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週刊スモールトーク (第460話) 国際金融資本(3)~南満州鉄道とハリマン財閥~

カテゴリ : 歴史経済

2020.10.31

国際金融資本(3)~南満州鉄道とハリマン財閥~

■日露戦争とハリマン財閥

日本は、日露戦争で大国にのし上がり、太平洋戦争で焦土と化した。

繁栄と破滅・・・究極の排反事象なのに、ともに国際金融資本が大きくからむ。皮肉な話ではないか。しかも、太平洋戦争の遠因は日露戦争にあるから、二重の皮肉。歴史は皮肉と謎にみちて、小説より奇なり。

太平洋戦争の原因は米国政権の反日、それにつきるだろう。その根は深く、中韓なみ。ただし、起源はさらに古く、日露戦争までさかのぼる。

時計を1905年9月5日に巻きもどそう。

この日、日本とロシアの間でポーツマス条約が締結された。日露戦争が終結したのである。講和会議を仲介したのは、米国のセオドア・ルーズベルト大統領。会議の場所も米国のポーツマス、だから「ポーツマス条約」なのである。

ルーズベルトは、日本のために骨を折ったわけではない。狙いは、米国の国家戦略「環太平洋圏の覇権」にあった。太平洋の制海権をにぎり、太平洋沿岸諸国を支配するため。その最西端に位置するのが極東で、中でも中国(清)が重要だった。人口と領土が桁違いだから(ただし資源は少ない)。

ところが、中国には、すでにヨーロッパ列強(イギリス、フランス、ドイツ)が侵出していた。そのため、後発の米国はなかなか食い込めない。そこで、米国は日本に目をつけた。ヨーロッパ勢は侵出していないし、1853年の「ペリーの黒船来航」の実績もあるから。まず、日本を橋頭堡にして、中国に侵出しようと考えたのである。その第一弾がポーツマス講和会議の仲介だったのだ。

政治の次はビジネスである。その実行部隊が米国のハリマン財閥だった。狙いは、ポーツマス条約に便乗して、巨大な利権を得ること。ハリマン財閥の当主エドワード・ヘンリー・ハリマンは凄腕ビジネスマンだった。日露戦争では、国際銀行クーン・ローブ商会といっしょに戦時公債を買っている。日露戦争が終結する前に「戦後」の商売を考えていたわけだ。

ハリマンは迅速だった。ポーツマス条約が署名されたのは1905年9月5日。ところが、ハリマンは、1905年8月10日にニューヨークを出発し、8月31日には横浜港に到着。ポーツマス条約が締結される前に、日本にいた!?

いるべき時に、いるべき場所にいる、それが成功の第一原理だろう。

ハリマンの先見の明と、行動力は見上げたものだが、米国の「官民一体」も見逃せない。というのも、きれいごとで国の安全保障は確保できない。だから、中国の戦略は、安全保障の視点では間違っていない。問題は、あからさまにやったこと。もっと、コソコソやればうまくいったのに、現代の国際金融資本のように。

ハリマンの目的は明快だった。「南満州鉄道の共同経営」、その見返りは資金援助。ハリマンは、そこまでして「南満州鉄道」が欲しかったのである。

米国の鉄道王だから、アジアにも進出したい?

そんな地味な話ではない。狙いは、なんと「地球一周」。

■幻の桂・ハリマン協定

ポーツマス条約で、日本はロシアから南満州の鉄道を譲渡された。東清鉄道の南満州支線(旅順~長春)で、全長は764km。それが、徐々に拡張され「南満州鉄道(満州鉄道ともいう)」まで発展するのである↓

Manchuria_Map

ハリマンは、この南満州鉄道が欲しかった。ハリマンには壮大な夢があったのだ。それはなんと「世界一周鉄道」。

ルートは「アメリカ → 太平洋 → 満州 → ロシア → ヨーロッパ → 大西洋 → アメリカ」(太平洋と大西洋は船で、あとはすべてハリマン鉄道)。

鉄道で行く世界一周の旅、なんとも夢のある話ではないか。じつは、この時代、もう一つの世界一周があった、鉄道でも船でもなく、飛行船。

1909年、ドイツで世界初の航空会社「DELAG」が創立された。創業者はツェッペリン伯爵、ツェッペリン飛行船の開発者でもある。自前の飛行船で、世界一周をもくろんだのである。

