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週刊スモールトーク (第484話) AI・IoTおすすめ株~ラティス・セミコンダクター~

カテゴリ : 社会科学経済

2021.10.15

AI・IoTおすすめ株~ラティス・セミコンダクター~

■AI・IoT・DXはユートピアかディストピアか

2050年までに、人間社会はAI・IoT・DXに完全に支配されるだろう。

AI(人工知能)とは、人間より上手に分類したり推論する思考機械。

IoT(モノのインターネット)とは、すべてのモノがインターネットにつながり、思考機械の手足となる。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AIとIoTを駆使し、人間社会を完全にデジタル化する運動。

この3つのテクノロジーは相互に影響しあいながら、進化をつづけ、一つの意志に統合されるだろう。結果、1ミリのムダもない社会が誕生する。効率と利便性は向上するが、人間はアナログ的存在ゆえ、窮屈な人生になるだろう。

この完全無欠のデジタル社会を最速で成し遂げるのは、米国でもEUでも日本でもない。中国である。

根拠は2つ。

第一に、中国は人口が多く、プライバシーの規制が少ないため、より大量の実験データが得られる。AIは、学習するデータが多いほど精度があがるから、圧倒的に有利なのである。

第二に、中国は人権に対する意識が低いから、個人の都合をさておいて、国益最優先で突っ走れる。

具体例をあげよう。

街中に監視カメラを張り巡らし、状況をリアルタイムで収集する(IoT)。交通違反者がいたら、顔認証ソフトで個人を特定し(AI)、個人情報がヒモづけされたデータベースから名前と顔写真とIDを割り出し(DX)、街中のディスプレイに表示する。

これはSFではない。中国ですでに運用されているのだ。民主国家なら非難轟々だが、中国は違う。街中を走るタクシードライバーも、問題もあるが、交通違反が減る方がマシとコメントしていた。中国の交通違反はハンパないから、当然だろう。中国の上海に長く駐在していた知人も同じことを言っていた。

つまりこういうこと。

難しい問題を解決するには、高度なテクノロジーと、それを使い切る強力なリーダーシップが必要なのだ。

一方、これを非難する向きもある。

2018年10月、米国のペンス副大統領は、中国がジョージ・オーウェルの小説「1984年」の監視社会を実現しようとしていると非難した。監視カメラで街中を監視し、インターネット検閲(グレートファイアウォール)で情報の自由なアクセスを制限しているというのだ。

「1984年」はイギリスの作家ジョージ・オーウェルが書いたディストピア小説だ(※1)。国民が双方向テレビ「テレスクリーン」によって監視され、「思考警察」によって思考弾圧される社会。不気味なスローガン「戦争は平和なり。自由は隷従なり。無知は力なり」が繰り返され、「ビッグブラザー(指導者)」が万能の神のように礼賛される。基本的人権は生存権だけ。暗く、重く、救いのないストーリーだ。

ペンス副大統領は、中国の現体制を有名なディスピア小説になぞらえたのである。

では、AI・IoT・DXは善か悪か?

その問いは意味がない。確実に到来する世界を、是々非々で論じてもしかたがないから。太陽が東からのぼるのが善か悪かを論じるようなものだ。

とはいえ、ムダを覚悟でいえば、平和と安穏が永遠に続くなら、個人優先も悪くない。だが、人類絶滅レベルのリスク・・・小惑星の衝突核戦争、スーパー伝染病に直面したら、全体優先の一択だろう。でないと、人類が種丸ごと滅ぶから。つまり、AI・IoT・DXで1ミリのスキもなく管理するしかない。

じつは、人類は絶滅レベルの災厄に何度も遭遇している。

1908年6月30日、隕石が大気圏に突入し、シベリア・ツングース上空で爆発した。直径が100mと小さかったため、地上に衝突する前に、空中爆発したのだ。それでも、放出したエネルギーはTNT火薬20メガトンで、広島に投下された原子爆弾の1000倍。森林の樹木はなぎ倒され、その広さは関東平野に匹敵する。つまり、東京上空で爆発していたら、関東圏は壊滅である。

では、もっと大きな隕石だったら?

