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週刊スモールトーク (第38話) UFO(1)~空飛ぶ円盤の原理~

カテゴリ : 社会

2006.03.11

UFO(1)~空飛ぶ円盤の原理~

■インベーダー

子供の頃、「世界の円盤」という本を買ってもらった。空飛ぶ円盤、いわゆるUFOものである。内容はリアルで、モノクロ写真もたくさん載っていた。また、特別寄稿のコーナーで、有名な漫画の神様や日航のパイロットまでが、「私は空飛ぶ円盤を見た!」と実名入りで証言していた。小さな子供に、信じるなと言う方がムリである。

深夜、両親が寝込んだのを確認して、こっそりテレビを見ていると、「インベーダー」というドラマをやっていた。ストーリーは、遠い宇宙のかなたから、地球に侵略者がやってくる・・・若き建築家デビッド・ビンセントは、帰宅途中に、偶然、宇宙からの侵略者を目撃する。

ビンセントは、地球がインベーダー(侵略者)によって侵略されていると周囲に訴えるが、誰も信じてくれない。それもそのはず、インベーダーは人間にそっくりなのだ。本物の人間と違うのは、小指がうまく曲がらないこと。今から考えると、この設定は凄すぎる。新しい登場人物が出るたびに、小指を凝視したことを覚えている。ビンセントの味方だと信じていた人物が、小指が曲がらないと知ったときのあの衝撃・・・インベーダーを力ずくで捕獲することもできるが、彼らは致命傷を負うと、跡形もなく燃えつきてしまう

つまり、証拠が全く残らないのだ。また、彼らは地球の環境に合わないらしく、定期的に円筒形の透明チューブに入り、体をメンテナンスする必要があった。これを怠ると、やはり燃えつきてしまう。そのため、彼らは充電装置をそなえた秘密基地を、あちこちに隠し持っていた。

彼らがチューブの中で再生する姿は、何の変哲もない光の点滅だったが、やたら恐かった。地球滅亡の危機、人間に化けた小指の曲がらない異星人、秘密基地と不気味な円筒チューブ、あのリアルな恐怖感は今でも鮮明に思い出せる。くわえて、主人公役のロイ・シネスも、「恐怖」がやたら似合う俳優だった。

彼がその後、テレビや映画で活躍した記憶はないが、SFドラマ「Xファイル」で、人間を蘇生させる正義のエイリアン役で出ていた。30年経っても、一目で彼だとわかった。こうして、本とTVでトラウマ化した少年は、「空飛ぶ円盤と宇宙人は存在する」とかたく信じるようになった。もちろん、今は落ち着いたが、人に会うたびに小指を盗み見るクセは治っていない。

■空飛ぶ円盤

UFOは昔、「空飛ぶ円盤」と呼ばれていた。1947年6月24日、アメリカの実業家ケネス・アーノルドが自家用機で飛行中、9個の飛行物体を目撃したのが始まりである。彼の証言によれば、水面に投げたコーヒーカップの受け皿のように、跳ねるように飛んでいったという。「空飛ぶ円盤」でおなじみのジグザグ飛行だ。そこで、「FlyingSaucer(空飛ぶ受け皿)→空飛ぶ円盤」を経て、「空飛ぶ円盤」が生まれたわけだ。

ところが、Saucer(受け皿)は、飛び方の喩えに使っただけで、形状はむしろブーメランのようだった、と彼は後に証言している。これは、後述するベルギーUFO目撃事件の信憑性を示唆するものである。飛び方の喩えで使った「円盤」が、形状と誤解されたことで、その後のインチキUFO写真の多くが「円盤型」となった。この点で、この目撃事件は意義が大きい。

ところが、さらに深い歴史的意義もある。未確認飛行物体(UFO)が、世界で初めて公になったこと。さらに、多少の誤解があったにせよ、「空飛ぶ円盤」と正式?に命名されたこと。そして、世界中の「空飛ぶ円盤」騒動の起源となったことである。「空飛ぶ円盤」の歴史の第2幕は、マンテル大尉事件である。

