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週刊スモールトーク (第401話) 年金(老後)は株価次第~1億総株主の時代~

カテゴリ : 社会経済

2018.08.12

年金(老後)は株価次第~1億総株主の時代~

■バブルで大損したのは・・・

昔、バブルが崩壊したとき、大喜びした人たちがいた。

「株、不動産、ゴルフの会員権、絵画が暴落して、お気の毒!!」

「投資家=金持ち」だけが損したと思ったのだろう。他人の不幸は蜜の味というし・・・

でも、本当だろうか?

冷静に考えてみよう。

「金持ち」はカネがあまっているから、投資する。だから、投資分が暴落しても、生活には困らない。あわてて売却する必要はないわけだ。そして、ここが肝心・・・安値(買値>売値)で売らない限り、損は確定しない。

つまり、バブル崩壊後の真実は・・・

金持ちは損したわけではなく、評価額が下がっただけ。でも、なんだかブルー、という気分の問題。

一方、(堅実な)庶民は、投資していないから、直接的被害はナシ。

ところが、大損こいた人たちがいた。

バブルの時代、給料がはねあがって、単純な線形予測で「王侯貴族」を妄想した一部のサラリーマンだ。フェラリー・テスタロッサを2台買って(1台はパーツ取り)、カリブ海でクルーザーを浮かべて、ゆくゆくは自家用ジェット。

そして、借金してまで、投資に精を出したのである。

たとえば・・・

1億円借金して、億ションを買う。バブル経済で、急上昇中の給料と家賃収入でローンは返せるし、最後に実物資産(億ション)が残る。こんなうまい話はない、やらない奴はバカだ。で、結果はどうなったかというと、バブルが崩壊して、不況になり、給料も家賃収入も下がって、ローンが返せなくなった。そこで、億ションを売却して、借金を返そうと思ったら、億ションが暴落・・・残されたのは資産(億ション)ではなく、負債(借金)だった。

ウソのような話だが本当だ。あの時代、若いサラリーマンもやっていたのだから。

やっぱり、つつましく生活するのが一番、庶民バンザイ!

なら、ハッピーエンドなのだが、そうはならなかった。バブル崩壊のツケが、庶民にもまわってきたのである。

■失われた20年

バブル崩壊後、日本は長い不況におちいった。「失われた20年」である。給料が減り、庶民の生活が苦しくなったのだ。

データで確認しよう。

1世帯あたりの年収・・・1994年がピークで「664万2000円」、それからダラダラ下がり続け、2015年は「541万9000円」。20年間で、年収が「120万円」も下がったわけだ。毎年、車が買える金額だが、問題はそこではない。年収が下がり続けていること。高度経済成長期を経験した人たちには、信じられない現実だ。

戦後の日本は、焼け野原からはじまった。何もないから、作れば売れる時代だ。給料は上がり続け、親の代より子供の代、子供代より孫の代の方が豊かになる。だから、先のことは心配しないで、ローン組んで、家電製品や自動車や家を買いまくった。「モノ不足=インフレ」なので、カネの価値が下がり、借金の負担もどんどん減っていく。貯金するより、借金してモノを買った方が得なのだ。多少の浮き沈みはあっても、中長期的には右肩上がりだったのである。

ある代行の運転手者さんのつぶやき・・・

「こんな歳まで働くとは思わなかった(70歳ぐらい)。若いころ、給料がでたら、みんなでキャバレー行って散財した。給料は毎年上がると信じてたし。今おもえば、貯金しとけばよかった・・・」

ちなみに、現在、「キャバレー」というカテゴリーはない。「キャバクラ」に呑み込まれたのだ。

話はそこではなく・・・

金融資産(株、債権、投資信託)、不動産、絵画が暴落すると、困るのは、買った金持ちではなく、買わなかった庶民。

はぁ?どーゆーこと!なのだが、もっと理不尽なことがある。

「資産暴落→不況」で傷つくのは、給料(労働所得)だけではない。庶民の最後の砦「年金」も道連れなのだ。

■1億総株主の時代

大きな声では言えないから、小さな声で話そう、株価が下がると「年金の価値」も下がるのだ。

「年金の価値」が下がる?

