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週刊スモールトーク (第315話) 21世紀の資本主義2~7倍速ビジネス~

カテゴリ : 社会経済

2016.01.09

21世紀の資本主義2~7倍速ビジネス~

■資本主義のダークサイド

究極の資本主義は「カジノ資本主義」と思っていたが、どうやら間違いだったようだ。

もっとギャンブルな資本主義と真逆のジミな資本主義がひかえているから。

じつは、資本主義の歴史は古くて新しい。

資本家が生産手段を所有し、それを借りて労働者が生産するという教科書的な定義に従えば、起源は産業革命までさかのぼる。

産業革命は史上初めて機械式生産を実現した一大革命だった。歴史の教科書でおなじみの工場制機械工業である。ところが、機械化によって生産手段(道具)の価格が高騰し、労働者には手が出なくなった。そこで、資本家は「生産手段」、労働者は「労働力」を提供するというすみわけが成立したのである。

一方、産業革命の引き金を引いたのはワットの蒸気機関だった。これが史上初の本格的な人工動力となったが、鉄の歴史と深い関係がある。

鉄は鉄鉱石を溶かして抽出する。そのため大量の燃料「石炭」が必要になる。そこで、大地を砕いて石炭を掘るわけだが、深く掘れば掘るほど大量の水が湧き出る。それがたびたび作業者の命を奪った。狭い地下で水があふれると逃げ場がないからである。そのため、揚水ポンプで排水を試みたが、人力や風力では限界があった。

そこで、より強力な「人工動力」蒸気機関が発明されたのである。まさに、必要は発明の母なり。

つまり・・・

製鉄業 → 石炭 → 炭鉱採掘 → 揚水ポンプ → 蒸気機関 → 産業革命 → 資本と労働の分離 → 資本主義の成立

こんなピタゴラ装置で資本主義が成立したのである。ここで注目すべきは、資本主義は学者が創作したイデオロギーではなく、因果律が生み出した必然だということ。

そして、資本主義の核心は・・・

資本家が出資して、会社を設立し、経営者を介して、労働者を雇い、モノやサービスをつくらせて、儲けをピンハネすること。

その結果・・・2つの階級が生まれた。遊んで暮らす資本家階級と時間を売却して暮らす労働者階級である。

ちょっと言い過ぎ?

客観的事実です。

ところが、カール・マルクスはこれが気に入らなかったようだ。貧乏な亡命生活をおくりながら、「資本論」を書いて、マルクス主義をブチあげ、「生産手段を労働者の手に!」と訴えたのである。

さらに、「能力に応じて働き、必要に応じて取る=働き者ほど働き、デブい者ほど食べる」という恐るべき哲理で世界を震撼させたものだ。それを真に受けた社会主義国家がその後世界を席巻したが、キューバ以外すべて失敗している。

人間の我欲を無視した、実体のない、幾何学のようなイデオロギーで作られた「人工国家」など長続きするはずがないのだ。

自然界の大法則が「自然淘汰による適者生存」であることを忘れている。

というわけで、21世紀は、弱肉強食を地で行く資本主義の時代。資本主義のフォースここに極めり!

しかし、資本主義のフォースにはダークサイドがある。貧富の差を極限まで拡大する暗黒パワーだ。

資本主義の暗黒パワー!?

■拡大する格差

もし、あなたがタイムマシンの原理を発見したとする。

グズグズしてはいられない、誰かがやるまえに完成させて、世界一の大金持ちになってやる、ムフフ・・・と思った瞬間、資本主義のダークサイドに入り込んでいる。

第二のビル・ゲーツを目指すあなたは、まず、事業計画書を作成する。製品がタイムマシンなら、ターゲットユーザーだの、差別化だの、売り上げ目標だの、クドクド説明する必要はない。必要経費だけ書いておけばいいだろう。無敵のオンリーワンなのだから。

具体的には・・・

タイムマシンの試作費、工場の建設費、材料費、人件費、販売・広告費・・・などなど足し込むと総額100億円になった。ところが、貯金通帳をみると、残高19万8000円(今月の給料)。

そこで、資本家に事業計画書を持ち込んだところ、目がキラリと光り、10億円をポンと出してくれた。これを資本金に会社を設立し、残り90億円は銀行から借りることにした。「タイムマシン」と聞いて融資を渋るマヌケな銀行マンはないから。

その後、苦労の末、タイムマシンは完成し、量産化にも成功した。結果、総資産1000億円の大会社に成長した。

そこで、あなたは、もう十分と考え、会社を精算することにした。工場や事務所を売っぱらい、借入金を返済し、従業員に割り増し退職金を払ってもまだ500億円が残った。素晴らしい!

あなたは、この大金で悠々自適の余生をエンジョイするつもりだった。

ところが・・・

500億円どころか、1円ももらえなかった。すべて出資者(資本家)のフトコロに入ったのである。出資者は10億円投資して500億円のリターン、つまり、50倍の儲け。

おいおい、新手の詐欺か!?

とんでもない。法律で認められた資本家の権利なのだ。

つまり、会社は、勇気をふるって、破産覚悟で創業した社長のものではなく、汗水たらして働いた従業員のものでもなく、おカネを出しただけの資本家のものだったのである。

これで、資本主義の本質が理解していただけただろうか?

