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週刊スモールトーク (第420話) 大中華帝国の興亡(4)~人類の最終兵器~

カテゴリ : 戦争歴史終末

2019.04.21

大中華帝国の興亡(4)~人類の最終兵器~

■最終兵器

AIが操る無人兵器は、現在最強の「空母打撃群(空母艦隊)」も撃破する。

AIは、やがて兵器の開発も行い、最終的に自分自身も改造するようになるだろう。発明が人間からAIに移るわけだ。そのとき、不可能とされたタイムマシンも誕生するかもしれない。

というわけで、AIを制する者は世界を制する。

では、AIを制するには?

史上初の「自律進化型AI」を開発すればいい。

「自律進化型AI」は、人間がアルゴリズム(思考手順)を書くのではなく、AI自身がアルゴリズムを改良する。そのため、一旦始動すると、人間の手を離れて、半永久的に進化していく。だから「自律型」なのである。

ところでなぜ、「史上初」?

2番目以降は、何の価値もないから、つまり、ガラクタ、粗大ゴミ。

例をあげて説明しよう。

ある日、C国で、史上初の「自律進化型AI」が始動した。そこで、ライバルのA国は科学者たちの尻を叩き、AIの開発を急がせた。1ヶ月後、A国のAIが完成、その進化速度はC国AIの10倍に達した。これで、A国AIがC国AIを逆転するのは時間・・・

ところが、そうはならなかった。

逆転するどころか、差は開くばかり。やがて、C国AIは、恐るべき戦略・戦術・兵器を生み出し、A国を滅ぼしましたとさ。

ではなぜ、10倍の進化速度をもつA国AIが、C国AIに追いつけなかったのか?

A国AIが始動した時、C国AIの進化速度は、始動時の100万倍に達していたから。自律進化型AIは「賢さ」だけでなく、「進化速度」も進化していたのだ。

つまりこういうこと。

人間がアルゴリズムを作るより、AIが作る方が断然速い。AIは、1日24時間、1年365日、眠ることも休むこともなく、働き続ける。しかも、スケールアウトがカンタン。何万台、何十万台、何百万台のマシンをつないで並列処理させるのだ。天才100万人の脳に電極を埋め込んで、5Gでリンクして、不眠不休で働かせるようなもの。生身の人間が勝てるはずがないではないか。

だから、「自律進化型AI」は稼働時間がすべて。つまり、先手必勝で、2位以下に勝ち目はない。

2009年、民主党政権の時代、「事業仕分け」が話題になった。国の事業を見直して、税金の無駄遣いをやめる、をアピールしたわけだ。そのとき、「次世代スーパーコンピューター・プロジェクト」もやり玉にあがった。仕分け人の蓮舫議員は、文科省の「世界一を目指す」に対して、こう問いかけた。

「世界一になる理由は何があるんでしょうか?2位じゃダメなんでしょうか?」

すると、文科省も科学者たちも猛反発、なにバカなことを!を露骨に臭わせながら、1位じゃないと絶対ダメ!と言い切った。

もちろん間違っている。

スパコン開発は重要だが、「一時的な1位」に執着するのは本末転倒だから。

本来、スパコンは、計算速度の順位を競うのではなく、「使う」ためにある。「使う」視点でみれば、2位以下のスパコンも十分使えるし、100億円のスパコン1台より、1億円のスパコン100台の方が有益かもしれない。より多くの学者が使えるから。

つまり、「使う」が目的なら、コスパを重視するべきなのだ。たとえば、高価な専用プロセッサを一から設計するより、ありものプロセッサで高スペックを実現するとか(他国はそうしている)。

というわけで、「一時的な1位」に意味はない。

ところが、AIにはこの論法が通用しない。「史上初=1位」以外、何の価値もないのだ。

■自律進化型AI

ところで「自律進化型AI」は、本当に実現可能?

