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週刊スモールトーク (第419話) 大中華帝国の興亡(3)~米国との最終決戦~

カテゴリ : 戦争歴史終末

2019.04.14

大中華帝国の興亡(3)~米国との最終決戦~

■3つのシナリオ

「大中華帝国」は実現するだろうか?

それとも、米国に粉砕されるのだろうか?

未来のシナリオは3つ・・・

1.中国が「大中華帝国」を目指し、米国と鋭く対立、戦争が勃発する。

2.中国が「小中華帝国」で我慢し、米国と肩を並べ、世界は多極化する。

3.中国が「中華帝国」をあきらめ、米国の一極体制がつづく。

第1と第2のシナリオは、中国が「中華帝国」を実現しようとする。「中華帝国」は、20世紀初頭、中国で実在した帝国だ。創設者は、清朝最後の総理大臣、袁世凱。ところが、袁は大変な俗物で、民衆にも部下にも愛されかった。結果、帝国は3ヶ月で崩壊。明智光秀の三日天下ならぬ「中華帝国の三ヶ月天下」で終わったのだった。

第二の中華帝国をもくろむのは、中国の最高指導者・習近平。その第一段階「一帯一路」はすでに始動している。袁の中華帝国は私利私欲だが、習近平の中華帝国は国益にもとづいている。ユーラシア大陸を横断する壮大な中華圏だ。目的は、米国に取ってかわること(大中華帝国)、悪くても米国と肩を並べること(小中華帝国)。大日本帝国陸軍・石原莞爾の予言「東洋文明と西洋文明の最終戦」が的中しようとしている。

一方、第3のシナリオは、中国が「中華帝国」を放棄する。つまり、米国の圧力に屈するわけだ。かつての日本のように。

1980年代、米国は貿易赤字で苦しんでいた。そこで、米国はG5(先進5か国)を巻き込んで、円高に誘導した。それが「プラザ合意」である。結果、日本は輸出力を削がれ、経済成長は頭打ちになった。

ではなぜ、日本は米国の圧力に屈したのか?

日本は米国の属国だから。ディスっているのではない、しかたがないのだ。

日本は中国、韓国、北朝鮮などあからさまな敵対国に囲まれ、地政学的に最悪。眼前に軍事的脅威が存在するのだから、自分で守るか、他人(米国)に守ってもらうしかない。

ところが、自衛隊(自分で守る)も、日米安保(米国に守ってもらう)も反対!の謎の一派が存在する。恥も外聞もないご都合主義だが、マスコミも識者もこの風潮にのっかっている。

だってそうではないか。

TVに出て、「自衛隊」と「日米安保」をハッキリ肯定する識者がどれだけいますか?

まぁ、政府はそんなことわかっているから、米国をたてつつ、自衛隊も強化している。

というわけで、日本は軍事的に自立していない。だから、「属国」もやむをえない。それが嫌なら、自分の「血と汗」を流すしかない。あれもいや、これもいや、とわがまま言ってると、尖閣諸島、竹島をとられるどころか、中華帝国・日本省になりますよ。

さらに、日本は、経済も米国に依存してきた。戦後の復興と経済発展も米国のおかげなのだ。朝鮮戦争では大量の軍需物資を買ってくれた(朝鮮特需)。戦争が終わると、今度は自動車や電気製品を爆買いしてくれた。おかげで、日本は奇跡の経済発展をとげたのだ。

もちろん、米国の善意からではないが、日本が軍事的・経済的に自立していないことは確かだ。だから、米国の言うことを聞くしかない。さんざん世話になっておきながら、言うことを聞かない、はないですよね。

一方、中国は軍事的に米国から独立している、どころか敵対している。経済的には米国に依存しているようにみえるが、いつでも自立できる。人口が14億人と、米国とEUと日本を合わせた9億人より大きいから。つまり、市場規模で「中国>米国・EU・日本」。だから、中国は「国内市場」だけでGDP世界一になれるわけだ。

というわけで、中国は軍事的にも経済的にも自立している。だから、中国は米国のいいなりになる必要はない。しかも、中国の最高指導者は、14億人の中から勝ち上がった傑物だ。だから、第3のシナリオ(米国に屈する)はありえない。

■多極化する世界

では、第1のシナリオ「大中華帝国と米中戦争」と、第2のシナリオ「小中華帝国と多極化」、どちらが現実になるのだろう。

識者が支持するのは、もちろん、「小中華帝国と多極化」。あたりさわりのない常識論で、ディスられる心配もないから。

そこで、識者の常識論を代弁してみよう。

中国・習近平は、今、米国と戦っても勝ち目はないと思っている。兵数をのぞけば、すべて劣勢なので。トランプは稀有の勝負師だから、押しどろころを間違えると、戦争になる。もちろん、習近平は重々承知、だから冒険はしない。とはいえ、米国の顔色をうかがっていると、習近平が失脚する可能性もある。それどころか、共産党政権が倒れるかもしれない。中国5000年の歴史「農民反乱→王朝転覆」は今も生きているのだ。

