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週刊スモールトーク (第427話) SFは予言する~空想科学の大発明~

カテゴリ : 娯楽科学

2019.07.28

SFは予言する~空想科学の大発明~

■発明雑誌

SFは、なんでもありの荒唐無稽。そこが面白いのだが、未来をかいま見ることもできる。それが的中すると、なんだかうれしい。

たとえば、1930年代から1960年代、米国で、色とりどりの発明雑誌が刊行された。色鮮やかなイラストが、少年のココロを魅了した。ただ、発明といっても、空想上の発明、絵に描いたモチなのだが。

で、的中率は?

当時の発明雑誌のコレクション(※1)があるので、それで検証してみよう。

まずは、空飛ぶ豪華客船。1946年に掲載されたベアリング製造会社のイメージ広告。5階建ての巨大な船に、申し訳程度のプロペラが4基ついてる。これでどうやって宙に浮くのだろう。その勇姿が想像できない。

ところが、1960年代、その勇姿が現実になる。サターンロケットを空輸するスーパーグッピーだ。ズングリムックリの巨大な機体が、プロペラ4基で空を飛んだ。写真をみても信じられない。空気の力は偉大だ。

つぎに、潜水空母。文字どおり、潜水艦と空母のハイブリッド艦。フランス海軍の原案がベースになっている。1930年、雑誌「ポピュラーメカニクス」に掲載された。全長200mの巨大艦だが、飛行甲板はない。カタパルトがついているが、貧弱すぎて離陸はムリ。艦載機にフロート(浮き船)がついているから、離発着は水上で?

というわけで、フランス製の潜水空母は怪しいが、15年後に日本海軍が実現した。日本が誇る伊号潜水艦「伊400型」だ。全長は122m、航空機を3機を艦載できる。航続距離は69450kmで地球を軽く1周、正真正銘の潜水空母だ。ミサイル型原子力潜水艦が登場するまで、「世界最大の潜水艦」のタイトルを保持した。

最後は、ロケット便。1957年に掲載された発明で、郵便物をミサイルで家まで直送する。発想は大胆だが、具体的にどうやるのだろう。イラストをみると、広大な発射場にミサイルが何基も並んでいる。ヘリコプターが郵便物をミサイルまで運び、それを人間が積み込んで、発射!

なるほど。

でも、ミサイルの着地の様子が描かれていない。郵便物はどうやって受け取るのだろう?ミサイルは回収するのだろうか?

問題山積だが、アマゾン(Amazon)が実現しそうだ。ただし、ロケット便ではなく、ドローン便で。これまで、アマゾンはお気に入りだったが、配送業者をヤマトから日本郵便に変えて、届くのが遅くなった(振り込んでから1週間は遅い!)。早くドローン便が実現しますように。

というわけで、SFの予言はたいてい的中する。たとえ、その時点で絶対不可能にみえても。

それを示唆する面白いエピソードがある。

1903年12月17日、ライト兄弟の動力飛行機が、史上初めて空を飛んだ。飛行機時代の幕開けである。ところが、その1週間前に、ニューヨーク・タイムズにこんな記事が載った。

「飛行機は100万年から1000万年先の話(絶対ムリ)」

これは良い教訓だ。

みんなが実現不可能とする発明を「あなたは実現すると思いますか?」と聞かれたら、胸を張って答えよう。

「はい、必ず実現します!」

(いつかはしらんけど)

■新人類データ・サイエンティスト

社会にでて、働いて、多くのことを学んだ。テクノロジー、ビジネス、人間・・・いろいろあるが、一番大切なのは「人」だろう。リタイアすれば、テクノロジーもビジネスも関係なくなるが、「人とのつながり」は続くから(全員ではないが)。

働く人間には、スーツとテッキーがいるようだ。「スーツ」は身なりのいいビジネスマン、会社に目標と規律と売上をもたらす。一方、テッキーはテクノロジーの崇拝者だ。度が過ぎて、オタクの領域に入ると「ギーク」とよばれる。彼らは、スーツが大嫌いだ。テクノロジーの価値を理解せず、売上と利益に執着する。世俗にまみれたクソ野郎、というわけだ。

ところが、面白いことに、テッキーが管理職や役員になると、スーツに理解を示すようになる。だが、熱のこもった議論が始まると、本性をあらわす。売上がどうだというんだ!このテクノロジーの凄さがわからないのか。いくらかかろうが、何百人かけようが、製品化するべきだ!