6500万年前、直径10kmの隕石がユカタン半島を直撃した。このとき放出されたエネルギーは、TNT火薬6000万メガトンで、ツングースの衝突の300万倍。マグネチュード12~14の巨大地震が発生し、数千mの津波が発生したという。吹き上げた粉塵が地球を覆い、太陽光を遮断し光合成が破綻、植物が壊滅した。結果、地球上の生物種の60%、海洋生物の75%が絶滅したのである。

小惑星の衝突は、環境と生物を破壊するが、「人間限定」の災厄もある。

たとえば、14世紀のペスト(黒死病)。1331年に中国の河北省で発生し、現地人口の約90%が死亡した。その後、世界に伝染し、約1億5000万人が死亡した。これは当時の世界人口のおよそ3分の1にあたる(※2)。

さらに、1918年~1920年に流行した「スペインかぜ(H1N1亜型インフルエンザ)」。世界人口が18億人の時代に、5億人が感染し、1億人が死んだ。

そして2019年、中国で新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が発生、パンデミック(世界的感染)に発展した。ところが、日本や欧米では、マスク着用や外出禁止さえ徹底できない。欧米では、コロナパーティを開催しクラスターが発生する有様。日本も「お願い」一点張りで、成り行き任せ。結果、深刻な医療崩壊をおこした。そもそも、お願いだけなら政府など不要ではないか。

一方、中国は一人でも感染者がでると、そのエリアを完全封鎖する。たまたま、出前に来た配達員も、家庭教師に来た学生も帰れない。例外は一切認めないのが中国式だ。ゆるゆるで感染の減少と拡大を延々と繰り返す日本とは大違いだ。伝染病(感染症)は初期の封じ込めがすべてという大ルールを忘れている。それを守っているのは中国ぐらいだろう。

日本で暮らす中国人が、ネットで興味深い意見を発信していた。

「中国政府は、ふだんはいろいろ問題があるが、非常時には物凄い力を発揮する。だから信頼している」

というわけで、ゆるゆる楽しいを優先するなら日本式、命が惜しいなら中国式?

どちらが正しかは、次のパンデミックで可視化されるだろう。20年以上前から、専門家たちは「ヒトヒト感染鳥インフルエンザ」の発生を恐れている。2021年、日本ではまだ発症例はないが、インドネシア、ベトナム、中国ではすでに発症が確認されている。もし、(14世紀のペストのように)強毒化したら、新型コロナどころではない。

■ラティス・セミコンダクター

望もうが望むまいが、AI・IoT・DX社会は到来する。

そこで、巨万の富を得るのがAI・IoT・DX企業だ。つまり、恩恵をうけるのは一部のエリートだけ。だが、あきらめてはいけない。われわれ庶民にもチャンスはある。AI・IoT・DX企業の株を買えばいいのだ。頭のいいエリートたちが頑張れば、会社の業績が伸びて、株価もアップ。自分が頑張るのもいいが、勝ち馬に乗るのも一つの生き方だろう。

では、AI・IoT・DXの推奨銘柄は?

AIならエヌビディアAMD。エヌビディアはAI専用プロセッサ(GPGPU)、AMDは汎用プロセッサ(CPU)の覇者で、ともにAIに欠かせないから。

では、AI・IoTなら?

ラティス・セミコンダクター(LSCC)がイチオシ(以後「ラティス」)。

ラティスは、2021年で年間売上が4億ドル(450億円)、エヌビディアの1/40にも満たない。しかも、総資産は6.6億ドル(700億円)で、中小企業に毛が生えた程度。ところが、未来は限りなく明るい。

根拠は2つある。

第一に、未来の巨大市場AI・IoTにフォーカスしていること。

第二に、AI・IoTの新潮流「エッジAI」で優位に立っていること。

IoTは、すべてのモノをインターネットにつなぐテクノロジーだ。ここでいうモノとは、監視カメラや各種センサーなどの入力デバイスからアクチュエータ(信号を物理的運動に変換する機械)などの出力デバイスも含む。

そのIoTデバイスの数が、2025年まで年平均28.7%で増加し、416億台に達するという(市場調査会社IDC)。他の市場ではありえない、凄まじい成長率だ。

しかも、市場規模は、石油(600兆円)、医療(560兆円)につぐ世界3位になるという予測もある。というわけで、IoTは、更地からメガシティへの超成長分野なのだ。これに巨大市場AIがからむのだから、AI・IoT市場がどこまでいくか想像もつかない。。

