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週刊スモールトーク (第430話) 生まれ変わり結社~よみがえる前世の記憶~

カテゴリ : 娯楽思想科学

2019.09.07

生まれ変わり結社~よみがえる前世の記憶~

■生まれ変わりの証拠

もし、「生まれ変わり」が本当なら、人間はすでに「不老不死」。

ところが、前世の記憶がないから、人生は毎回やり直し。魂は永遠でも、人生は連続していない。これでは「不老不死」とはいえないだろう。

では、前世の記憶を取りもどせるとしたら?

じつは、そう言い切る人たちもいる。私は前世で、どこそこに住んでいて、誰それに殺された。その誰それを訪ねて、問い詰めたら、白状した。生まれ変わりは本当だった!

どこかで読んだインドのお話。

この種の話は、なぜかインドに多い。インドの80%を占めるのはヒンドゥー教。その教義に「生まれ変わり(輪廻転生)」があるからだろう。それに、生まれ変わりを体系化したのも、古代インドの「ウパニシャッド哲学」だし。

とはいえ、「生まれ変わり」の証拠はない。証拠の「話」はあるけど、ほとんどが伝聞、限りなく怪しい。

つまりこういうこと。

「生まれ変わり」を信じるには、科学的証明と物的証拠が欠かせない。くわえて、信憑性の高いメディアに掲載されること。たとえば、学術雑誌「ネイチャー」とか。

じつは、このプロセスで、「幽霊」のような存在が確認されたことがある。

■電気工学の幽霊

1864年、イギリスのマイケル・ファラデーは「マクスウェルの方程式」を発表した。電気と磁気を統合する大理論で、テスラの交流理論とならぶ、電気工学のバイブルだ。

その「電気工学」が、今、絶滅危惧種になろうとしている。大学の工学部みれば明らかだ。学科名が「システム」や「情報」など見栄えのいいコトバに装飾され、客寄せパンダと化している。原理原則でいけば、工学は電気、機械、化学に帰着する。いずれも強力な大理論に支えられているからだ。

つまり、「情報」も「システム」も、モノ・コトの「見方」にすぎないのだ。ただし、シャノンの「情報理論」は別格。「情報」が添え物の「見方」ではなく、モノ・コトの「本質」になっているから。

もし、「見方」が学科になるなら、「人間心理」も入れなくては。たとえば「心理工学科」とか。

じつは、そのような学科がすでにある。金沢工業大学の「心理科学科」だ。「文系」ではなく「理系」であるのがミソ。人間の心理を科学して、商品開発に活かそうというのだ。

かつて、アップルのスティーブ・ジョブズは、ユーザーインタフェイスを極め、歴史に名を残した。彼は「使い勝手と心地良さ」を形にする天才だった。「心理科学科」は、それを数値化し、科学するわけだ。しかも、「人間心理」は、AI(人工知能)が最も不得手とする分野。ということで、来世、大学入るなら心理科学科? あらら・・・

話を、「マクスウェルの方程式」にもどそう。

この方程式が社会に与えた影響は大きい。「電磁波(電波)」の存在を予言したのだ。だが、時代は19世紀、誰も信じなかった。実体のない幽霊のようなものだから。

電波とは、空間が振動することで伝わる波。音波が空気の振動で伝わるように。

何もない空間が振動?

なんのこっちゃ!?

つまり、科学的的証明は必要だが、物的証拠がないと十分とはいえないのだ。それが科学なのである。

「マクスウェルの方程式」から150年経った今、「電波」を信じない人はいない。物的証拠が発明されたのだ。一人一台まで普及したスマホ。通話、SNS、ネット検索、買い物、位置情報、すべて「電波」なしでは説明できない。

というわけで、「生まれ変わり」を信じるには、科学的証明と物的証拠が欠かせない。「生まれ変わり方程式」とか「前世のぞき見装置」とか・・・当面はムリそう。

とはいえ、「生まれ変わり」は興味をそそるテーマだ。ところが、エンタメの世界では、「生まれ変わり」は人気がない。世界人口の半数を占めるキリスト教、イスラム教、ユダヤ教には「生まれ変わり」の概念がないからだろう。一方、日本人の半数近くが生まれ変わりを信じているという。仏教には「生まれ変わり」の教えがあるからだろうか。