やっぱりテッキー・・・(自分もそうだった)

ところが、ここ2、3年、第三のタイプが出現した。データ・サイエンティストだ。ただし、最近のAIブームで出現した20代、30代ではなく、40代、50代。彼らは判で押したように、米国の一流大学卒で、驚くほど博識だ。

データ・サイエンティストは、データを解析し、問題解決したり、新しい知見を発見する。あらゆるドメインを手がけるから、博識じゃないとつとまらない。しかも、彼らのロジックは、バイアスがかかっていない。データ至上主義、究極の客観主義者なのだ。

あるデータ・サイエンティストが吐いた一言が忘れれない。

「データしか信じない。あらゆる可能性を考慮する。定理さえ変える。公理は変えないが・・・」

公理とは「三角形の3角の和は180度」のような論理の大前提。それを疑ったら何も始まらない。それ以外、すべて疑ってかかるというのだ。宗教は信じることから始まり、科学は疑うことから始まるが、データ・サイエンティストは終わった後も疑っている。

■量子コンピュータは本物?

じつは、今悩んでいることがある。

量子コンピュータは実現するか?

前述の論法からいけば、「実現する」なのだが、「いつか」が重要なのだ(理由は後で)。

マイクロプロセッサが発明された頃から、コンピュータ一筋の人生だった。ICベースのハード設計(ワイヤードロジック)から始まり、CPUを使ったハード設計、OSの移植と地味な仕事をこなし、パソコンのアプリも開発した(ガイアチャンネル~3D地球儀で眺める世界史~)。それが任天堂DSにも移植され(ポケット地球儀DSさわって楽しむ人類5000年の歩み)、モバイルコンピュータの開発も経験できた。

おかげで、ソフトウェアの動作をハードウェア上でイメージできる。CPUが命令をフェッチしデコードし、レジスタとメモリとI/Oでデータをやり取りし、演算し、結果を格納する・・・

だから?

たしかに何の役に立たないが、ハードとソフトがわかるから、どんなコンピュータも理解できる。そう信じていた。

ところが、量子コンピュータは全く理解できない。本を読んでも、説明されても、サッパリわからない(執筆者も説明者も本当に理解しているか怪しい)。かの天才アラン・チューリングのチューリングマシンの原理もギリで理解できたのに。一体どうなっているのだ。

量子コンピュータの動作原理は、ミクロ世界の最強の理論「量子論」にもとづく。ところが、「量子論」は数式でしか表わせない。コトバで説明すると、ファンタージか魔法か詐欺か?そういえば、大学時代、量子力学の単位を落としたっけ。そこかも。

そこで、学位を3つもつ博識のデータ・サイエンティストに聞いてみた。

「量子コンピュータは理論的に成立しそうだけど、現実的にはムリでは?」

すると、彼は即答した。

「僕たちが生きている間に、量子コンピュータは必ず実現しますよ」

彼は、量子コンピュータの具体的実現方法を知っているわけではない(専門家ではないので)。それでも「実現する」と言い切るのは、別の視点でみているのだ。それが、データと統計学から導き出されたルール「実現しないテクノロジーはない」なのである。

ここで、量子コンピュータに執着する理由。仕事にしているわけでも、趣味にしているわけでもない(難しすぎて趣味になりません)。量子コンピュータに投資するため。事実、くだんのデータ・サイエンティストの話を信じて、IBM(量子コンピュータのトップ企業)の株を買った。ところが、肝心なことを忘れていた。彼はまだ40歳、「生きている間」が違うじゃん!

というわけで、空想科学上の発明は99%が実現する。姿形は少し変わるだろうが。

最後に、発明は永遠なり・・・と締めくくりたいのだが、そうはいかない。AIが状況を一変させたのだ。

■速度の魔法

人間の発明は「人工汎用知能(AGI)」が最後になる・・・は間違いないだろう。

現在主流のAIは「特化型AI」。囲碁、翻訳、画像や音声の認識、FAQ(よくある質問に回答)など特定のタスクしかできない。一方、人工汎用知能(AGI)は、あらゆるタスクをこなせる。だから、人工汎用知能(AGI)は、人間の最後の砦「発明・発見」も奪うだろう。

