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週刊スモールトーク (第298話) クラブとキャバクラ(2)~貧困女子と風俗~

カテゴリ : 娯楽社会

2015.08.08

クラブとキャバクラ(2)~貧困女子と風俗~

■貧困女子の問題

クラブ、キャバクラのホステスの「美人度」が落ちている・・・

ただし、東京と金沢しか見ていないし、プライベートな「認知バイアス」がかかっているかもしれないので、客観的事実とは言えない。とはいえ、東京&金沢は日本有数の繁華街だし、同じような話を他でも聞くので、ただの主観とも言い切れない。

真相を知りたい!

では、誰に聞けばいいのだろう?

当事者のホステス!

ということで、接待でよく行く金沢・片町のキャバクラに行ってみた(市場調査です!)。ホステスにこの話題をふると、意外な答えが返ってきた。キャバクラの「美人度」が落ちているのは、「貧困女子」が原因だというのだ。

話の内容が内容なので、大きな声では言えないから、小さな声で話そう。

彼女の説によれば・・・

「貧困に苦しむ女子が、稼ぎのいい『風俗(フーゾク)』に流れるので、クラブやキャバクラに女の子が集まらない」

そのため、以前なら落とされた女の子がホステスとして採用され、お店に出ている・・・だから、美人度は落ちてあたりまえ、というのだ。自信たっぷりに言うので、あなたは行かないの?と聞こうとしたが、思いとどまった。キャバクラでセクハラで訴えられたら、たまらない。

もちろん、ホステス1000人に聞きました的な大掛かりな調査ではないので、鵜呑みにはできないが、当事者の意見だし、小耳にはさむ裏情報と一致しているので、ウソではないだろう。

ただし、すべての店の「美人度」が落ちているわけではない。たとえば、くだんのキャバクラは以前とゼンゼン変わらない。

なぜか?

理由ははっきりしている。

ある地域で、ホステスが500人いて、そのうち、50人が美人だったする。そこで、より稼げる「風俗」に流れる現象が始まったら、何が起こるか?

美人ほど風俗に行く。

なぜか?

クラブ・キャバクラは時給制なので、出勤するだけでおカネがもらえる。ところが、風俗は歩合制なので、お客がつかないと一円ももらえない。つまり、風俗は、美人でないと稼げないのである。

一方、風俗はクラブ・キャバクラにくらべ、それなりの覚悟がいる。だから、美人がすべて風俗に流れるわけではない。そこで、美人ホステス50人のうち、20人が風俗に移り、30人がクラブ・キャバクラに残ったとする。

では、この30人の美人ホステスはどこへ行くのか?

時給が高くて、綺麗で、リッチな上客が来る上位店にいく(あたりまえ)。

結果、上位の店から美人が埋まっていく。だから、美人ホステスの総量が減っても、上位のお店の美人は減らないのである。これは、不況になっても、業界トップの企業が影響を受けないと同じ。

ただし・・・

美人ホステスの総数が、10人になったら?

さすがに、上位の店も美人が減るだろう。

では、店はどうするのか?

選択肢は二つある。人数を確保するため採用基準を下げるか、人数が減るのを覚悟して採用基準をキープするか。

ちなみに、くだんのキャバクラは後者。

その証拠もある・・・

最近、店に行くと、待たされることが多いのだ。人気のレストランみたいに、入り口にイスが数個並べてある。「待たされる」が常態化しているのだろう。事実、20分ほど待たされて、店内に案内されたが・・・けっこう、スカスカ。つまり、席は余っているのに、女の子がいないのだ。

というわけで、この店は、売り上げを減らしてでも、「10人中9人が美人」を貫いている。

これには、キャバクラ特有の事情もからんでいる。クラブなら、トークの要素もあるが、キャバクラは若くて美人がウリ。なので、サービスの品質を保つには、これしかない。ただし、現実は、基準を下げて人数を確保する店がほとんどだ。

■キャバ嬢の収入

ところで・・・

なぜ、クラブ・キャバクラから風俗に流れるのか?

もちろん、おカネ!

そもそも、クラブやキャバクラで働く女の子は、金銭的トラブルや家庭の事情を抱えていることが多い。だから、昼職だけではやっていけないのだ。

ところが・・・

最近、特に経済的な問題もなく、昼職も持っているのに、生活に困窮する女子が増えている。これが、「貧困女子」の問題だ。

「貧困女子」?

厳密な定義はないが、ネットでググると・・・

一人暮らしで、年収が手取りで「125万円」以下の女性。ほとんど最低賃金だが、独身女性の1/3が該当するというから驚きだ。

独身女性の三人に一人が貧困女子?

