BeneDict 地球歴史館

BeneDict 地球歴史館
menu

週刊スモールトーク (第442話) 不要不急の外出は控え、五輪は開催する謎の国

カテゴリ : 社会

2020.02.23

不要不急の外出は控え、五輪は開催する謎の国

■不要不急の外出

日本は豊かな国だ。

街はモノであふれ、餓死する者もいない。国民皆保険で、世界一の長寿国。貧富の差が小さく、弱者の権利も守られている。

一方、「わがまま」が「人権」として認められる国でもある。政府チャーター便で武漢から帰国しながら、検査拒否して帰宅するのが許されるほど。「検査を拒否する人権」が「パンデミック(感染爆発)の脅威」に勝るわけだ。人権擁護の御旗を掲げ、大量死のリスクに目をつむる、恐ろしい国である。

つまり、日本は「モノ」があふれているが、「筋」も「理」もない。それを、為政者が率先するのだから、あたりまえ。

今回の、新型コロナウィルスの対応もしかり。

まず、政府がおかしい。

2月16日、政府は、新型コロナウィルスの感染予防のため「不要不急の外出、集まりを控えるように」と呼びかけた。

言うのはタダ、口とは便利なものだ。具体的にどうしろというのだ?

日本は精神論と金儲けの国。だから、臨時休業を宣言する企業はない。疫病に怖気づいてどうする、根性のあるところ見せろ!というわけだ。だから、サラリーマンは、濃厚接触の温床「満員電車」に詰め込まれ、毎日、通勤を続けている。学生もしかり。

それに、食料や日用品はどうするのか?

つまり、外出のほとんどが「不要不急」ではなく「必要火急」。それでも、「不要不急の外出は控えましょう!」で済ませる。それが国政の最高機関の政策?

そうこうしているうちに、日本の感染者数は増えるばかり。一体、どうやって収束させるつもりなのだろう。

■#東京オリンピック中止

東京都もおかしい。

「東京マラソンは一般参加者を参加させず、招待選手(エリートランナー)100人ほどで行う」と発表した。

一般参加者は感染するけど、招待選手は感染しない?

一般参加者は感染したら困るけど、招待選手は感染してもかまわない?

立場、能力は違っても、疫病の前では同じでしょう。

自分が招待選手なら、絶対に参加を取りやめる。感染のリスクがあるので、Aさんは参加させないけど、あなたはどうぞ!人を食った話だ。

東京オリンピック組織委員会は、もっとおかしい。

最近、SNSでハッシュタグ「#東京オリンピック中止」がトレンド入りした。恐怖をあおるとか、デマだとか、非難もあるが、ほとんどが正論。ところが、東京オリンピック組織委員会は「デマだ、中止も延期もない」と全面否定した。自分たちのメンツ、都合しか考えていない。醜悪なエゴ丸出しで、見苦しいかぎり。最終的に、東京オリンピックは中止になるのは間違いない。そのとき、どんな顔で弁解をするのか?

常識で考えれば、オリンピックは、疫病で最も危険なイベント。世界中から選手と観客が集まり、選手村、競技場、ホテル、観客席で濃厚接触する。しかも、その後、全員が帰国。結果、世界中に疫病が拡散する。つまり、オリンピックは、感染する確率と感染拡大力が極大値なのだ。それを断行しようとする日本。世界が日本をどんな目で見ているか、考えたことがあるのだろうか?

今、世界中で、展示会やセミナーが中止されている。IBMやエヌビディアように、社員を守るために、カンファレンスを自粛する企業もある。さらに、2月21日、アメリカCDC(疾病対策センター)は、日本で市中感染が広がっていることを理由に、日本への渡航に注意を呼びかけた。

ところが、日本は東京マラソンも東京オリンピック・パラリンピックもやる。ここまで準備をしてきて、今さら止められるか、と思っているのだろう。「スポーツ>パンデミックの脅威」というより、「自己達成感>パンデミックの脅威」。物事の軽重もつけられない愚かさ、どころの話ではない。

つまりこういうこと。

自分たちの都合とメンツを守るためなら、世界中に感染が拡大していくのを見ていられる・・・これは悪魔です。

そもそも、政府が「不要不急の外出を控えるように」と言いながら、東京マラソンも東京オリンピック・パラリンピックも開催って、どういうこと?

それとも、スポーツは必要かつ火急なイベントなのかな?

政府、都庁、委員会にも、この危険な愚行に気づいている人はいるだろう。ところが、それを表に出せないのが日本。この風土、気持ち悪くないですか?

