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週刊スモールトーク (第474話) リスク資産への投資(2)~元本保証は妄想である~

カテゴリ : 社会経済

2021.05.07

リスク資産への投資(2)~元本保証は妄想である~

■AI資本主義の時代

賃金は上がらず、設備投資だけが増えている。

意味するところは・・・「機械の労働>人間の労働」。企業にとって、人間より機械の方が大事なわけだ。身もフタもない話だが、人間より機械の方が働き者だから、しかたがない?

さらに、AI(人工知能)が進化し、知恵をつけた機械が、人間の労働の丸取りしようとしている。人間がエデンの園に回帰し、辛い苦役から解放される日は近い。

時期は2050年頃か・・・意外に早い?

新型コロナ、それに続く新手のパンデミックが時計の針を速めるだろうから。じつは、パンデミック対策にワクチンも治療薬もいらない。完全な非接触社会が実現すればいいのだ。

テレワーク?

ノー!

人間は働かず、代わりに機械が働く。人流も対面も激減するから、感染率は劇的に下がるだろう。つまり、パンデミックが「人間の労働→機械の労働」を後押ししている。

そうなれば、人間は遊んで暮らせるからハッピー?

話はそうカンタンではない。資本主義の終着点が近づいているから。持てる者と持たざる者に二分される恐ろしい世界。前者は、機械の所有権を持ち、その配当で優雅に暮らす。後者は、国から最低限の生活費を支給され、生存するだけ。この2つの階層は、居住区もインフラもサービスも別々で、法律も違うものになるだろう。

この「AI資本主義の時代」が現実になる根拠は2つある。

第一に、ルールを決めるのは金と権力を持つ資本家であること。第二に、資本家にそれなりの言い分があること。

人間が遊んで暮らせるのは誰のおかげ?

資本家が所有する機械のおかげ。もちろん、労働者にも言い分はある。好きでそうなったわけではない!

でも、労働のスペックでは「機械>>人間」だから、グの音も出ない。我々は、この世界が適者生存・弱肉強食であることを思い知らされる。

じゃあ、AIの開発をやめればいい。

それはムリ。弱肉強食の世界で生き延残るには、AIが欠かせないから。最強のAIを持った者が丸取りするゼロサム・ゲームなのだ。世界中の国と企業が、AI開発に躍起になるのは当然だろう。

人間が強欲から解放されない限り、この不毛の競争は続く。デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの偽りの神)が誕生し、地上から人類を掃討する日まで。

■元本保証は妄想である

地球の歴史は、AI資本主義の時代からデウス・エクス・マキナの時代へと続く。AI資本主義は、資本家以外の99.99%の人間にとって悪夢だが、デウス・エクス・マキナの時代がどうなるかは予測不能。それを決めるのは、人間と異質の概念とアルゴリズムを持つAIだから。ただ、資源を食いつぶすだけの人間が、最終的に淘汰されるのは間違いない。

だが、AI資本主義が成立する前に、深刻な問題が発生するだろう。「不労所得>勤労所得」で貧富の差が極大化するのだ。勤労所得と不労所得には根本な違いある。勤労所得は、自分の時間(人生)を売却して得る。基本、時給制で効率が悪い。一方、不労所得は文字どおり「不老」で、人生を切り売りする必要はない。しかも、レバレッジが効くから、効率がいい。だから、「不労所得>勤労所得」なのである。

早い話、勤労所得は足し算で、不労所得は掛け算なのだ。

不労所得の源は2つある。安全資産とリスク資産だ。前者は銀行預金、後者は株式・投資信託が一般的。ともに、働かず稼ぐ方法だが、じつは似て非なるもの。リスク資産は勝つか負けるか五分五分だが、銀行預金は必敗だから。

たとえば、メガバンクの利息は0.002%で、100万円を100年預けても、2000円しか増えない(早い話ゼロ)。でも、銀行預金は元本保証で減らないから、必敗じゃない?