ところが、2014年、キリスト教国で「生まれ変わり」のドラマが制作された。米英合作の「アンデッド」だ。このドラマでは、「生まれ変わり」は添え物ではなく、メインテーマ。原題は「Intruders(侵入者)」、魂が肉体に憑依するのである。

■生まれ変わりの傑作ドラマ

ドラマ「アンデッド」は、カルトのニオイがする。タイトルをみればあたりまえ。でも、ドロドロではなく、上質のサブカルという感がある。だから、ホラーが苦手の人にもおすすめ。

一方、難点もある。話が難解なのだ。プロット(話の因果関係)が複雑で、ちょっと油断すると、置いてけぼり。後で、つじつまを合わせるのは大変だ。

このドラマには3つのキーワードがある。

「最初に死があった」

「自分のしたことは自分に返る」

「死は罰ではない。この世に死などない」

何度も出てくるセリフだが、真意がわからない。すべて観終わって、あー、そういうこと・・・これでは一般受けは難しい。事実、このドラマがヒットした形跡はない。とはいえ、他に競合する作品もないので、「生まれ変わり」ドラマでは最高傑作かも。

主人公は、元刑事で作家のジャック。うだつの上がらない顔で、途中まで主役とは気づかなかった。そのうだつの上がらないジャックが妻のエイミーの異変に気づく。意味不明の言語を口走ったり、性格が一変したり、吸わないはずのタバコを吸ったり。まるで別人だ。ジャックはエイミーがカルト集団に取り込まれたと疑い、友人の弁護士ゲーリーと調査を始める。すると、次々と不可解な事件がおきる。

弁護士ゲーリーには、ビルという顧客がいた。その相談内容が奇っ怪だった。ビルは、ジョーという見ず知らずの人物から、大金を提示される。ところが、それを断ると、ビルの家は全焼したという。

一体何がおきているのだ?

ジャックは、この件が、エミーの異変と関係があると考えた。そこで、ジャックはビルを見つけだし、話を聞きだす。

ジョーはビルに大金を渡すかわりに、奇妙な条件を提示したという。ビルが没頭している研究をやめること。ビルがその申し出を断ると、ビルの家は全焼し、研究成果も失われてしまった。

ジャック:「それで君は何を研究してたんだ」

ビル:「超低周波音。私が実験しているのは19ヘルツだ。目に見えない自然現象も超低周波で感じられる。幽霊を信じるかい。僕は降霊機を作ったんだ。幽霊を可視化する装置だ」

そのとき、突然、男が現れて、ビルを射殺する。降霊機も発明者も闇に葬られたのである。

ジョーがビルの降霊機を恐れたのは理由があった。降霊機が世に出れば、魂を可視化できる。そうなれば、「魂」と「生まれ変わり」が衆知となる。降霊機は、電波を証明したスマホと同じ、「生まれ変わり」の物的証拠なのだ。

電波が広く知られても困る人はいない。ところが、「生まれ変わり」は違う。存在を知られたくない人たちがいたのだ。

■前世の記憶を取り戻す方法

「生まれ変わり」が本当でも、前世の記憶を思い出せないなら、人生は一度限り。不老不死ではない。

ところが、ドラマ「アンデッド」では、前世の記憶をもつ一派がいた。秘密結社「クウィ・レウェルティ(戻りし者)」だ。クウィ・レウェルティのメンバーは、前世の記憶を保持するので、実質「不老不死」。他の人間とは一線を画す、特別の存在なのだ。

これはインドのカーストを彷彿させる。

カースト制度では、人間は先天的身分で階層化されている。上位からバラモン(聖職者)、クシャトリヤ(武人)、バイシャ(商人)、シュードラ(労働者)、ダリット(不可触民)の5つ。上位3つは「再生族」で、下位2つが「一生族」。再生族は何度も生まれ変わるが、一生族は人生は一度限り。つまり、再生族は究極の特権階級なのだ。

クウィ・レウェルティも同じ再生族。ところが、降霊機が出回れば、生まれ変わりは衆知され、すべての人間が再生族になる。結果、クウィ・レウェルティの特権は消失する。既得権益に執着するのは、世の常人の常。だから、ビルと降霊機は邪魔だったのである。

ジョーはクウィ・レウェルティだった。そして、ジャックの妻のエイミーも。エイミーが、意味不明の言語を口走ったり、性格が一変したのは、前世の記憶がよみがえったからだ。

ここで、疑問がわく。人間は、前世の記憶をもったまま、生まれてくるのでは?

