙にいとまがない。CIA、マフィア、政権内部、ディープステート(影の政府)・・・

もし、安倍晋三・銃撃事件が、単独犯ではなく複数犯なら、米国同様、真実は隠蔽されるだろう。古今東西をとわず、国家というものは、国民が真実を知る権利より、政権と治安の維持を優先するから。言葉をかえると、国民の好奇心より、国益が大事なのだ。

メディアもそれは重々承知。国民の目をそらすため、「政治家と旧統一教会」の報道に余念がない。

「安倍晋三・銃撃事件」の真相を解明するより、事実関係がハッキリした「政治家と旧統一教会」をほじくる方が大事なのだ。

ジャーナリズムの使命って何?

真相を解明すること、それとも、生贄を捧げること?

だが、今後、この状況が一変する可能性がある。

裁判が始まれば、弁護側は、消えた銃弾と弾道の矛盾を突くだろう。これが解明されない限り、山上容疑者が撃った銃弾が、安倍元首相を殺害したことを証明できないからだ。そもそも、致命傷を与えた銃弾が見つかっていないのに、どうやって証明するのか。日本の刑事訴訟は、疑わしきは罰せずだから、殺人罪はムリ。せいぜい、殺人未遂罪か器物損壊罪だろう。

安倍晋三・銃撃事件は、あと数年で歴史的事件として再燃する。そのときは、政府もマスメディアも今のように座視できないだろう。国民の好奇心は、真実を渇望するからだ。他に気を引くニュースがない限り。

《つづく》

by R.B

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