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週刊スモールトーク (第408話) 金融の未来(1)~銀行不要論~

カテゴリ : 社会終末経済

2018.11.17

金融の未来(1)~銀行不要論~

■就活生の銀行離れ

就活生の「銀行離れ」が加速している。

かつて、文系学生の一番人気だったのが、今は見る影もない・・・とまでは言わないが。

就活情報大手「ディスコ」によると、8年連続首位だった「銀行」の人気が4位に転落、かわりに「情報サービス業」が首位に立ったという。

なんともわかりやすい図式だ。

というのも、今、金融業界は「フィンテック」が熱い。

「FinTech=Finance + Technoroly」・・・文字どおり、「金融」と「IT」の合成語だが、金融のIT化は今に始まったことではない。ITナシではATMも動かないから。

さては、新造語をもちだして、不安をあおっている?

銀行が風評被害にあったらどうするのだ?

ところが・・・2017年、メガバンク三行が、大規模なリストラ計画を発表した。

1.三井住友フィナンシャルグループは、2021年までに4000人分の業務量を削減。

2.三菱UFJフィナンシャル・グループは、2024年までに9500人分の業務量を削減。

3.みずほフィナンシャルグループは、2027年までに1万9000人の従業員を削減する。

業務量か従業員か、は重要ではない。行き着くところは同じだから。この手の話には表と裏があるのだ。

【表】仕事がなくなりました。でも、安心してください。リストラなんかしませんよ、配置転換です!

【裏】事務職が、営業やソフトウェア開発にまわされたら・・・絶対辞めますよね。

というわけで、「人員削減」を明言したみずほフィナンシャルグループは正直!でも、削減数も1万9000とダントツ・・・こちらも正直?

では、他の2行はウソつきかというと、そうでもない。ギリギリまでがんばって、人員削減を回避するつもりかもしれないし、仰天するような隠し技を持っているかも(それはないか)。

そもそも、今起きていることは、メガバンクが悪いわけでも、銀行業界が怠けているわけでもない。金融業の根底が揺らいでいるのだ。

とはいえ、就活生にしてみれば、そこはどうでもいい。要は、65歳までつつがなく働ければいいのだ(その頃は75歳)。ところが、勝ち組のメガバンクでさえ大リストラ。そんな先細りの業界に行くのはバカじゃないの、というわけだ。

ところで、今回の大リストラに「フィンテック(金融IT)」はどうからんでいるのか?

■RPAの衝撃

主犯は「RPA」である。

「RPA」は「Robotic Process Automation(ロボテック・プロセス・オートメーション)」の略だが、手足がついているわけではない。いわゆる業務アプリだ。ただし根本が違う。

従来の業務アプリは、人間が画面をみながらキーボードとマウスで操作する。ところが、RPAは人間が操作する必要はない。コンピュータが画面を自動認識し、勝手に操作するのだ。「破壊的イノベーション」とは、こういうのをいうのだろう。業務が完全に自動化され、人間がいらなくなるのだから。だから、「オペレータ=ロボット」の意味を込めて「ロボテック・プロセス・オートメーション」なのである。

RPAにはもう一つ特徴がある。これまでのアプリのように、ごりごりプログラムを書くのではない。専用ツールを使って、業務フローを書く。業務知識があり、何がやりたいかわかっていればいい。プログラマーはいらないわけだ。

そんな事情もあって、PRAを「AI・人工知能」とする記事もみかけるが、それは間違い。

昔、オフィスの業務アプリは「COBOL」というプログラミング言語で書かれていた。ところが、20年ほど前から、「ジェネレータ」というツールが普及し、プログラムが自動生成されるようになった。だから、プログラミング不要は今に始まったことではない。ジェネレターをAIと言う人はいないから、RPAもAIではない(今のところ)。

とはいえ、「操作の代行」のインパクトは計り知れない。「オペレータ=人間」がいらなくなるから。

というわけで、今回のメガバンクの大リストラのトリガーは「RPA」といっていいだろう。

今後、業界をとわず、定型業務は人間抜きでRPAで完結するようになる。結果、業務は完全に自動化され、人間は極限まで切り詰められる。その前触れが、今回の「メガバンク・大リストラ」なのだ。

ところが、銀行の「先行き不安」はもっと根が深い。「存在価値」そのものが揺らいでいるのだ。

■銀行不要論

2018年現在、銀行の役割は大きく三つある。

1.預金者から、お金を預かって、利息を払う。

2.預かったお金を、企業や個人に貸して、利子を取る。

3.売買取引を決済する。

ところが、このすべてが危うくなっている。

まず、「1.預金」だが、利息はゼロに等しい。たとえば、1年定期の金利は0.01%(メガバンク)。100万円を1年間預けて利息は「100円」。

ダイコン1本しか買えないぞ!

