BeneDict 地球歴史館

BeneDict 地球歴史館
menu

週刊スモールトーク (第410話) 金融の未来(3)~株価暴落が始まった~

カテゴリ : 社会経済

2018.12.22

金融の未来(3)~株価暴落が始まった~

■株価暴落

海の向こうで「株価暴落」が始まった。

2018年12月21日、NYダウ平均の週間下落率が「6.9%」。これは100年に一度の危機といわれた「リーマン・ショック」に匹敵する。

その予兆はあった。この2ヶ月半の下落率は、

NYダウ「17%」・・・2万6951ドル(2018年10月3日)→2万2445ドル(2018年12月21日)。

日経平均「17%」・・・2万4270円(2018年10月2日)→2万197円(2018年12月21日)。

さらに、鳴り物入りで上場したソフトバンクは、売り出し価格「1500円」を一度も超えていない(2018年12月21日現在)。「1500円」で売り出したソフトバンクG以外、みんな損をしているわけだ。前代未聞の事態で、超大型株の上場では「JT」しか記憶にない。

というわけで、11月19日の株価暴落の予感が的中した可能性がある。

ただし、悲観する必要はない。株価暴落と金融資産の崩壊は資本主義の宿命だから。

歴史年表で確認しよう。

・17世紀オランダの「チューリップ・バブル崩壊

・18世紀イギリスの「南海泡沫事件

・20世紀の「世界恐慌

・2000年「インターネット・バブル崩壊」

・2008年「リーマン・ショック

大崩壊は100年に一度、小崩壊は21世紀に入って2度おきている。年表にはないが、1800年代に小規模な恐慌が5回。資本主義には「金融資産の暴落」はつきものなのだ。

金融資産は輪廻転生している。「膨張→ピークアウト→暴落」の繰り返し。だから、金融資産は永遠に増え続けることはできない。

なぜか?

「金融資産」の裏の顔は「負債」、誰かの借金だから。つまり、金融資産が増えれば借金も増え、いつか破綻する。それが債務不履行(デフォルト)なのだ。ないものは返せません、と言い張れば、負債(借金)は帳消しになるが、金融資産もチャラになる。それが連鎖すると、金融資産の暴落だ。その象徴的イベントが「株価暴落」なのである。

つまり、「株価の暴落」のマクロ原因は「金融資産=負債」にあり、理由は負債が大きくなると、返済不能になるから。

■金融資産=負債(借金)

ところで、なぜ「金融資産=負債」なのか?

例をあげて説明しよう。

あなたが銀行に100万円預金したとする。この「100万円」は、あなたにとってピカピカの金融資産だ。

ところが、銀行はこの「100万円」を誰か(個人や会社)に貸し出す。利子をとって、あなたに利息を払うためだ。そのとき、

「利子>利息+手数料」

が必須条件になる。預金者に払う利息が1%、銀行の手数料が1%なら、利子は2%より大きくしないといけない。さもないと、銀行は赤字になり、破綻するから。

つまりこういうこと。

「あなたの預金100万円=誰かの借金100万円」・・・「金融資産=負債」が成立している。

問題はそのあとだ。

借りたカネは返さないといけない。そこで、借金した人や会社は、利子と元本を返すため、せっせと働く。稼ぎが良い間は問題ない。ところが、給与や売上が減ったり、失業したり倒産したり、あるいは、借金の額が身の丈を超えると、返せなくなる。これが、債務不履行(デフォルト)だ。このとき、「負債」はゼロになるが、「負債=金融資産」のルールにより、金融資産もゼロになる。

もっとも、現実には、債務不履行が発生しても、預金者の貯金は減額されない。ツケはすべて銀行に回るわけだ。これが、よく耳にする「銀行の不良債権」なのである。

ということで、借り入れは計画的に!

では、身の丈に合った負債(借金)って、どのくらい?