このドラマはそうではない。人間は、誕生した時、2つの魂が共存している。新しい魂と、前世の記憶をもった魂だ。ふつうの人間は、新しい魂が肉体を支配し、前世の記憶をもった魂は顕在化しない。

ところが、秘密結社クウィ・レウェルティのメンバーは、前世の記憶をもった魂が、肉体を乗っ取る。これが「生まれ変わり」だ。

ただし、自力で生まれ変わるわけではない。クウィ・レウェルティの助けが必要になる。くわえて「トリガー」も。

トリガーとは、人生で特別の意味をもつアイテムだ。死の直前に、そのアイテムを目に焼き付け、生まれ変わったときに、それを見せて、前世の記憶をよみがえらせる。これをサポートするのが秘密結社クウィ・レウェルティなのだ。

つまり、トリガーがないと生まれ変われない。そこで、クウィ・レウェルティは、メンバーのトリガーを大切に保管している。古いビルの地下に隠し、何十、何百世代も受け継いでいる。このビルは、クウィ・レウェルティの秘密基地なのだ。

エイミーはクウィ・レウェルティの幹部だった。いくつものトリガーを所有し、何度も生まれ変わっている。前世のトリガーはマニュキュア。両親が化粧を嫌ったので、マニュキアが宝だったのだ。その前のトリガーは万年筆。ロシアの秘密警察で、この万年筆で詩や手紙を書くのが密かな楽しみだった。エイミーが口走った意味不明の言語はロシア語だったのだ。その前のトリガーは建物のカケラ。1858年、インドの大反乱のとき、降伏してすぐに処刑された。その最期の瞬間に見たのが「カケラ」だった。

■天才は生まれ変わり?

ドラマの3つのキーワードは、最後に明らかになる。

「最初に死があった」・・・不老不死は「死」から始まる。

「自分のしたことは自分に返る」・・・人生も生まれ変わりも因果応報、逃れることはできない。

「死は罰ではない。この世に死などない」・・・この世は、ウソが信仰されている。人々を支配するためのウソだ。死は皆に訪れる。それは神が意図したものだと、人々は信じ込んでいる。短くも悲しい人生の終わりに、神が最後に与える罰が死なのだと。だが、死は罰ではない、この世に死などないのだ。

このドラマは、細かなところで、プロットが破綻している。それでも、「生まれ変わり」を暗示する瞬間がある。チューリングの「魂の本質」が「生まれ変わり」を暗示したように。

たとえば、こんなくだりがある。

「モーツァルトが4歳で作曲できたのも、前世を引き継いだからだ」

これを、AI(人工知能)にあてはめると、面白いアナロジーが成立する。

今、AI業界では、「深層学習(ディープラーニング)」が熱い。人間脳を真似たニューラルネットワークで、特定の分野では人間を凌駕する。ただし、気の遠くなるような「努力」が必要だ。膨大なデータを学習させ、ニューラルネットワークの配線を「最適化」しなければならない。

もし、真似たAIがそうなら、オリジナルの人間脳も同じでは?

つまり、成果を出すには涙ぐましい学習が欠かせない。

IQ300の赤ちゃんが誕生したとしよう。とてつもない知能だが、まだ何もできない。未学習で、脳が「まっさら」だから。

傑出した成果は、その分野に最適化された脳から生まれる。最高のパーフォマンスを出せるよう、脳の神経細胞が配線されるのだ。それを実現するのが学習で、それ以外に方法はない(栄養ドリンクを飲んでもムリ)。

ところが、モーツァルトは4歳で作曲をしている。ロクな学習もしていないのに、一体どうやって?

学習効率が高いこともあるだろう。しかし、天から降ってきたように「初めから知っていた」としか思えないこともある。これは不可解だ。無から有が生じるに等しいから。

ところが、「生まれ変わり」なら説明がつく。

たとえば、前世で学んだスキルが、未知の仕掛けで、瞬時に脳に配線されるとか。あるいは、潜在意識に転写され、無意識のうちに活動しているとか。後者は、知的活動は前頭葉だけではなく、他の部位も関与していることを示唆する。

どちらにせよ「ズル」だが、それが天才というものなのだろう。

とはいえ、すべて根拠のない仮説。

では、根拠があったとしたら?

たとえば、誰もが知る有名な史実が「生まれ変わり」でしか説明できないとしたら?

《つづく》

by R.B

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