1948年1月8日、アメリカケンタッキー州で「空飛ぶ円盤」が多数目撃された。そこで、ゴドマン空軍基地は、付近を飛行中だったトーマス・F・マンテル大尉の戦闘機隊に追跡を命じた。この戦闘機隊は、第二次世界大戦中の最高傑作P51ムスタング4機で編成されていた。マンテル大尉は「空飛ぶ円盤」を確認し追跡したが、ぷっつりと連絡がとだえてしまう。その後、バラバラの機体とマンテル大尉の遺体が発見された。

公式発表によると、マンテル大尉は金星を未確認飛行物体と見誤って追跡し、酸欠により意識不明に陥り、墜落したのだという。ベテランパイロットが、金星を追いまわしたあげく、酸欠で墜落?もっとましなウソがつけないものか。そもそも、P51のような優秀な戦闘機が、ベテランパイロットもろとも墜落したとなれば、撃墜されたと考える方が自然だ。

いずれにせよ、これが歴史上初のUFOの犠牲者となった。この2つの歴史的事件の後、空飛ぶ円盤は世界中で知られるようになり、空飛ぶ円盤の目撃者も急増した。写真も多数公開されたが、一目でインチキとわかるもの、手の込んだ合成写真、なんやかんやで世界中がUFOで大騒ぎになった。いずれにせよ、現代の真面目なUFO研究家によれば、その大半はニセ物ということである。

■アダムスキー事件

こうして、空飛ぶ円盤は歴史年表を刻んだが、空飛ぶ円盤で一儲けする者も現れた。時は1952年、場所はアメリカ。この人物は、アマチュア天文家を自称し、名をジョージ・アダムスキーといった。彼は、なんと宇宙人とコンタクトをとったと言い出したのである。もしそれが本当なら、人類1万年の歴史で、最も記念すべきイベントになる。彼の著書は世界各国で出版され、ベストセラーとなった。

それまでの空飛ぶ円盤の目撃情報といえば、空飛ぶ円盤を見た、写真を撮った、円盤型だ、葉巻型だ、などなど、たわいもないものだったが、アダムスキーは、「金髪で緑色の目をした金星人とテレパシーでコンタクトをとった」と言い切ったのである。

1.空飛ぶ円盤は宇宙人の乗物。

2.彼らの故郷は金星。

ここまで特定したのは彼が初めてだった(誉めているわけではない)。

調子に乗ったアダムスキーは、「お友達」をさらに増やすことにした。1953年、今度は火星人と土星人と「英語」で話をし、空飛ぶ円盤に搭乗したと触れまわったのである。しかも、月まで飛行し、月には水も空気もあったという。アポロが月に行って、そんな形跡がないことを確認したが、もちろん、後の話。

この発表のあと、空飛ぶ円盤に乗船したという人物が世界中で現れたが、アダムスキーほどの名声と富を得る者はいなかった。どんな世界でも、コロンブスの卵の教訓は生きている。こうして、アダムスキーは空飛ぶ円盤の伝道師となったが、一方で、詐欺師、ペテン師、気違いなどとののしられた。

アダムスキーは既に他界しているが、彼が提唱した「アダムスキー型空飛ぶ円盤」は歴史に深くその名を刻んだ。おそらく、世界で最も有名な空飛ぶ円盤なのだろうが、その形は異形である。円盤の上に、国会議事堂を円筒にしたようなものがのっかり、窓までついている。奇妙キテレツ、全体として古色蒼然としている。また、遠方より撮影したとされるアダムスキー型空飛ぶ円盤の写真は、上部がピンボケで、その他はくっきりしている。被写体を遠方から撮影すれば、全体がピンボケか、全体がくっきりかのどちらかで、混在はありえない。もちろん、近距離撮影ならありうる。

こうして、空飛ぶ円盤は良識人が眉をひそめるゲテモノに成り下がった。

■UFOの真実

玉石混淆(ぎょくせきこんこう)とは、偽物と本物が混じり合った様をいう。だが、「見るからにインチキ」を見せられれば、カテゴリーに属するすべてがニセ物に見える。これは危険だ。真実を見落とすかもしれないから。現代では、空飛ぶ円盤は「UFO」とよばれている。「UnidentifiedFlyingObject」の略で、意味は「未確認飛行物体」。なので、宇宙人が乗っている必要はない