じつは、メドすら立っていない。

「アルゴリズムを作るアルゴリズム=自分を書き換えるプログラム」が難しいのだ。

1980年代、パソコンが「マイコン」とよばれていた時代、性能も構造も「オモチャ」だった。CPUはシングルコアでクロック数4MHz、メモリは64KB。しかも、ハーディスクは不安定で、外部記憶装置といえば低速・低容量のFDD。OSはシングルタスクで、仮想記憶もなし。抽象化はされておらず、すべて具体的。プログラムの動作をハードレベルでイメージできるほどだった。

そのイメージによれば、「自分自身を書き換えるプログラム」は狂気の沙汰、絶対にフリーズする!

ただし、それはコンパイラ言語の話で、インタプリタ言語ならなんとかなる。

たとえば、「Smalltalk(スモールトーク)」、稼働中にプログラムを変更できる。Smalltalkは完全無欠のオブジェクト指向言語で、システム自身もSmalltalkで書かれている(マジか!)。プログラム言語というよりは統合開発環境で、古代都市「モヘンジョダロ」を彷彿させる。神業のようなトップダウン設計で、非の打ち所からないから。退屈な「コンピュータの仕様」でこれほど感動したことはない。ところが、昔も今も超マイナー。

コンピュータ業界には「ムーアの法則」以外にも法則があるようだ。

「最良」はスタンダードになれない。

まずはCPU。洗練されたモトローラのMC68000、さらに洗練されたナショナル・セミコンダクターのNS32032は、不細工なインテルのx86に駆逐された。OSもしかり。シンプルで美しいCP/Mはそれを改悪したMS-DOSに敗北。グラフィカルユーザーインターフェースも、元祖のゼロックス「Alto」は消滅し、それをコピペしたMacとWindowsがスタンダードになった。一体どうなっているのだ?

話をSmalltalkにもどそう。Smalltalkを使えば稼働中に変更できるが、言語レベルで「自律進化」をサポートしているわけではない。そこを期待するなら、関数型言語「LISP」の方がいいかもしれない。読みにくさは天下一品だが。

では、今流行のディープラーニング(深層学習)は?

学習するだけで、賢くなるのだから、自律進化型では?

それがビミョーなのだ。

たとえば、Googleの囲碁AI「AlphaGo Zero」。囲碁の基本ルールを教えただけで、自分のコピーと対局し、人間棋士を超えてしまった。人間では思いつかない、理解できない手もあるというから、アルゴリズムを自作したことは間違いない。

とはいえ、「AlphaGo Zero」は囲碁しかできない。そんな専門バカを自律進化型AIと言える?(専門職をバカしているわけではありません。人間は他のこともできるので)

一方、「AlphaGo Zero」から進化した「AlphaZero」は、囲碁だけでなく、チェスも将棋も最強になったという。でも、囲碁、チェス、将棋はみんなお仲間ですよね。やっぱり専門バカ?

どっちやねん!

みんなナットクする「AI」は「汎用性」が欠かせないようだ。

人間脳は、ゲームだけでなく、人文科学から自然科学まであらゆるドメインを網羅する。さらに、メディアも、画像、音、テキストすべて認知可能。そして日々「自律進化」している。

というわけで、汎用性のある自律進化型AIは、当面はムリそうだ。

しかし、「AI無人兵器」に汎用性は必要ない。「自律進化」があれば十分だ。破壊と殺戮に文学は必要ないから(たぶん)。

「自律進化」のアーキテクチャはこれからだが、ハードウェア(部品)は整いつつある。その一つが「FPGA」だ。

一般に、アルゴリズム(思考手順)を実装する方法は2つある。プログラム方式と専用ハード方式だ。

前者は、アルゴリズムをプログラムで記述して、汎用コンピュータで走らせる。パソコンとアプリの世界だ。汎用コンピュータを使うので、アルゴリズムを変更できるが、低速。

後者は、アルゴリズムをハードウェア化する。専用コンピュータなので、アルゴリズムを変更できないが、高速。

FPGAは、この2つの方式のいいとこどり。アルゴリズムを変更できるのに高速!今後は、進化と高速性が要求されるAIで需要が増えるだろう。

投資家たちもそれに気づいている。FPGAのトップ企業、米国ザイリンクス社の株価が急騰しているのだ。ここ半年で2倍になったが、まだ上がるだろう。ただし、FPGAもSmalltalk同様、「自律進化」を直接サポートしているわけではない。

というわけで、自律進化型AIにはブレイクスルーが欠かせない。

■勝者は米国か中国か?

