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週刊スモールトーク (第457話) 米中対立の原因と日本への影響~核戦争への道~

カテゴリ : 戦争歴史

2020.09.19

米中対立の原因と日本への影響~核戦争への道~

■万世一系と一世一代

米中対立が激化している。

ところが、日本の反応は鈍い。心配しているのは、貿易(金儲け)と尖閣諸島ぐらい?

たしかに、尖閣諸島の状況は深刻だ。中国の漁船や公船が、周辺海域にわんさか。すでに戦争状態だと言い切る識者もいるが、あたらずとも遠からず。一方、日本政府は毎度の「遺憾です」・・・ノーコストの外交。これにどんな効果があるのか知らないが、無為無策の極み。これでは、尖閣諸島が中国領になるのは時間の問題だろう。次は沖縄か?

だが、もっと怖いことがある。

米中対立が核戦争に発展する、と考えたことはないのだろうか?

根拠をしめそう。

まず、前提として、米国も中国も戦争は望んでいないが(たぶん)、妥協するつもりもない。

結果、何が起きるか?

いつかどこかで、偶発的な局地戦がおこるだろう。場所は、南シナ海、東シナ海、それとも、台湾海峡か。

通常戦では米軍が圧勝するだろうが、中国は屈しない。負けを認めたが最後、政権が崩壊するから。中国は、日本のように一枚岩ではないのだ。

日本は、単一民族による万世一系の国家。つまり、天皇の血筋が恒久的に続く。一方、中国は、多民族による、一世一代の国。つまり、王朝が交代するたびに血筋が変わる。現在の中国共産党も、前の清王朝と、血筋どころか、民族さえ違う(清朝は女真族、共産党政権は漢族)。つまり、中国には、日本のような時代を超越した求心力がないのだ。

だから、中国が負けを認めれば、多民族と一世一代の問題が一気に噴出する。異民族の新疆ウイグル自治区、チベット自治区、香港で反乱がおきるか、漢族の内部で政権交代がおきるか、または両方だろう。

■米中核戦争とブラック・スワン

というわけで、中国の選択肢は一つ・・・「核」。核ミサイルで脅すか、実際に使うか。ただし、1発でも発射すれば、米国も反撃するから、行き着くところ、核戦争。1962年の「キューバ危機」が再現されるわけだ。このとき、米ソの指導者は土壇場で冷静さをとりもどしだが、今回もそうなるだろうか?

つまり、この手の問題は、究極の伸るか反るか?

「3.11」を思いおこそう。2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生し、巨大津波が東北沿岸部を襲った。結果、福島第一原子力発電所は電力を喪失しメルトダウン、広大な地域が放射能で汚染された。当時の菅総理大臣は「東日本壊滅」を覚悟したという。

このように、起こる確率は低いが、一旦起こると「カタストロフィー(破滅)」にいたる事象をブラック・スワンという。

では、米中核戦争は?

3.11を凌駕するブラック・スワン。

日本にとって、対岸の火事ですまないから。在日米海軍司令部のある横須賀が、核攻撃を受ける可能性が高いのだ。中国を非難してもしかたがない。戦争がおこれば、敵の中枢を叩くのはあたりまえ。それとも、自国が破壊される方がいいですか?という論理。つまり、戦争では個々の命は紙切れ同然になるのだ。このような全体主義は、弱肉強食世界の第一原理であることを忘れてはならない。

というわけで、米中対立が長引くほど、日本が核攻撃を受ける確率が上がる。そもそも、日本は、中国、韓国、北朝鮮、ロシア・・・敵性国家に囲まれている。地政学上、中東とならぶ最悪の危険地帯なのだ。

ところが、日本の通貨「円」は安全資産といわれ、高値安定。日本が一撃くらえば、円は大暴落なのに、不思議な話だ。存続が危ぶまれる国の通貨など、一体、どこの誰が買うのか。

ひょっとして、投資家っておバカ?

ノー!

彼らは目先(今日明日)しか見ていない。為替レートが毎日変動するのはその証拠。

ところが、マスメディアや識者はそんな話はしない。権威付けされたサイトも、そこには言及しない。米中対立がテーマなら、「浅い分析」でお茶を濁す。だから、日本は「ゆでガエル」、さまつなことに熱中している。モリカケ、桜を見る会、検事が賭け麻雀するのはケシカラン・・・

それがどうしたというのだ?

それで国が滅びますか?

もっと、大事なことはいくらでもあるでしょう。

話を「浅い分析」にもどそう。

■環太平洋圏の覇権

マスメディアや識者の「浅い分析」とは・・・米中対立は貿易摩擦から始まった。それがファーウェイの問題に発展し、新型コロナ禍で恨みを買って、米国大統領戦もビミョーにからんで、深刻化した。だから、元を正せば経済問題、悪いことが重なっただけ。

一方、もう少し踏み込んだ言説もある。2030年までに中国はGDPで米国を抜いて、世界一の大国にのしあがる。米国には、それを容認しない一派が存在し、勢力を増しているから、今回は本気・・・せいぜいこんなところだろう。

では、「深い分析」とは?