ノー、必敗です。

そもそも、「元本保証」は妄想なのである。

たしかに、現金・預金は一見「元本保証」にみえる。お札に記された額面も、通帳に印刷された金額も減ることはない。株式市場が暴落しようが「1万円」は「1万円」だ。だが、大事なことを忘れている。

物価が上昇し、1万円で買えた商品が、2万円になったらどうするのだ?

「1万円」が「5000円」にすり替わっている。額面は変わらないが、実質、元本割れ。物価が少し上昇するだけで、現金・預金は目減りするわけだ。

2021年4月から、米国で住宅価格の上昇が始まった。新型コロナでニューヨークからの脱出組が、他の地域で、住宅需要を押し上げているのだ。さらに、物価が平均で5%上昇するという予測もある。米国はインフレが避けられそうもない。これは世界規模でおきているから、日本もそうなるだろう。

それ以前に、日本の物価はこれまでも上昇してきた。自動車の販売価格は、この20年で1.5倍になっている。運賃や公共料金も、値上げはあっても、値下げはない。さらに、食料品は価格を据え置き、量を減らすステルス値上げ横行している。その上昇率は、銀行利息0.002%どころではない。つまり、現金・預金は確実に目減りしているのだ。

それでも、日本人は現金・預金を盲信する。それは数字にも表れている。金融資産に占めるリスク資産の比率は、米国は48%だが、日本は17%。じつに3倍の開きがある。

冷静に考えてみよう。

お金には何の価値もない。人間にとって価値あるモノやサービスと交換してナンボ。しかも、交換比率は「モノ>カネ」にシフトしている。つまり、現金・預金は、たくさんもつほど、長くもつほど、目減りしているのだ。

■不労所得とリスク資産が資産を増やす

日本人は、投資を嫌い、働いて稼ぐことを尊ぶ。額に汗して働くのが一番というわけだ(バブル時代は別)。

それは家計所得に表れている。「勤労所得」と「不労所得」の比率は、日本は「8:1」だが、米国は「3:1」(2015年)。米国は、日本にくらべ、不労所得が圧倒的に多い。その差は、資産の伸び率に反映される。過去20年の家計資産の伸び率は、日本は1.5倍で米国は3.3倍。つまり、米国人の資産は、日本人の2倍のスピードで増えているのだ。

この差は老後を直撃する。米国人は、リタイア後は不労所得で悠々自適。一方、日本人は、不労所得が少ないから、死ぬまで働くしかない。政府もそれを推進する。最近、やたら目にするのが「定年延長」だ。定年を遅らせ、年金支給年齢を繰り下げ、年金の負担を減らそうとしている。とはいえ、少子高齢化がすすみ「年金を貰う引退世代>保険料を払う現役世代」だから、しかたがない。十分生きた引退世代と人生これからの現役世代、どっちを優先しますか?という話。

一方、米国式の老後が成立するかどうかは、株価にかかっている。株価が下がれば、元も子もないから。そこで、過去の株価をみてみよう。

日本の日経平均株価は、2000年末の1万4315円から、2020年末の2万6656円に上昇している。20年で1.8倍だ。一方、米国のダウ平均株価は、2000年末の1万788ドルから、2020年末の3万179ドルで、2.8倍。

ここで、カンタンな計算。20年で2.8倍を、日本の銀行利息(0.002%)で稼ぐには?

1400年!

気の長い話どころではない。

でも、騙されないぞ・・・20年は上がったかもしれないが、100年なら?

史上もっとも有名な暴落といえば、1929年10月のウォール街大暴落だろう。株価が89%も下落したのだ。結果、「世界恐慌→ヒトラー政権成立→第二次世界大戦」の連鎖を生んだことは周知である。

では、株価はいつ元に戻ったのか?

1954年11月、暴落から25年後のことだった。これが「現代」の時代区分では最長記録である。この間、2度の世界大戦、1度のパンデミック(1918年のスペイン風邪)があったから、世界は平穏だったわけではない。というわけで、「人生100年」なら、生きている間に株は上がると考えていいだろう(100%ではない)。

つまりこういうこと。

不労所得が多いほど、リスク資産が多いほど、資産は増える。それが貧富の差を生み、老後を決定づける。相関関係も因果関係も成立しているから、間違いないだろう。

by R.B

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