「UFO」とは識別不能の飛行物体を指すわけで、決して怪しいものではないのだ。ただし、皿を宙に投げて、写真をとり、「UFOだ!」と騒ぐのはやめよう。それは、未確認物体ではなく、紛れもない「皿」なのだから。何をいまさらだが、世界中でこんななインチキが後を絶たない。結果、UFOという言葉そのものが、うさんくさく見られている。こんなインチキ情報に紛れて、本当に宇宙人が地球に来ていたらどうするのだ?などと不安をつのらせたり・・・やはり、UFOには不思議なカリスマがある。

ということで、空から何か落ちてきたとして、それが隕石か、飛行機の破片か、はたまた鳥?と首をかしげる程度のものを、UFOと呼ぶのはやめよう。原理不明の鋭角ターン、見たこともない速度、自然界ではありえない色変化、やはり、「前代未聞」が必要だ。そして、世界中で目撃された未確認飛行物体の「前代未聞」は、主にその運動能力によっている。空中停止、超高速移動、そして鋭角ターン。まずは空中停止。飛行物体を空中で停止させるには、重力と逆方向の力をつくりだせばいい。

地球のテクノロジーでは、飛行船、ヘリコプター。飛行船は浮力で、ヘリコプターはプロペラの揚力で、重力を相殺し、宙に浮かぶ。もちろん、遊園地でもらえる風船も空中停止が可能。なので、決して難しい技術ではない。つぎに、超高速。未確認飛行物体は高速なもので、マッハ2~10がレーダーで観測されている。確かに高速だが、NASAの超音速飛行機もマッハ9.6を記録しているので、前代未聞というわけではない。

では、一体何が前代未聞なのか?

急加速と鋭角ターンである。

■急加速の謎

車のアクセルを踏み倒せば、誰でも「加速」を体感できる。乗っている人は未知の力で、イスに押しつけられるが、大したことはない。ところが、ジェット戦闘機ともなると話は別だ。現代の戦闘機で空中戦を行えば、パイロットは、最大9Gもの加速度を受ける。ここで1Gとは、地球の重力による加速度で、1秒間に秒速9.8m速度を上昇させる力である。つまり、加速度と力は同じと考えていい。

飛行機から空中に放り出されたことを考えてみよう。放り出された瞬間、落下速度はゼロだが、1秒後には秒速9.8m、2秒後は秒速9.8m×2と、時間に比例して落下速度が上がる。これが1Gの正体で、原因は地球の重力にある。つまり、我々はつねに、1Gの加速度で地球の中心に落下していることになる。

ただ、現実には、大地があるので落下しない。もちろん、井戸に飛び込めば、大地のありがたみは消える。パイロットが受ける「9G」とは、1秒間に速度が秒速9×9.8m=秒速88m上昇する加速度。つまり、車が停止状態から、1秒後には秒速88mに達する。ドライバは座席に押しつけられて身動きもできない。実際、鍛えられたパイロットでも息ができなくなるという。

さらに、15Gになると、戦闘機そのものが空中分解する。ここで、実際に観測された未確認飛行物体(UFO)の加速度をみてみよう。くどいようだが、ここでいう未確認飛行物体とは正体不明の飛行物体で、宇宙人が乗っているとは限らない。1990年3月30日、ベルギー空軍のF16戦闘機が、UFOをレーダーで確認している。その時は、瞬間に時速280㎞から1800㎞以上に加速したという。もし、この瞬時を1秒と仮定すれば、このときの加速度は43Gにも達する。地球製の戦闘機なら、瞬時に空中分解だ。

ところが、この未確認飛行物体は、こんな超加速をサクサクこなし、悠々と消え去ったという。鋭角ターンは、さらにやっかいだ。超高速から一瞬にして速度をゼロにし、さらに別方向に加速する必要がある。この速度ゼロ、つまり停止が問題なのだ。もし、ジャンボジェット機の2倍にあたる時速1800kmで飛行中、空中で急停止すれば、何が起こるか?乗客全員が、時速1800kmで前方の壁にたたきつけられる。肉体は原形はとどめないだろう。