さらに、人工汎用知能(AGI)が発明されれば、人工超知能(ASI)が誕生するのは時間の問題だ。人工汎用知能(AGI)が人工超知能(ASI)を発明するのか、自ら人工超知能(ASI)に進化するかはわからないが。

英国オックスフォード大学のニック・ボストロムはこう言っている。

「ASI(人工超知能)は単なるテクノロジーの一種でもなければ、人間の道具でもない。ASIは根本的に別物なのだ。人類の存亡にかかわる危険への対処法が試行錯誤であってはならない。失敗から学べる機会はない。事後対応的な方法、経験から学ぶ方法は通用しないのだ」(※2)

人類は食物連鎖の頂点から滑り落ちると言っているのだ。つまり、狩る側から狩られる側に。

ところが、ほとんどの識者はこの説を鼻で笑う。

AIの処理速度が、1年で10倍、3年で1000倍になっているのに。たぶんこう考えているのだろう。計算速度が1000倍?それがどうした。計算が速くなっただけで、何かが劇的に変わるわけじゃない。

本当にそうだろうか。

自転車の速度はせいぜい時速40kmだが、1000倍なら時速40,000km。1000倍の意味はそれぞれだが、この場合、特別の意味をもつ。時速40,000kmを超えると、地球の引力を振り切れるのだ。つまり、火星に行ける。自転車を改良しても火星には行けない。だから、時速40kmと時速40,000kmは別のテクノロジーなのである。

■常識の罠

AIは「常識」がないから、人間を超えるのは不可能。だから、AIが人類を滅ぼすなんて馬鹿げている、が「常識」になっている。これにはビックリだ。「人間の常識」がなくても、人類は滅ぼせる。すでに、ちゃちなコンピュータ・ウィルスが人間社会を害しているではないか。その延長で考えれば、わかりそうなものだが。

そもそも、「人間の常識」が怪しい。「常識=バイアス=偏見」だから。思い込みほど危険なものはない。真実を見誤る危険があるから。たとえば、ガンの診断で、特化型AIが専門医をしのいだというニュースもある。つまり、真実に近いのは「常識」ではなくデータ、それを愚直に分析する統計学なのだ。

これで成功しているのが、カジノだろう。

カジノといえばラスベガス、ただし、規模ではマカオが上。理由はカンタン、中国人客が多いから。13億人には勝てまんせよね。とはいえ、昨今は中国政府の締め付けがきつくなり、以前ほどの元気はない。その元気な頃、マカオに出張したことがある。そのとき、カジノ必勝法を見つけたのだ。正確には「大負けしない=平均で勝つ」方法だが、統計学と確率論にもとづいている。

ただし、確率は銀の弾丸ではない。予測できるのは、次に何が起きるかではなく、ん万回やったら、何が何回起きるか。カジノの客はプレイできる回数は限られている。一方、カジノは胴元なので、ん万回プレイできる。ん万回なら、統計予測は恐ろしい精度で的中する。それを元に、ルールを決めれば、100戦して危うからず(孫子の兵法)。もちろん、ルールを決めるのは胴元だ。だから、カジノが勝ってあたりまえ。

もちろん、客側も1回目で勝つこともあるが、それで調子こいて数をこなせば、最終的に負ける。事実、欲をかいた仲間は全員撃沈した。貧乏なので、20万円~30万円ですんだが、金持ちならとんでもないことになる(知り合いで一晩で250万円スッたのがいる)。これがカジノルール、統計学なのだ。

つまりこういうこと。

具体的な仕掛けがわからなくても、未来は予測できる。それを可能にするのが、統計的推論なのである。じつは、今の特化型AIは統計的推論と似ている。

AIモデルは、人間の脳を真似たニューラルネットワークで構成される。「推論」のキモはニューラルネット間の「重み」だ。一方、統計モデルは数学関数で構成され、キモは関数の「パラメータ」。

そのAIモデルの「重み」と統計モデルの「パラメータ」が酷似しているのだ。必ずしも一致するわけではないが、アナロジーの関係にある。表現方法が違うが、本質は同じなのだろう。微分方程式と行列のように。

参考文献:
(※1)「モダンメカニクス 世紀の発明大図鑑」出版社: 世界文化社、監修:スタジオ・ハードデラックス
(※2)人工知能 人類最悪にして最後の発明 ジェイムズ・バラット (著)、水谷 淳 (翻訳)

by R.B

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