その恐るべき反乱パワーを紹介しよう。

紀元8年、漢王朝の末期、王莽が王位を簒奪し、「新」王朝を開いた。儒教による理想政治を目指したのはいいが、非現実的な政策で、豪族から農民まで敵に回してしまった。まず、農民を束ねた樊祟(はんすう)が赤眉の乱をおこす。初めは100人ほどの暴徒だったが、またたくまに「数十万人」の大反乱軍に。じつに5000倍である。これが中国の反乱パワーなのだ。この頃、中国史上初めて全国戸口調査が行われたが、人口は「5959万4978」と記録されている(※)。2000年前に、人口6000万人!中国の反乱パワーの源はここだろう。結局、豪族を束ねた劉秀が勝利し、光武帝として即位した。これが後漢である。ちなみに、後漢を滅ぼしたのも農民反乱である(黄巾の乱)。

というわけで、習近平の選択肢は一つ。米国と戦争にならないギリギリまで、覇権を拡大する。それが「小中華帝国」なのだ。

ではなぜ、中国は米国に挑むのか?

中国は米国を「対等者」とみているから。「対等」は言い換えると「匹敵」、つまり「敵」を意味する。中華思想では、対等者との平和的共存はありえない。戦って打ち倒すべき敵なのだ。それは中国5000年の歴史が証明している。

一方、米国・トランプは、大衆を敵に回すことができない。マスコミとインテリに嫌われ、大衆の人気頼みだから。古今東西をとわず、大衆が喜ぶのは「パン(経済)とサーカス(平和)」だ。ところが、米中貿易戦争で世界経済が悪化してしまった。最近、トランプが中国に目こぼしをするのはそのためだ。たとえ、世界恐慌になっても中国共産党を倒したいペンス副大統領とはそこが違う。

というわけで、トランプは強気を演じながら「落としどころ」を模索している。ただし、そのさじ加減は神業だ。この煮え切らない状況は、習近平も、金正恩も、プーチンも同じ。そして、彼らのさじ加減も神懸かっている。

米中貿易戦争、北朝鮮の核・ミサイル問題、ロシア疑惑、どれも一触即発にみえるが、最後は「寸止め」で一件落着。大戦争にはならない。一方、「一帯一路」と「中国製造2025」を放棄すれば「民衆暴動→政権転覆」の可能性があるので、規模を縮小して続ける。それが「小中華帝国」なのだ。

ところが、「”小”中華帝国」とはいえ、人口で「米国+EU+日本」を凌駕する。そのぶん、米国の指導力は低下するだろう。

結果、自由資本主義をかかげる米国・EU・日本、国家資本主義をかかげる小中華帝国、どっちつかずのロシア、人口の潜在力が中国より高いインド、無限の成長力を秘めるアフリカ、で世界は多極化するだろう。

以上が、識者が主張する常識論だ(たぶん)。あくまで代弁なので、多少の誤差はあるだろうが、なんとなくナットク。

でも・・・識者の予測は面白いほど外れる。

たとえば為替レート。

毎年のように、今年こそ、1ドル90円、いや50円まで進む、と「円高」が叫ばれるのに、ここ数年ずーっと、1ドル105~120円。しかも、まことしやかな根拠付き。

もちろん、何ごとも根拠は必要だ。占いや呪術ではないのだから。とはいえ、この世界は複雑怪奇、無数の要因がからみあっている。すべての要因とからみを説明するのは不可能だ。さらに、新たな要因が発生して、構築した因果関係が一瞬で崩壊することも。もし、それが歴史なら、その後の世界が一変・・・恐ろしい話だ。

たとえば、中国史の「西安事件」。

中国の知の巨人「胡適」はこう言っている。

「西安事件が我々の国家(中国)に与えた損失は、取り返しのつかないものだった」

順当なら「蒋介石の中国」が、西安事件によって「毛沢東の中国」に一変したのだ。

1936年、蒋介石率いる国民党軍は、毛沢東の共産党軍を壊滅寸前に追い込んでいた。蒋介石は、西安で軍議を開いて、こう宣言している。

「いまや、戦いは『最後の5分』の段階に来ている。油断するな、全員、奮励努力せよ!」

ところが、そこでクーデターがおこる。同盟者の張学良と楊虎城が、蒋介石を裏切り、拉致したのだ。蒋介石は「国共合作(国民党と共産党の同盟)」を条件に開放されたが、そこで運が尽きた。その後、毛沢東は力を盛り返し、蒋介石は敗れ、台湾に逃れたのである。蒋介石は「最後の5分」で逆転されたのだ。

だから、歴史は何がおきるかわからない。

「大中華帝国で米中戦争」も十分ありうるのだ。

そして、その鍵を握るのが人工知能(AI)だとしたら?