生産手段の所有者は誰?みたいなヌルい話ではなく、「世の中カネがすべて」が資本主義の正体なのだ。

もし、これが小説なら、ブチ切れた労働者の一人が、タイムマシンに乗って過去に行き、発明者(あなた)を亡き者にして、あ~スッキリした、ところが、タイムマシン株式会社は存在しないことになり、その労働者は仕事にあぶれ、路上で暮らすことになったとさ、メデタシ、メデタシ(どこが)。

それはさておき、資本主義は、20世紀後半、拝金主義をさらに加速させた。カネがカネを生む金融資本主義、さらに、バクチで稼ぐカジノ資本主義へと。つまり、世の中カネ、カネ、カネ・・・

そして、2014年、フランスの経済学者ピケッティは、ついに、資本主義の暗黒パワーを解明した。誰でもわかるカンタンな不等式で・・・

資産の増加率 > 給与所得の増加率

意味するところは・・・

資産家の富は、労働者の富より速く増える。

つまり・・・

貧富の格差は際限なく拡大する。身もフタもない話ではないか。

ところが・・・

猛威を振るった資本主義に、変化の兆しがある。おー、われら庶民にとって明るい未来が来る?

ビミョー・・・

■イノベーター理論

これまで、コンピュータ業界の技術革新は「ドッグイヤー」と言われてきた。犬は人間の7倍の速さで成長する。つまり、コンピュータ技術は他の分野の技術の7倍の速度で進化するというのだ。

その象徴が米国インテル社のゴードン・ムーアが提唱したムーアの法則だろう。

この法則によれば、ICの集積度は1年半で2倍になるという。集積度が2倍になれば、同じサイズで部品数が2倍になるので、スペックも2倍と考えていい。一方、材料費はほぼ同じなので、価格すえおきで性能が2倍?

夢のような話ではないか!

1年半で2倍ということは・・・自動車なら、1年半で100馬力が200馬力、さらに、その1年半後に400馬力。しかも、価格はすえおき。

おー、3年でカローラがフェラーリになる! マジか?

というわけで、コンピュータ業界の技術革新は「ドッグイヤー=7倍速」ということになっている。

ところが、最近、「ドッグイヤー」は技術革新だけにとどまらない。

たとえば・・・

マイクロソフトのXbox用の「キネクト(Kinect)」。ジェスチャーや音声で操作できるコントローラーだ。キャッチコピーは「カラダまるごとコントローラー」・・・悪くないネーミングだった。

だった??

発売後、最初の60日間で800万台とバカ売れし、その後、売り上げは急減、2年後には全く売れなくなった。製品寿命2年!?

モノにもよるが、一般に製品寿命は数年~10年。それが2年でおしまい!

製品寿命もドッグイヤー?

こうなると、従来のマーケティング理論が通用しない。たとえば、「イノベーター理論」によれば、新製品が出ると、次の順でユーザー層が拡大していく・・・

1.イノベーター(革新派:2.5%)

2.アーリー・アダプター(早期少数派:13.5%)

3.アーリー・マジョリティ(早期多数派:34%)

4.レイト・マジョリティ(後期多数派:34%)

5.ラガード(出遅れ派:16%)

カンタンに言うと・・・

新商品がでると、まず、新しいモノ好きの「イノベーター」が食いつき、その後、好奇心旺盛な少数派のアーリー・アダプターが追随する。つづいて、好奇心のあるアーリー・マジョリティ、好奇心のないレイト・マジョリティと多数派が続く。そして、最後にラガードがしぶしぶ買い始めて、一丁上がり。この間およそ10年。

これなら、ライバル企業はあわてる必要はない。アーリーアダプターが買い始めた時点で、状況を見極めて、参入を決めても遅くはないので。

ところが、キネクトはたった2年ですべてを終えた。のんびり状況を見物していると、参戦前にビジネスは終了する。このような慌ただしいビジネスを「ビッグバン・ディスラプション(ビッグバンのような創造的破壊)」とよんでいる。

そのプロセスは凄まじい・・・

新製品がでると、トライアル・ユーザー(お試しユーザー)が買い始め、その後、バースト・マジョリティ(怒濤の多数派)が一気に押し寄せ、市場を席巻する。

しかも、ビッグバンディスラプションが炸裂した業界は、勢力地図が一変することがある。

たとえば・・・

電話、デジカメ、腕時計、ライトはスマホに、雑誌や書籍はスマホやタブレットやPCに、広告はネット広告に、いずれも外来業種に取って代わられた。昨今、このような「業界一変」は珍しくない。油断もスキもない世界だ。

今後、あらゆるビジネスが「ドッグイヤー=7倍速」になる。それをロケット加速しているのがインターネットだ。あらゆる情報が瞬時に、しかも世界中に伝搬する。結果、勝ち組と負け組があっという間に峻別されるのだ。

いいモノ作ったのに、なんで売れないの?

いいモノが、なんで売れなきゃいけないの?

ネットがからむすべてのビジネスは、無数の原因と結果が入り乱れて7倍速ですすむ。だから、いつ何どき、何が起こるかわからない。早い話、ギャンブルなのだ。

金融業をギャンブルだ、カジノだと批判している場合ではない。今後、すべてのビジネスがギャンブル化、カジノ化する。恐ろしい話だ。

というわけで・・・

資本主義には「カジノ資本主義」の次があったのだ。

1.カネがカネを生むギャンブル

2.7倍速のギャンブル

ギャンブルの2乗で「スーパーカジノ資本主義」の時代!?

ところが、その一方で、ジミな資本主義も台頭しつつある。

もったいないから、遊休資産や空いている時間を有効利用しよう・・・太平洋戦争中の「欲しがりません、勝つまでは」を彷彿させるつつましい資本主義ではないか。

しかも、驚くべきことに、ニッチではなく、マスマーケットで起こっているのだ。

《つづく》

参考文献:
・これからのお金持ちの教科書 加谷珪一 (著) 出版社: CCCメディアハウス
・ビジネスモデル2025 長沼 博之 (著) 出版社: ソシム

by R.B

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