■戒厳令

では、感染拡大を止めるには、どうしたらいいのか?

日本全土で外出禁止令を発動すればいい。もちろん、入出国も禁止。潜伏期間が2週間なので、期間は1ヶ月でいいだろう。

国民に日時を通達し、食料や日用品を備蓄させる。電気・水道・ガスが供給されるので、災害時にくらべればマシだろう。その間、新型肺炎の症状が出たら、家族とともに隔離する。市中の管理・統制は自衛隊に一任する。1ヶ月たてば、感染者があぶりだされ、感染拡大のリスクは激減するだろう。たった、1ヶ月で感染拡大が防げるのだ。

でも、政府はやらないだろう。野党はもちろん、与党内部にも猛反対する者がいるから。

これ、戒厳令じゃん、絶対ムリ、誰が責任を取るのか!というわけだ。

こんな発想では、パンデミックは防げない。感染するだけして、死ぬだけ死んで、自然収束を待つしかないだろう。政府は何のためにあるのか?

武漢の政府チャーター便の運賃もそうだった。1月30日、菅官房長官が、運賃を「本人負担」とする政府方針を発表すると、野党はもちろん、与党内部からも、反対の声があった。政府負担にすべし!

「政府負担」といえば、聞こえがいいが、実質「国民負担」。つまり、納税者一人一人に請求書が行く(実際は知らないうちに徴収される)。

冷静に考えてみよう。

旅行者は遊びに行ったのだ。だから、自分で払うのが筋。

ビジネスマンは営利目的で行ったのだ。だから、会社が払うのが筋。

つまり、旅行者だろうが、ビジネスマンだろうが、何だろうが、航空運賃は「本人負担」があたりまえ。搭乗者でも、当事者でもない納税者が、なぜ、負担しなければならないのか?

たまたま、疫病が流行して、帰国が早まっただだけ。早まったから、帰りの航空運賃だけ無料、はおかしいでしょう。

こんなカンタンなこともわからないから、愚行の連鎖になるのだ。

2月22日、金沢で、県の職員が新型コロナウィルスに感染した。東京出張で感染したという。出張先、職場の上司、部下、同僚、家族の濃厚接触者、さらにその接触者、感染者がねずみ算式に増えていく。

さらに、突然変異で、空気感染を獲得したら?

これは荒唐無稽なSFではない。14世紀、世界で大流行したペストで、実際に起こったのだ。初めは、ノミやクマネズミ(中間宿主)を介して感染する腺ペストだった。ところが、北方ヨーロッパで、肺ペストに突然変異し、空気感染が始まったのだ。結果、爆発的に感染が広がり、ヨーロッパの人口の1/3が死んだ。

パンデミック(感染爆発)はすでに始まっているのだ。これを食い止めるには、優れたリーダーの元、強権発動で乗り切るしかない。

じつは、その成功例が日本にあるのだ。

■後藤田正晴の危機管理

1986年(昭和61年)11月21日、伊豆大島の三原山が大噴火をおこした。恐ろしい溶岩流が街に迫る。溶岩が海中に流入したら水蒸気爆発で、島民1万3000人の命が危ない。そこで、関係省庁の局長が官邸に集まり、緊急会議が開かれた。島民に、刻一刻と危険が迫る中、討議が続いたが、その内容は驚くべきものだった。

1.災害対策本部の名称をどうするか?

2.発生年次は、元号を使うか、西暦にするか?

3.自衛隊を出動させたら、誰が責任を負うのか?

業を煮やした官房長官・後藤田正晴は決断する。彼が発した指示はたった3つだった。

1.島民は今日中に全員避難

2.責任は全部俺が取る

3.君たち頼む

この鶴の一声で、会議は終了し、救助作戦が実行された。その後、後藤田は電話で次々と指示を出す。東京都の鈴木知事には「島民を収容するため、東京の体育館をすべて空けてくれ」、防衛庁幹部には「自衛隊の船を使え」。翌22日午前5時、最後まで島に残っていた大島町職員らが避難した。自衛隊の艦船、海上保安庁の巡視船、民間の汽船と漁船が総動員で、空前の大規模輸送が完了したのだ。

後藤田正晴は、日本では珍しい政治家だった。頭が切れ、決断力があり、覚悟もある。しかも、地位に執着しない(総理を断っている)。今の日本に必要なのは、このようなリーダーだろう。昨今のドタバタをみて、後藤田正晴はあの世で嘆いているに違いない。

by R.B

関連情報