DELAGの飛行船は、1936年に50回も飛行し、大西洋航路をほぼ独占した。次はいよいよ世界一周、その時、悲劇がおきる。63度目のフライトで、飛行船「ヒンデンブルク号」が大爆発をおこしたのである。

ニューヨーク近郊のレイクハースト飛行場に着陸する寸前に、それはおきた。死者36名、重傷者62名の大惨事。しかも、その一部始終がフィルムにおさめられた。全長245mの巨体が、わずか35秒で燃え尽きる、そんな地獄絵が、人々に飛行船の恐怖を植えつけた。この瞬間、飛行船の未来は絶たれたのである。その後、空を支配したのは「飛行機」だった。

なんともおかしな話だ。冷静に考えてみよう。

飛行機が墜落したら、死者36名、生存者62名(死亡率30%)ではすまない。奇跡でもおきない限り、全員死亡。どちらが安全かは明らかだ。つまり、飛行船の未来は、明快な論理ではなく、根拠のないイメージによって絶たれたのだ。

このような、カフカの不条理のようなイベント分岐は、歴史上枚挙にいとまがない。たとえば、自動車産業。100年前、有望だったのは蒸気自動車と電気自動車だった。ところが、生き残ったは、危険が一杯のガソリン車。基本、不揮発性のガソリンの爆発で走るので、いつ吹き飛ばされてもおかしくない。

半導体産業もしかり。CPUで生き残ったのは、アーキテクチャーがぐちゃぐちゃのインテル。おかげで、プログラマーは苦労させられたものだ(当時の言語は機械語)。一方、洗練されたCPUを供給するモトローラ、ナショナルセミコンダクター、TIはとうの昔に退場。実力勝負のテクノロジーでさえ、こんな不条理な分岐がおきるのだ。

ハリマンの世界一周鉄道に話をもどそう。

このルートの中で、最も長いのが「満州 → ロシア → ヨーロッパ」。始点は「満州」なので、ここがないと何も始まらない。ハリマンが、資金援助のニンジンをぶらさげて、日本にすっ飛んできたのは、そのためだ。

一方、この申し出は、日本にとっても渡りに船だった。ハリマンは米国の鉄道王で、鉄道の敷設技術と運行ノウハウをもっている。しかも、資金援助つき。これをカモネギと言わず、なんと言う。日本のリーダーたちは小躍りして喜んだに違いない。

というわけで、話はとんとん拍子にすすみ、1ヶ月後には、桂・ハリマン協定が締結された(桂は当時の首相)。

ところが、ポーツマスから帰国した外相の小村寿太郎は、これを聞いて激怒した。日露戦争で、9万人の戦死者と19億円の戦費で勝ち取った「満鉄の利権」を、米国と分け合う?

一体何を考えているのだ!

こうして、桂・ハリマン協定は、歴史年表から消えた。一方、米国のセオドア・ルーズベルト大統領は面目丸つぶれ。日本の外債を買ってやって、講和の面倒までみてやったのに ・・・ 今に見てろよ。

■反日の始まり

その後、満州をあきらめた米国は、機会均等をかかげて、中国(清)進出をもくろむが、これも失敗。先に、中国に進出していたイギリス、ロシア、日本が手を組んで、アメリカを締め出したのだ。イギリス・ロシアはムカツクけど、日本は超ムカツク・・・ 今に見てろよ。

そんなこんなで、セオドア・ルーズベルトは、筋金入りの「反日」大統領になった。その後、米国政権内で反日は継承され、フランクリン・ルーズベルト大統領でピークに達する。フランクリン・ルーズベルトは、主権国家なら絶対にのめない条件を日本に突きつけ、日本に先に銃を抜かせた。それが太平洋戦争なのだ。

ここで、興味深い「歴史のIF」をシミュレーションしてみよう。

もし、桂・ハリマン協定が成立していたら?