個人の場合、「年収の5倍」程度とされる。たとえば、年収400万円なら、返済可能な家のローンは2000万円(頭金を除く)。これを超えると、「稼ぎ」で返済するのが難しくなるわけだ。

つまり、

「負債÷年収>5」

は危険領域なのである。これは、個人の話だが、会社も国家も同じだろう。スケールが違うだけでルールは同じだから。つまり、身の丈を超える借金は身を滅ぼす。

■安全な資産

ここで、「負債÷年収>5」を、国の経済におきかえてみよう。

「負債=金融資産」、「年収=GDP」なので、

「金融資産÷GDP>5」

が成立する。これが国家バージョンの危険領域だ。もし、負債が焦げ付くと、破壊力は個人バージョンの比ではない。株価暴落、金融資産暴落、サイアク、金融恐慌を引き起こす。

ここで、現実のデータをみてみよう。

2017年、日本の金融資産は「3007兆円(金融機関を除く)」、GDPは「546兆円」なので、

「金融資産÷GDP=5.5」

まんま危険領域ではないか。

もちろん、「個の経済」を「国の経済」に単純には引き伸ばせない。とはいえ、「国の経済」は「個の経済」の積み上げで、ルールは同じ。だから目安にはなるだろう。

じつは、2018年2月の株価急落と、同年10月の米国ハイテク株急落、それに続く株価暴落の原因は、ココだと思っている。米中貿易摩擦やファーウェイCFO逮捕、米国の金利引き上げ、リセッションへの警戒・・・はきっかけに過ぎない、エネルギーと原動力はココにあると。

ただし、今後、真性「株価暴落」が起きる可能性もある。具体的には、NYダウで「2000ドル」、日経平均で「2000円」規模の下落だ(1日で)。そのカチカチ音(引き金)が聞こえてくるのだ。

株がダメなら、現金か預金がいい?

そうとも言い切れない。通貨はインフレで目減りするし、ハイパーインフレなら紙くずだ。トイレットペーパーを買うのに、その何倍もの紙束(お札)が必要・・・なんて冗談みたいなことが起きるのだ(21世紀のジンバブエで現実にあった)。

では、インフレに強い資産は?

不動産!

やめたほうがいい。人口が減って、東京でさえ空き家が問題になっているのに、どうやったら上がるのだ?

ということで、消去法なら「金(Gold)」だろう。

「金融資産=負債」が成立するのは、金融資産の正体が「所有権」だから。権利は証券化できるので、カンタンに転売できる(銀行預金もしかり)。ところが、金(Gold)は「実物」なので、所有権を転売できない(金を証券化したものは除く)。だから、誰の負債でもないし、返す必要もない、完全無欠の自分の資産なのだ。しかも、「金(Gold)」は触って、ほおずりして、かじることもできる(美味くはない、たぶん)。さらに、宝飾品や工業品の材料としての価値もある。

でも、ニンジンも負債はないし、食料としての価値がある・・・いや、財産としてはちょっと。ウサギにかじられたら終わり、と実家の父がぼやいていた。

というわけで、「安全な資産」を確保するのは難しい。一番確かなのは「ジョブ(職)」!

身もフタもない・・・

■国債の正体

金融資産が暴落するのは宿命だが、先陣を切るのはたいていは「株価暴落」だ。

ただし、隠れた本命がいる。「日本国債」だ。

「国債」は日本政府が発行する債権なので安心。利息がつくから現金よりお得。満期まで待てば元本保証。安全性と安定性で、国債に優る金融資産はないだろう。

ところが、国債の価格はリアルタイムで変動している。

現金・預金も、物価との関係で価値が変動するから同じでは?

ノーノー、「実質的価値」ではなく、「見た目の価格」が変動するのだ。

国債の価格がなぜ変動するか、カンタンに説明しよう。

価格「100円」、年利率「1%」、償還期限「10年」の国債が発行されたとする。10年待てば元本「100円」が返還されるし、年率「1%」の利息もつく。

ここで、市中金利が年率「2%」に上昇したとする。すると、年率「1%」の国債など誰も買わない(国債は満期前に売り買いされる)。そこで、市場原理が働く。価格が100円より下がって、結果として、実質利率が「2%」に近づくのだ。これなら買い手は付くだろう。逆に、市場の金利水準が「0.5%」に下がれば、年率「1%」の国債に殺到する。そこで、市場原理が働く。価格が100円より上がって、利率が「0.5%」に近づくわけだ。

ラフな説明だが、本質は外していない。

つまりこういうこと。

国債は、金利が上がると価格は下がり、金利が下がると価格は上がる。このルールはこう考えるとわかりやすい。本来の価値(価格)が下がれば、褒美(金利)を増やして惹きつけるしかない。

なんか、だまされたような・・・本当に大丈夫?