これで驚いてはいけない。

独身男性の四人に一人が貧困男子だというのだ。

貧困女子、貧困男子があるなら、貧困中年、貧困老人もあるのでは・・・ネットで調べると、案の定、「下流老人」という言葉が出てきた。もちろん、意味するところは貧困老人。退職した後、生活に窮する年金生活者をいうらしい。僕らが行く着く未来は「老後大崩壊」の世界なのかもしれない。

それにしても、今どき、正規雇用なら年収125万円はありえない。初任給で年収200万円は超えるから。つまり、貧困女子、貧困男子のほとんどが非正規雇用なのだ。事実、働く女性の2人に1人が非正規雇用だという(58%)。女性は、「結婚・出産→退職」という社会通念があり、正社員になりにくいわけだ。

ところで、年収「125万円」はどんな生活なのか?

125万円÷12ヶ月=10万4000円/月

家賃を払うと、数万円しか残らない。そこから、電気・水道・ガス、携帯・スマホの通信費を引くと、残りは2~3万円。「1日の食費=1000円」を確保するのも難しい。菓子パンか自炊か、それとも、ファースティングダイエット

「食」がこれなら、「衣」は推して知るべし。「衣服=防寒具」で、お洒落など論外。優雅な遊びなんて夢のまた夢、食べていくだけで精一杯。

そこで、彼女たちは、アルバイトをいくつも掛け持ちする。コンビニ、ファミレス・・・一円でも高い時給を求めて・・・その行き着く場所が「夜の店」なのだ。一般の仕事は時給700円~1000円だが、クラブやキャバクラなら、時給2000~4000円は稼げる。

■キャバ嬢のリスク

昼働いて、夜も働く?

シンドクないですか?

シンドイです!

夜職オンリーなら、夜7時に出勤して、夜中まで働いても、朝から夕方まで休める。ところが、「夜職+昼職」なら、一日中働きづめで、睡眠時間は3~5時間。ヘタをすると心停止ですよ。

しかも、それに見合った収入が得られるかというと、ビミョー。

キャバクラで働く女の子は、ほとんどが18歳~25歳。なので、昼職の収入は、派遣社員で月額15万円、正社員でも月額20万円ぐらい。

では、夜職の収入は?

昼職と掛け持ちなら、夜職は週に2~3回が限界なので、月額10万円前後。

というわけで、夜職と昼職あわせて、月額25万~30万円。多少ゆとりはあるが、贅沢はできない。これに、金銭的トラブル、養う家族がいたら、ゼンゼン足りない。働く時間はもう残っていないのだから、時給を上げるしかない。つまり、選択肢は一つ・・・風俗。これが現実なのだ。

一方、クラブやキャバクラは時給は高いが、リスクもある。

ある美人キャバ嬢から聞いた話・・・

客が本気になってしまい、プロポーズされた(40代の独身男性)。断ると、Line、facebookで名前を調べて、

「おまえのことは何でも知ってるぞ!」

と脅されたという。

彼女の友達のホステスはもっと怖い目にあった。客に交際を迫られ、断ったところ、彼女が帰宅すると、家の前に無言立っている・・・20代の女性には堪えるだろう。

店の客筋が悪いのでは?

そこで・・・

金沢・片町の頂点に立つ高級キャバクラのホステス5人に聞きました(調査のため2時間もいた!)。

その証言によると・・・

客のほとんどが、「プライベートのデート」を誘ってくるという。お店ではゆっくりクドけないので、店外に誘い出し、ねちねちクドく。誘いにのらないと、その子の指名を外し、別の女の子を指名するというから、徹底している。

ところが、あるホステスによれば・・・

「ほとんどのお客さんがクドくのではなく、100%がクドく」

100%!?

彼女が言うには、

「わたし、33歳なんです。それで、足元見てガンガン来るんですよ。わたしの顔がエロいとか、テキトーな理由つけて。わたしの顔、どこがエロいですか!」

わかりません・・・

一見、華やかなホステスもキャバクラという戦場で闘っている・・・ちょっと、感動した。

つまり・・・

キャバクラは、女の子との会話を楽しむ場ではなく、女の子をクドく場になっているのだ。あげく、サワる、グチる、下ネタラッシュ・・・これをさばくには、相当な接客力が必要だ。でも、それ以前に、

店、間違えていません?