■米中戦争がおきる世界

私見とことわった上で、最もありそうなシナリオは・・・中国が「大中華帝国」にリーチをかけて、米中戦争がおきる。

中国・習近平は腹のすわったリアリストだ。だから、米国に屈することなく、アジアには脅しの一点張り。一方で、勝ち目のない戦争はしたくないから、米国の無理難題にはのらりくらり。その間、せっせと富国強兵に励むだろう。そして、米国に勝つ見込みが極大化したら、態度を一変させ、米国に挑む。理由はカンタン、前述したように、中華思想に対等者との平和的共存はありえないのだ。

では、中華思想とは?

中国は宇宙の中心にある。だから、中国の支配者は、天空の下にある大地をすべて支配する(※)。

ここで「勝つ見込み」とは経済力と軍事力だが、「AI」がキモになる。というのも、「AI」で米国の軍事的優位をひっくり返せるからだ。

現在、米軍の優位は、核戦力と通常戦力を網羅している。

まずは、核兵器。

2019年時点で、地球上に1万5000発の核が存在する。アメリカとロシアがそれぞれ7000発づつ、フランス、中国、イギリス、インド、イスラエル、北朝鮮で合計1000発。これを大都市を中心にまんべんよく落とせば、直撃弾で5億人が死ぬ。その後、「核の冬」で、人類文明はゆっくり崩壊していく。ただ、地球には自然治癒力があるから、100万年単位で回復するだろう。やがて新種の生物も誕生するだろうが、われわれの関知するところではない。

というわけで、一旦、核戦争が始まれば、7000発も1000発も同じ。アイゼンハワーが言ったように「核戦争は、敵を倒すことと、自殺することが一組になった戦争」なのだから。

つぎに、通常戦力。

米国は陸・海・空で圧倒的優位にある。

その象徴が「空母打撃群」だろう。米軍最強のタスクフォースで、空母と護衛艦、潜水艦、補給艦で編成される。空母には戦闘攻撃機をはじめ、数十機の航空機が搭載される。その打撃力は絶大で、小さな国なら1つの空母打撃群で壊滅できるだろう。しかも、地球の70%を占める海を介して、世界中どこへでも行ける。このような空母打撃群をもつのは、世界で米国のみ。だから、米軍は世界最強なのである。

ところが・・・

その空母艦隊を、AIがカンタンに殲滅できるとしたら。

最近話題になっているのが「自爆無人機」だ。AIが無人機を操縦し、敵に体当たりする。無人機は安価だし、人間が乗っていないから、自爆攻撃にはうってつけ。

でも、空母艦隊にしてみれば、無人機は小バエのようなもの。痛くもかゆくもないのでは?

たしかに、10機や20機なら「うるさい」ですむが、1000機が一度に襲いかかったら?

鉄壁の防御を誇る空母艦隊も、タダではすまないだろう。

こんな悪夢(米軍にとって)が現実になろうとしている。2018年、中国が119機のAI無人機の飛行に成功したというのだ。それまでは、米国が先行していたのに。さらに、中国は無人潜水艦も開発しているという。高価で強力な空母部隊が、安かろう、数頼みの無人兵器でイチコロ?

つまり、中国は、経済力と軍事力で米国を超える必要はない。AIで優位に立てばいいのだ。その瞬間、中国に勝ち目が出てくる。

一方、ロシアも「超音速魚雷」を開発中だ。現在の魚雷は時速110km、海の王者シャチで時速82kmほど。ところが「スーパー キャビテーション」という物理現象を利用すれば、理論上「時速5400km」が可能だという。水中を「マッハ4」!?

これに核を搭載すれば、防御不能、空母の竜骨は真っ二つに折れるだろう。

第二次世界大戦中、空母が出現し、大和のような巨艦が無力化された。それと同じように、AI無人兵器が空母を無力するのだ。

つまりこういうこと。

ありそうな「小中華帝国→多極化」も、ありそうにない「大中華帝国→米中戦争」も、実現確率はフィフティ・フィフティー。西安事件がそれを暗示している。

歴史は何がおきるかわからない。と言いつつ、何ができるわけでもない。

だから、今に感謝し、毎日を愉しもう!

それしかないですね。

《つづく》

参考文献:
(※)週刊朝日百科 世界の歴史 16巻 朝日新聞社出版

by R.B

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