ところが、この未確認飛行物体は、瞬間停止をいとも簡単にやってのけたのだ。少なくとも、地球の産物ではない。このような現象を説明する方法は1つしかない。目撃証言がウソであることを証明すること。先の超加速43Gは、1989年から1990年に起こったベルギーUFO事件によっている。そこで、この事件について検証してみよう。

■ベルギーUFO事件

これまでに報告されたUFO目撃事件で、最も信憑性が高いとされるのが、1989年11月29日のベルギーUFO事件である。たいていのUFOの写真や映像は、誰も見ていない所で、こっそりと撮影されたものだ。よって、信用したい人以外は、誰も信用しないだろう。ところが、この事件は数万人の目撃者がいたのである。「数万人のお友達」はありえないので、お互いにインチキの口うら合わせができない

さらに、数万人の証言が一致したとすれば、信憑性は極めて高い。また数時間という観測時間もポイントだ。一瞬の目撃なら見間違い、勘違いもあるだろうが、長時間なら、その可能性は低い。このベルギーUFO事件は、日本でもテレビ放映されたが、ベルギー空軍の将校が苦しげに解説する姿は痛々しかった。

この事件と並んで信憑性が高いとされるのが、ロズウェル事件である。ただし、UFOが墜落したという点で、ベルギーUFO事件とは根本的に異なる。また、ロズウェル事件では、アメリカ軍は気象観測用の気球と断定し、UFOであることを明確に否定した。ところが、ベルギーUFO事件では、軍は未確認飛行物体(UFO)と正式に認めている。

ただ、それには理由があった。ベルギーで目撃されたUFOは、アメリカ軍のステルス軍用機F117ではないかという噂が立った。形が三角形で良く似ていたからである。ところが、ベルギー空軍がF117かどうか断定できずにいると、空軍の無能ぶりが取りざたされた。彼らは、自分たちが無能ではないことを証明するために事を急いだのである。

ベルギーUFO事件で、もっとも重要な目撃証言は、ベルギー軍の憲兵隊員2人による。彼らは、不名誉なそしりを覚悟して、「UFOを見た!」と証言したのである。彼らの証言によれば、その物体は、底辺の長さが30~35m、高さが25mほどの二等辺三角形で、厚みは2mほどだったという。頂点近傍には、それぞれ3つの白く光る球体があり、中央にはオレンジ色の球体があったという。その飛行物体は、憲兵隊の車とゆっくり併走し、空中に停止することもあったという。ところが、全くの無音

その後、2人はその物体を追跡し、観測をつづけた。目撃者が悪質なUFOオタクや、酔っぱらいでなかったので、ヘッドライトの雲の反射だとか、隕石だと言いくるめるにはムリがあった。彼らは勤務中の憲兵なのだ。彼らの証言を信じれば、この飛行物体はF117でないことは確かだった。F117は米軍のハイテク軍用機だが、空中停止はもちろん、時速40kmの超低速飛行もできない。まして、無音飛行など論外だ。地球文明のスタンダード「内燃機関」を利用していないことは確かだった。内燃機関は燃料を爆発させ、その反動で推進する。静寂さとは無縁なのだ。

また、非常にゆっくりと、あるいは非常に速く前進でき、急な方向転換をすることができたという。いわゆる鋭角ターン。このようなターンは地球のテクノロジーではムリ。未知の推進原理を利用しているのは確かだ。

■ベルギーUFO事件の意味するもの

このベルギーUFO事件のポイントは2つある。信憑性が高いこと、自然現象や地球文明の産物ではないこと。一方、奇妙なこともある。飛行物体が、あえて見られるように行動したこと。超音速で飛行できるのに、高度をさげて、自動車と併走している。また、F16戦闘機がスクランブル発進すると、逃げ去り、帰還するとまたレーダーに現れる。さらにF16がロックオンすると、速度や航路を変更し、逃走したという。まるでからかっているように。

明かなデモンストレーションだが、目的が分からない。さらに、自分たちとは異なるテクノロジーでロックオンされたことも探知できるらしい。想像を絶するテクノロジーだ。こうして、ベルギーUFO事件は、UFOの名誉を挽回した。宇宙人が乗っているかどうかは別として、理解不能の飛行物体が存在したのである。

《つづく》

参考文献:SOBEPS著大槻義彦監訳「五万人の目撃者」二見書房

by R.B

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