太平洋戦争がおきなかった可能性がある。南満州鉄道は日米の共有資産なので、米国は「反日」にはならないから。

史実では、日露戦争後、日本は満州の支配を強め、中国に侵出する。そこで、中国に利権をもつルーズベルト大統領の逆鱗に触れ、日米関係は一気に悪化、太平洋戦争へ突入する。

一方、桂・ハリマン協定が成立している世界では、満州は日米の共有資産なので、米国は日本のアジア侵出に目をつぶる可能性がある。その場合、太平戦争は歴史年表から消えるだろう。

その結果は重大だ。

日本は南進(南方のアジアに侵出)ではなく、北進(ロシアに侵出)を選択するから。その場合、ヨーロッパの歴史が変わる可能性がある。

まず、極東の状況に関係なく、ナチスドイツは、史実どおりソ連に攻め込むだろう。ところが、日本が北進を選択する世界では、極東で日ソが対立する。そのため、ソ連は史実のように、極東軍を西方のドイツ軍にまわせない。結果、独ソ戦争は史実より膠着し、勝敗も微妙になるだろう。

つまり、桂・ハリマン協定が成立した世界は、われわれの世界とは大きく異なる可能性がある。歴史が一変するかもしれないのだ(確かめようがないが)。

では、どっちが良かった?

いつ、誰にとってか?による。太平洋戦争を生き抜いた人にとっては、桂・ハリマン協定が成立した方がいいだろう。太平洋戦争が歴史年表から消え、広島・長崎が原子爆弾を落とされることもないから。

一方、今の若い世代は、史実どおり協定が破棄される方がいいだろう。太平洋戦争で敗北し、日本は軍事国家ではなくなるから。徴兵制はなく、自由と安全が保証され、安穏と暮らせる平和な世界。

■大日本帝国を同じ道を行く中国

「環太平洋圏の覇権」の上位概念に「海洋圏の覇権」がある。

太平洋だけはなく、大西洋、インド洋、日本海、東シナ海、南シナ海、すべての海洋が含まれる。現在も、そのすべての海域で覇権争いが続く。かくも人間の支配欲は強い。

とはいえ、「海洋圏の覇権」には「制海権の確保」が必要で、「制海権の確保」には強力な船が欠かせない。古代の脆弱な木造帆船では、地中海(内海)が精一杯だろう。

ところが、日露戦争の前後、太平洋や大西洋を安定航行する艦船が登場する。その象徴が、日本の連合艦隊の旗艦「三笠」だろう。そのスペックをみてみよう。

・動力は15,000馬力の蒸気機関。

・最大18ノット(現代の艦船でも30~40ノット)。

・航続距離は13,000km(米国西海岸から日本まで8000km)。

・主砲の30センチ砲は最大射程は12km。

・全長132m、乗員860名。

これなら、日本海はもちろん、太平洋、大西洋の制海権も射程内だ。というわけで、日露戦争以降、「環太平洋の覇権」が現実になったのである。

その後の歴史をみてみよう。

1940年代、大日本帝国は「大東亜共栄圏」をかかげ、米国の「環太平洋の覇権」に挑む。大東亜共栄圏とは、欧米の植民地支配に代わり、大日本帝国を中心に東亜諸民族が共存共栄すること。もし、成立すれば、環太平洋の西半分が大日本帝国のもの。米国の環太平洋の覇権と衝突するのは明らかだ。つまり、太平洋戦争はおこるべくしておきたのである。

この戦争で、日本は敗北し、半ば米国の属国となった。ところが、21世紀、米国に挑戦する新たなプレイシャーが登場する。中国である。

中国は、東シナ海や南シナ海を始め、太平洋の西方の覇権を握ろうとしている。米国の環太平洋の覇権と衝突するのは明白だ。現在進行中の米中対立は、貿易不均衡や知財の窃取が主因ではない。根本にあるのは「米国の環太平洋の覇権 Vs. 中国のアジア覇権」。つまり、今度の敵は「中国版・大東亜共栄圏」なのだ。しかも、最も重要な国家安全保障なので、外交では解決不能。

では、その結末は?

まずは、過去データから。

・20世紀の日米対立 → 太平洋戦争 → 核戦争(広島・長崎に原爆投下)

帰納法で推論すると・・・

・21世紀の米中対立 → 米中局地戦 → 核戦争(核ミサイルの撃ち合い)

ただし、米中核戦争なら、日本も対岸の火事ではすまない。横須賀に在日米海軍司令部があるから。倫理の問題はさておき、戦時においては、敵の心臓を叩くのは常道だろう。

つまり、こういうこと。

中国は、大日本帝国と同じ道を歩んでいる。

では、つぎはどちらが勝つのか?

第34代アメリカ合衆国大統領のアイゼンハワーはこう言っている。

「核戦争は、敵を倒すことと、自殺することが一組になった戦争である」

by R.B

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