そして、このAI・IoTのキモとなる技術が「エッジAI」だ。

これまで、IoTデバイスは、データの入出力と、インターネットの通信だけを処理していた。たとえば、カメラやセンサーから入力されたデータをサーバに送信したり、サーバーからアクチュエータに命令を送信したり。つまり、IoTデバイスは、データを垂れ流すだけの端末で、肝心のAI処理はサーバー(クラウド)がやっていたわけだ。

ところが、IoTデバイスが急増すると、深刻な問題が発生した。インターネット回線を流れるデータが急増したのだ(あたりまえ)。IDCによれば、2025年にはそのデータ量は年間80ゼタバイト(ゼタ:10の21乗)に達するという。

結果、何がおこるか?

データ量が増えれば、ネットワークの負荷が増大し、通信速度が落ちる。さらに、サーバー(クラウド)の負荷も増え、AIの処理速度が落ちる。しかも、ネットワークがダウンしたら、集めたデータをサーバーに送れないから、お手上げ。データは石油に匹敵する資源というが、宝の持ち腐れだ。

そこで、この問題を一気に解決する方法が考案された。エッジAI、読んで字のごとく、エッジ(端)でAIをやる方法だ。

具体的には、サーバー(クラウド)で行うAI処理の一部を、エッジ(端)のIoTデバイスに切り出して、そこで処理する。または、現場にIoTデバイスを束ねるローカル・サーバーを設置し、そこで処理する。つまり、サーバー(クラウド)とネットワークの負荷を減らすため、現場に近い「エッジ(端)=IoTデバイス」に分散処理させるわけだ。

ラティスは、この「エッジAI」にフォーカスしている。しかも、他社にないアドバンテージがある。それがFPGAだ。

FPGAは、ハードウェアなのに、内部ロジックを何度も書き換えることができる。ハードウェアの高速性とソフトウェアの柔軟性を備えた特殊な半導体だ。ちなみに、FPGAを作れるのは、世界でアルテラ、ザイリンクス、ラティスの3社のみ。アルテラはすでにインテルに買収され、ザイリンクスもAMDに買収される予定。つまり、独立系はラティスのみ。

でも、インテル、AMD相手じゃ、勝ち目はない?

ノー、土俵が違う。

アルテラ(インテル)とザイリンクス(AMD)はハイエンドなFPGA、ラティスはローエンドなFPGAという棲み分けができている。つまり、ラティスは、機能は控え目だが、コンパクトで安価で低消費電力がウリ。現場に大量に設置されるIoTデバイスにうってつけだ。しかも、FPGAはCPUとプログラムで処理するより高速だから、リアルタイム性が要求されるエッジデバイスや、処理の重いAIでも対応できる。つまり「エッジAI」に最適なのだ。

というわけで、ラティスは、未来の巨大複合市場「AI・IoT」とその最先端技術「エッジAI」で優位に立っている。これで、株価さえ安ければ、大化け間違いなし。

では、現在の株価は?

2021年10月で65ドル。あらら、けっこう上がってますね。じつは、ラティスの株価は、この3年で10倍になっているのだ。

さては、投資家はもう気づいている?

まだ大丈夫。ラティスのAI・IoTとエッジAIの優位性に気づいている投資家はほとんどいない。取引先の大手証券会社の担当者も、AMDを熱く推奨しつつ、

「ラチス?それなんですか?」

まだ大丈夫ですね。

ではなぜ、ラティスの株価は3年で10倍になったのか?

この数年の半導体株の人気につられて上がっただけ。とはいえ、ラティスがAI・IoTのベスト銘柄と認識されるのは時間の問題だ。

そのとき何起きるのか?

エヌビディアが200ドル強、AMDが100ドル強なので、200ドルは軽く超えるだろう。図体のでかい大企業より小粒のハイテク企業の方が、株価が高くなるのは、この世界の常だから。

というわけで、AI・IoTで伸び代最優先なら、ラティス・セミコンダクターだろう。

《つづく》

参考文献:
(※1)一九八四年〔新訳版〕出版社‏早川書房
(※2)ビジュアルマップ大図鑑世界史、スミソニアン協会(監修),本村凌二(監修),DK社(編集)出版社:東京書籍

by R.B

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