じつは、国債は「資産」というより「カネ貸し」と考えた方がいい。

たとえば、「100円」を10年間貸し付けて、年率「1%」の利息を受けとり、10年後に返してもらう。国債とはその借金の「証文」のことなのだ。ただし、貸す相手は日本国政府なので、踏み倒されることはない(たぶん)、でも、中国に占領され「日本自治区」になれば、紙くずになるし、中国国債の方がいいのかなぁ・・・という世界。

■日銀は大金持ち

本題に入ろう。

黒田総裁のもと、日銀が日本国債の爆買いをしているのは周知だ。日本国債は、日本国政府が発行した公債で、日銀は国の中央銀行である。つまり、政府が発行して政府が買っているようなもの。

おかしくない?

たぶん、おそらく、大丈夫(答えになってない)。ただし、度を越すと危ない。

日銀は、日本国債を爆買いした結果、大金持ちになってしまった。2017年の資産をみてみよう。

・日銀の資産=548.9兆円

一方、日本が働いて稼ぐ総額は、

・名目GDP=548.6兆円

ここで、

日銀の資産÷名目GDP=1.0005

つまり、名目GDPに対する中央銀行の資産の比率は「100%」。

これがどれほどありえない数字か・・・

2017年の米国で「23%」、欧州で「38%」なのだ。太平洋戦争中、膨大な軍事費を日銀がささえていた非常事態の1945年でさえ「40%」。日本の金融がいかに歪(いびつ)かがわかるだろう。

■国債暴落

ただし、日本国債がすぐに暴落するわけではない。巧妙なカラクリがあって、国債の満期がきても、日銀の同意があれば、「償還=政府がお金を支払う」必要はない。つまり、国債は返す必要のない負債なのだ。なら、安心では?

そうでもない。

国債を大量に買い込んでいるのは、他にもいる。日本の民間銀行だ。

もし、国債が急落すれば、銀行は我先にと国債を売り叩くだろう。国債が下落すれば、銀行の自己資本比率も下がるから。というのも、自己資本比率が一定値を下回ると、銀行業務ができなくなるのだ。背に腹は代えられない、自行だけ助かろう、他行より速く売り抜け!

早い話「ババ抜き」。

もし、日本国債が暴落すれば、ひどい円安になる。日本政府の公債が暴落するのだから、日本の通貨「円」も暴落してあたりまえ。結果、輸入物価は高騰し、インフレが加速するだろう。でも、給料もあがるから問題ない?

ノーノー、通貨の信用が揺らいでいるときに、好況になるはずがない。景気後退、リセッションだ。だから、給料も上がらない。物価は上がれど、給料は据え置き、これがサイアクのスタグフレーションだ。というわけで、「国債暴落」の破壊力は「株価暴落」の比ではない。

国債・現金・預金はお仲間だが、「安全性」という点では現金が一番だろう。誰の負債でもないので、焦げ付くことはないから(価値が毀損しない)。はるかかなたで、日本政府の負債になっている、という見方もあるが、ちょっと違う。ただし、現金にも欠点がある。利息がつかない、盗まれたり、火事で消失したらゼロになる!

ここで、金融資産を総括しよう。

「安全性」では・・・現金>預金>国債>株

「利殖性」では・・・株>国債>預金>現金

株は、他の金融資産にくらべ、儲けも大きいが損も大きい。とくに、信用取引の「空売り」は注意が必要だ。株価が暴騰すれば、損失は天井知らず、理論上無限大になる。そのときは、自己破産するしかない。

とはいえ、株価は定期的に暴落するが必ず回復する(これまでは)。だから、金融資産が暴落してもあわてる必要はない。売らないかぎり、損は確定しないのだ。ただし、それは現物取引の話。信用取引なら「損失」が膨らむと精算を迫られる。その時点で損が確定するわけだ。

一方、「金融資産の暴落」には別のリスクがある。まれに、二次災害を引き起こすのだ。たとえば、70年前の第二次世界大戦。核ミサイルがまだない時代に、数千万から1億人が死んだのだ。

《つづく》

by R.B

関連情報