そのくせ、日本人はクラブ・キャバクラに倒錯した偏見をもっている(偏見を持つことではなく、それが倒錯していることが問題)。

■日テレ内定取り消し事件

その象徴が、「日テレ内定取り消し事件」だろう。

2014年、女子大生だった笹崎里菜は、日本テレビの内定を受けた。その後、彼女は銀座のクラブでアルバイトをしていたことが気になり、日本テレビに確認した。すると、担当者は大丈夫、と回答したという。

ところが、その後、状況は一変する。

日本テレビ側が、アナウンサーには高度の「清廉性」が求められる、傷がついたアナウンサーを使える番組はないという理由で、内定辞退を迫ったという(事実上の内定取り消し)。

しかし、彼女はナットクしなかった。内定取り消しを不当として、日本テレビを訴えたのである。2014年12月26日、東京地裁で和解勧告があり、2015年1月8日、和解が成立した。彼女は、日本テレビに正式に採用されたのである。

この事件で、日本の世論は真っ二つに分かれた。「内定取り消し」の擁護派と反対派である。

まず、擁護派・・・

男にはべって、酒をつぎ、歓心を買うことで金儲けするのは汚らわしい。そんな人間を「清廉&インテリ」の女子アナにするのはけしからん、というわけだ。

でも・・・

意味のわからない「清廉」はさておき、女子アナが、頭が良い、物知りが求められているとは思えない。ロクに言葉も知らない、おバカキャラのような女子アナもたくさんいるから(もちろん聡明な女子アナもいる)。

では、女子アナは何を基準に選ばれているのだ?

若くて美人で、魅惑的!

実際、可愛らしく着飾って、ミニスカまではいているではないか。テレビの画面の向こうから、男のオスを誘っているとしか思えない。

それで、女子アナに「高度の清廉性」を求めるって?

男性諸氏の、人前には出せない劣情を誘っておきながら、それはないだろう。

一方・・・

これに真っ向反対するのが、「内定取り消し」反対派だ。

クラブでホステスをしていたことを理由に、内定を取り消すのはおかしい。そもそも、ホステスの差別じゃないか!

しかし・・・

どっちも、ピント外れだと思う。

女子アナは、一方的にしゃべるだけでなく、テレビの出演者とのやりとりもある。つまり、一種の接客業なのだ。そして、クラブのホステスは究極の接客業!

何が言いたいのか?

銀座のホステスだからこそ、採用するべきなのである!

柔道や剣道の経験者が、優先して警察官に採用されるのと同じだ。

クラブやキャバクラのホステスは、高度の接客力が要求される。なぜなら、接客力が収入に直結しているから。たとえば、指名や同伴がとれる(お客を呼べる)ホステスほど、時給が高い。ちなみに、キャバ嬢の時給は2000円~4000円で、2倍の開きがある。実力主義どころか、完全無欠の「実績主義」だ。

だから・・・

ホステスは、お客の歓心を買ってナンボ。必要なのは、容貌、トーク、そして、フェロモン。ところが、度を超すとストーカーの犠牲になる。だから、空手の「寸止め」のテクニックが必要なのだ。体を張った、これ以上、苛酷な接客業はないだろう。

■ホステスのライバル

ここで、面白いエピソード・・・

我が家の自動車販売を独占しているトヨタのセールスマンがいる。彼は、販売店のトップセールスマンで、(地方)新聞でも紹介されたほどだ。その栄えある功績により、今は、役員のゴルフの付き人までさせられている(本人は嫌がっているが)。

じつは、そんな彼に大の苦手がいる。クラブ、キャバクラのホステスだ。彼が言うには、

「僕もホステスも接客業、だから、ホステスの接客のあざとさが見えてイヤになる。だから、キャバクラには行きたくないんですよ」

同業者にしか見えない接客の「ダークサイド(暗黒面)」があるのだろう。

一方、ホステスに対する偏見も根強い。

昼職オンリーの女性から聞いた話・・・

「クラブに行く男の人って、本当にバカだと思う。疑似恋愛に大枚はたいているんだから。向こうは商売なのに。そんなことにおカネを使うなら、素人の女の子をアタックすればいいのに」

そして、彼女はこんな体験談を付け加えた。

「知り合いの男の人で、キャバクラの女の子に50万円渡してるの。おばちゃんが病気だから貸してくれって言われて。ほんと、バカじゃないかと思う。それ以外はまともなのに、そこだけバカ。一体、何考えてんだろう?」

今、仕事で、ビッグデータ&人工知能のビジネスをリサーチしているが、そのからみで、某大手外資系コンピュータメーカーの営業マンからこんな相談をうけた。

「キャバ嬢から来るメールが、営業メールかマジメールか判定するプログラム作れないですか?」

天を仰いで、考えるフリをしていると、彼はこうたたみかけた。

「あと、キャバクラでモテる奥義とかないですかね?」

やっぱり、男ってバカかも・・・

《つづく》

by R.B

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