さらに「物価上昇率>0.01%」なら、預金するほど損。しかも、この程度の値上げは日常的におきている。「預金」の意味ないじゃん!(金庫代わりにはなる)

つぎに、「2.貸出」。

需要は激減している。大手優良企業は、内部留保が巨大で、銀行からお金を借りる必要はない。借りたいのは、伸るか反るかの会社で、銀行もそんなところには貸したくないだろう。つまり、「借出」の価値も薄れている。もっとも、この構図は昔から変わらないが。

最後に、「3.決済」。

これまで、銀行は、振込みやカード決済で手数料を稼いでいたが、これからは難しい。銀行を経由しない手数料ゼロのモバイル決済が普及するから。さらにコワイのが仮想通貨だ。送金や決済は、銀行よりずっと安くて速い。

というわけで、金融の世界は、銀行決済からモバイル決済へ、リアルマネーから仮想通貨へ。つまり、銀行は「マネーの循環」から外されようとしている。

当面、フィンテックは銀行に恩恵をもたらすが(人件費削減)、フィンテックの本質はマネーのデジタル化、処理の自動化にある。このままでは、銀行は情報サービス業に取って代わられるだろう。

銀行をターゲットにするような優秀な学生は、それを見抜いている。だから、「銀行離れ」は必然なのである。トレンドでもなく、風評被害でもなく、来るべき未来なのだ。

ただし・・・

先細りは、銀行だけではない。

■マルクス経済学は死んだ

RPAは、処理だけでなく、入出力(オペレーション)も自動化する。テクノロジーとしては地味だが、社会に与える影響力は巨大だ。

でも、本当にコワイのは、やはり「AI・人工知能」。

RPAは「定型業務」限定だが、AI・人工知能は「非定型業務」も射程に入れているから。

もし、RPAがAI・人工知能とリンクしたら(もう始まっている)、定型業務、非定型業務、オペレーションまで自動化される。そのときは、人間は業務から完全に排除されるだろう。理由はカンタン、人間よりずっとうまくやるから。

マシンは、休まない、眠らない、有給休暇をとらない、うつ病にならない、給料が安いと文句も言わない、1日24時間、1年365日働き続ける(コンセントさえ入れておけば)。

つまり、今起きていることは、「銀行離れ」ではなく「仕事離れ」なのだ。

どういうこと?

「労働者」はマシンに取って代わられ、「資本家」だけが残る。

19世紀の思想家カール・マルクスは、まぎれもない「知の巨人」だ。彼の革命理論によれば、「資本=生産手段」は資本家ではなく労働者に帰属する。ところが、「労働」そのものがなくなるのだ。だから、AI・人工知能が人間から労働を奪った時点で、マルクス経済学は消滅する。

そもそも、経済学って本当に学問?と思っているのだが、話はそこではない。

つまりこういうこと。

「ロボット&とAI・人工知能」は人間から「労働」を奪う。結果、「労働者」という概念も消滅するだろう。残るのは「資本家」のみ。つまり、今の資本主義も崩壊する。

「ハインリッヒの法則」という教訓がある。

「大事故」がおきたら、その前に29の「小事故」がおきていて、その背後には300の「異常」が潜んでいる・・・労働災害の統計的経験則だが、他の分野でも成立するだろう。

たとえば金融分野にあてはめると・・・

銀行の大リストラと銀行不要論は「小事故」で、これから起きる「大事故」のサイン(予兆)である。

では、残り27個の小事故は?

もうおきているはずだから、カンタンに見つかりますよ。でも、重要なのはソコではなく、大事故とは何か?

おそらく・・・社会を根底から変える「AI資本主義=ディストピア」。

《つづく》

by R.B

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