納める保険料が増えて、受給する年金額が減る。丸損じゃん・・・なのだが、それだけはない。受給開始の年齢も上がるのだ。現在、65才だが、70才超えは確実で、75才まではいくだろう。つまり、75才まで生きられなかったら、年金は1円ももらえない(払うだけ払って)。

ではなぜ、「年金の価値」は株価と連動しているのか?

年金は株で運用されているから。

国民が収めた保険料は、厚生労働省所管の独立行政法人「GPIF」が管理・運用している。

管理・運用?

年金は、金融資産に投資されているのだ。ちなみに、2017年の投資配分(ポートフォリオ)は、

・国内債券35%

・国内株式25%

・外国債券15%

・外国株式25%

なんと、年金の半分が「株式」に投資されている。だから、株価が下がれば、年金が減ってあたりまえ。

じつは、日本の株価をささえているのは、日銀とGPIFといわれる。PKO(株価維持操作)と揶揄する専門家もいるが、当たらずとも遠からず、どころか、大アタリ。

日銀は、ETFの年間購入額を、2016年7月に3兆3000億円から6兆円に引き上げた。「ETF」とは、日経平均株価や東証株価指数と連動する投資信託だ。一方、GPIFは、JPX日経インデックス400などを指標に運用している。

つまり、日銀もGPIFも、個別の企業を糒査して株を売り買いしているわけではない。インデックス頼りの大雑把な投資で、日経平均やNYダウ平均を買うようなもの。だから、株式市場全体が底上げされないと、年金は減る!

ではなぜ、こんなアブナイ橋を渡るのか?

年金を運用しないと、年金システムが破綻するから。つまり、年金と株価は呉越同舟(一蓮托生)なのである。

■年金は破綻している

(日本の)年金の仕組みをみてみよう。

まずは、入金と出金の流れ。

自分が受けとる年金を、自分が積み立てるわけではない(積立方式)。現役世代が納めた年金を、年金受給者が受け取るのである(賦課方式)。

この場合、現役世代が減り、受給世代が増えれば、「出金>入金」になり年金は破綻する。

データをみてよう。

まず、年金を納めるのが「生産人口(15歳~64歳)」、年金を受け取るのが「老年人口(65歳~)」である。「老年人口」の総人口に占める比率をみると・・・

23%(2010年)→27%(2015年)→38%(2065年)

高齢化がすすんでいる。納める人が減り、受け取る人が増えるわけだ。しかも、2065年には、5人に2人が65歳以上、街を歩く半数が老人!

そのとき、年金は?

現役世代1.3人で高齢者1人を支える!

絶対ムリ。でも、まだ先の話では?

では、現在の年金の収支をみてみよう。

収支=入金ー出金

入金は国民が納める保険料と国の補助金、出金は年金生活者に支給する年金である。

2016年の収支は、

①保険料:35.1兆円

②補助金:12.2兆円

③年金:54.2兆円

・入金=①+②=47.3兆円

・出金=③=54.2兆円

・収支=入金ー出金=6.9兆円

7兆円の赤字。これが続けば、年金の金庫はいずれ空っぽになる。だから、投資で儲けて、赤字を補填するしかないのである。

つまりこういうこと。

もし、株価が暴落したら、ボクたち株やっていないから関係ないもんね、ではすまない。老若男女、貴賤を問わず、直撃されるのだ。しかも、庶民の虎の子、最後の砦「年金」が。つまり、日本は1億総株主・・・コワイコワイ。

そんな難問なら、いっそのこと、AI(人工知能)に任せたら?

もちろん、AIなら瞬時に解決・・・

「年金で投資」はやめる(正しい!)。ただし、人間は必ず結婚せよ、夫婦は2人以上子供をつくれ、75歳になったら安楽死・・・こっちの方がコワイ。

by R.B

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