では、史上初の自律進化形AIは、米国or中国?

ちょっと待った、「国」とは限らない。

「007」のスペクター、「仮面ライダー」のショッカー、「0011ナポレオン・ソロ」のスラッシュ(古い)・・・巨大な国際犯罪組織も狙っているかもしれない。

それはそうだが、中国にはかわない。

理由を説明しよう。

「自律進化形AI」は、国家安全保障に直結する「超兵器」だ。国の命運がかかっているので、カネに糸目はつけられない。たとえば、マンハッタン計画の原子爆弾、ナチス・ドイツのV2ロケット。いずれも、膨大なリソース(ヒト・モノ・カネ)を使い切っている。○△製作所やショッカーでできるレベルではないのだ。

では、なぜ中国が有利なのか?

モノ・カネでは米国の方が優っているのに。

理由は2つ。

第一に、ヒトが一番重要だから。

「自律進化型AI」は原子爆弾やV2ロケットと違い、ハードウェアよりソフトウェアのウェイトが大きい。設備や原材料ではなく、ヒトの脳で決まるのだ。しかも、読み書きソロバンに長けた秀才脳ではなく、特殊な脳。ドイツのエニグマ暗号を解読したチューリングのように。

たとえば、

1.普遍的なルールを見つけ出す能力(抽象化能力)

2.物事を同時に思い描ける能力(短期の記憶力)

3.展開思考も集中思考も爆速(頭の回転)

歴史上、そんな天才が散見されるが、これだけでは不十分だろう。人工知能の万能理論を構築するようなものだから。出現率は、ひょっとして10億人に一人?人間の頭脳は正規分布に従うので、人口に連動する。中国の人口は14億人だから、1人はいるかもしれない。だが、人口1億人の日本では期待薄。つまり、「自律進化型AI」は人口が重要なのだ。

中国が有利な第二の理由は「国家資本主義」。国民が飢えていようがいまいが、国の安全保障を最優先する。一方、自由資本主義国はそうはいかない。そんなものにカネ使うなら、消費税上げるな、教育費・医療費をタダにしろ、パンとサーカス的要求が始まる。そもそも、「自律進化型AI」のようなアブナイ事業が、民主主義国家で認められるはずがない。

というわけで、自律進化型AIのアドバンテージは「中国>>米国」。

事実、中国は「中国製造2025」をかかげ、AI、バイオテクノロジー、マイクロプロセッサ(汎用チップ、AIチップ)、量子コンピューティング、ロボティックスに取り組んでいる。すべて軍事利用が前提だ。もちろん、米国も取り組んでいるが、しょせんは民間主導。「自分の儲け>>国益」なので、中国式にはかなわい。

世界有数の投資家で、親中派のジョージ・ソロスでさえ、こんな警笛を鳴らしている。

「習近平は自由社会の最も危険な敵である。最強の最先端技術をもち、AIは監視・管理ツールに使われている」

でも、そこは重要ではない。中国人民が窮屈な思いをするだけだから。問題は、AI兵器で、世界のパワーバランスが崩れ、中国の「大中華帝国」が現実になることなのだ。

では、米国に勝ち目はない?

今ならある。だから、今のうちに中国を叩き潰せ、それを初めて自覚したのがトランプ政権なのだ。その急先鋒がペンス副大統領だろう。最近、話題の米中貿易戦争、ファーウェイ問題はそこから来ている。

では、われわれの未来は?

じつは、米国が勝っても、中国が勝っても、50年後は同じ。新たな覇権争いが勃発するから。AIによる最終戦争だ。中国製のAI、米国製のAIではなく、自律したAI同士の戦い。

人間は?

もう終わっているかも。

《つづく》

by R.B

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