米中対立は、経済や恨みではなく、地政学と歴史学に裏打ちされた「パワーバランスの第一原理」に起因する。

具体的には「海洋圏の覇権」。太平洋や大西洋の制海権を確保し、その沿岸諸国を支配すること。米中対立は、その太平洋版の「環太平洋圏の覇権」なのだ。根っこが「パワーバランスの第一原理」なので、話し合いでは解決はムリ。妥協点があるとすれば、日本と台湾と東アジアは中国にあげるから、オーストラリア、グアム以東は手を出さないでね・・・

ありえない?

米国が呑めばカンタンに成立する。乱暴な予測にみえるが、このルールは歴史が証明している。

時計を19世紀末に巻き戻そう。

この頃、初めて「環太平洋圏の覇権」の概念が生まれた。米国も日本もまだ意識していなかったが、20世紀に入ると、この概念が現実化する。「日米対立」である。米国は、環太平洋圏の覇者たらんとし、太平洋の西方に位置する極東と東アジアを支配しようともくろんだ。

一方、大日本帝国は「大東亜共栄圏」をかかげ、同地域を支配しようとする。理由は、欧米・ロシアがアジアが植民地にしようとしていたから。つまり、やられる前にやる。国家安全保障の鉄則である。

こうして、「米国の環太平洋圏 Vs. 大日本帝国の大東亜共栄圏」の構図が成立した。結果、第二次世界大戦(太平洋戦争)が勃発し、広島と長崎に原爆が投下された。人類史上初の核戦争となったのである。

人類史上初の核戦争?

日本が一方的に落とされただけでは?

さては、「日米対立 → 第二次世界大戦 → 核戦争」から、ムリクリ「米中対立 → 米中戦争 → 核戦争」にもちこもうとしている?

ノー!

第二次世界大戦は、まぎれもない「核戦争」だったのだ。

■史上初の核戦争

第二次世界大戦で、核兵器に手を染めたのは、米国だけではなかった。ドイツも日本も原子爆弾を開発していた。たまたま、米国だけが成功しただけ。もし、日本もドイツも開発に成功していたら、躊躇なく使っていただろう。

つまりこういうこと。

第二次世界大戦は、「核使用」が前提で、しかも、現実に2度も使われたから、正真正銘の「核戦争」。

ではなぜ、米国だけが原子爆弾の開発に成功したのか?

原子爆弾は理論上可能なことは、日本もドイツもわかっていた。だが、製造するのは至難というか、ほぼ不可能。米国だけが成功したのは、ひとえに、マンハッタン計画のおかげ。この計画は、史上最大の巨大プロジェクトで、5万人の人員と20億ドルの資金が投じられた。20億ドルは現在の貨幣価値で2兆円。当時の日本の一般会計の35倍にあたる。こんな神技を使わないと、原子爆弾は作れなかったのである。

日本の研究者たちは、原爆は作れないことはわかっていた。一方、ドイツの開発責任者ハイゼンベルクは、開発を妨害したフシもある。ハイゼンベルクは早熟な天才だった。31歳でノーベル物理学賞を受賞したほど。もっと凄いのは彼の自著「部分と全体―私の生涯の偉大な出会いと対話」。その中に、ハイゼンベルクの学生時代の雑談がでてくるが、並外れた抽象的思考能力と長大な思考の連鎖が読み取れる。「アインシュタインの相対性理論はカンタンだよ」の発言も・・・学生でこれなら、すべてお見通し、ムダなことは1ミリもやりたくなかったのだろう。

じつは、第二次世界大戦中、ドイツには、米国のマンハッタン計画に匹敵する国家プロジェクトがあった。「V2ロケット計画」である。V2ロケットは、史上初の大陸間弾道ミサイルで、10年先を行く超ハイテク。ところが、兵器としてのコスパが悪すぎた。もし、ナチスドイツがV2ロケットにかけたヒト・モノ・カネを原子爆弾計画に振り替えていたら、原子爆弾は完成していたかもしれない(可能性は低いが)。

とはいえ、原子爆弾子は「狂気」の兵器である。広島に原爆を投下したB-29「エノラ・ゲイ」の砲撃手ロバート キャロンは、こう証言している。

「キノコ雲は灰紫色の煙の塊がむくむくと湧き起こり、その中に『赤い芯』がみえて、中では何もかもが燃えているのがわかった。遠ざかるにつれて、キノコの根もとが見え、その下には、60~90mの厚さの残骸と煙のようなものが見えた。いろいろの所で火の手がワッと立ち上がるのを見た。それはあたかも、石炭床の上に立ちのぼる炎のようだった。キノコ雲や荒れ狂う塊が見える。まるで都市全体が溶岩か糖蜜でおおわれ、それが山麓に向かって登っていくように見えた」(※1)

この炎熱地獄には、30万人の市民がいたのである。核戦争とは、これが正当化される世界なのだ。敵をやっつけるより、味方がやられたほうがいいですか、という鋼鉄の論理によって。

哲学者ニーチェは、発狂する前にこんな言葉を残している。

「狂気は個人にあっては、まれなものだが、国家においては通例である」

《つづく》

参考文献:
(※1)原子爆弾の誕生(下) リチャード ローズ (著), Richard Rhodes (原著), 神沼 二真 (翻訳), 渋谷 泰一 (翻訳) 出版社: 紀伊國屋書店

by R.B

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