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週刊スモールトーク (第292話) バブル崩壊Ⅱ~発生の原因~

カテゴリ : 社会経済

2015.06.20

バブル崩壊Ⅱ~発生の原因~

■平成バブルの正体

平成バブルとは、1986年、地球上に出現した日本版・エデンの園である。おカネがおカネを生む摩訶不思議な世界。あぶく銭がムダな消費と豪奢を許し、かぶき者と婆娑羅がバッコする異形の時空 ・・・ 人々はヘドニズム(享楽主義)に酔い痴れた。

ところが、4年後、楽園は一変した。天の鉄槌が下されたのである。旧約聖書に登場する背徳の町ソドムとゴモラのように。

では、平成バブルは、なぜ起こったのか?

株・不動産が暴騰し、資産バブルが起こったから。

ではなぜ、株・不動産が暴騰したのか?

みんなが、株・不動産は上がり続けると信じて、買いまくったから。

では、バブルは、なぜハジケたのか?

いつかは下がると気づいた者がいて、売りにまわったから。それが売り売りをよんで、歯車が逆回転したのである。

つまり ・・・

バブルは、「人間の想念」の産物であって、理論から生まれたものではない。だからこそ、バブル=泡沫なのである。

・・・・

これでは身もフタもない。そこで、バブル発生・崩壊の原因のつじつま合わせをしよう。

まず、バブルのプロセスを「イベント」でつづる。そうすれば、バブルが再来したとき、イベントを目安に「今どこか?」がわかる。つまり、株・不動産の「売り時」もわかるというわけだ(投資していればの話だが)。

はじめに、バブルの発生イベントから。

定説によれば ・・・

平成バブルの起点は、1985年9月22日の「プラザ合意」とされている。

プラザ合意?

1980年代、アメリカ合衆国は、双子の赤字で苦しんでいた。「双子の赤字」とは、貿易赤字と財政赤字である。「貿易収支=輸出額-輸入額」は、1年ごとに集計され、それが赤字なら貿易赤字。その累積が財政赤字になるわけだ。つまり、諸悪の根源は貿易赤字にある。

アメリカにとって、「対日」貿易赤字は最悪だった。輸入金額が輸出金額を凌駕していたから。というのも、日本製品はモノが良くて安いのでアメリカでバカ売れ、一方、アメリカ製品で買いたいものは ・・・ ない。

それなら、アメリカ企業が努力して、安くて良い物を作ればいいのだが、時のレーガン政権はズルをした。為替相場を操作して、円高・ドル安に誘導したのである。しかも、アメリカ一国では効果が薄いので、先進5ヶ国にも協力させた。先進5ヶ国とは、アメリカ合衆国、イギリス、西ドイツ、フランス、日本である。

では、実際にどうやるのか?

目的は「円高・ドル安」だから、円を買って、ドルを売る。買われた通貨は高く、売られた通貨は安くなるから。

「たくさん買われる → 需要が大きい → 需要が大きいものほど価値が高い」

と考えると分かりやすい。

で、プラザ合意の効果は?

絶大だった。

わずか1年で、1ドル240円から1ドル150円台へ、円は「1.6倍」も高くなったのである。

それで?

日本人にとって ・・・ 1ドルのアメリカ製品が、240円から150円に下がるので、アメリカ製品は40%引き。これで売れなかったら、恥。

アメリカ人にとって ・・・ 240円の日本製品が、1ドルから1.6ドルに上がるので、日本製品は60%値上げ。これで売れたら、ウソ。

つまり、アメリカにとって、

「輸出が増えて、輸入が減る → 貿易赤字が減る → 財政赤字が減る」

メデタシ、メデタシ。

ところが、日本は全然めでたくない。

輸出が減って、輸入が増えて、貿易収支は悪化するのだから。ところが、この時、アメリからの輸入は大して増えなかった。安くても、買う物がないから(恥!)。

一方、日本の輸出企業は大損害をこうむった。

「1ドル240円 → 1ドル150円」なので、同じ「240円」を得るには「1.6ドル」に値上げするしかない。フツーに考えれば売れないだろう。とはいえ、1ドルに据え置けば、手取りが「240円 → 150円」に激減する。どっちにしろ、輸出企業は大損だ。

しかも ・・・

当時の日本は輸出立国だったからたまらない。こうして、日本は深刻な「円高不況」に陥ったのである。その後も、円高はジリジリ進んだ。2003年に「1ドル110円」、2012年には「1ドル70円台」に突入した。

円が「3倍」に値上がり!?

シャレにならない。

「3倍」に値上げするか、「1/3」の売上で我慢するか ・・・ 企業努力の次元を超えているのは明らかだ。輸出産業は凋落して、あたりまえ。事実、1980年代、世界を席巻した日本の家電製品と半導体メモリは今は見る影もない。

ところが ・・・

日本凋落の原因は、韓国サムスンの企業努力、日本企業の怠慢にあると主張する評論家がいる。3倍というメチャクチャの円高でボコボコされて、それでも全力疾走しない奴が悪い、というわけだ。卑屈というか、自虐的というか、反省好きというか ・・・ お前がやってみろ、ですね。

でも ・・・

本当のところは、したり顔で、人と違うことを言ってみたかっただけかも。どっちにしろ、ロクなモンじゃない。

さらに ・・・

プラザ合意は、日本をおとしめるための陰謀だったという説もある。日本人の陰謀好きは重々承知だが、これも笑える。円高で何が起こるか、誰が得して、誰が損するか、丸わかりなのだから、陰謀もヘッタクレもない。

というわけで、プラザ合意のせいで、日本の輸出産業は壊滅的ダメージを受けた。あわてた日本政府は、「ドル売り」から「ドル買い」介入に切り替えたが、効果はサッパリ。それはそうだろう、一国の介入ではどうしようもない。

ところが、事はそれですまなかった。日本の財政が悪化したのである。

というのは ・・・

「ドル買い」介入は、まず、国債を発行して(国の借金)、円を調達し、ドルを買う。ところが、円高・ドル安がドンドン進むので、ドルの価値もドンドン下がる。

つまり、目減りする一方の資産を、借金こいて、買い続けているわけだ。

そんなバカがどこにいる?

ここにいますけど ・・・

というわけで、日本の財政は悪化するばかりだった。

ではなぜ、日本はこんなおバカをやったのか。そもそも、しょっぱなのプラザ合意からしておかしい。円高・ドル安になれば、貿易立国の日本は大損なのだから。

理由はカンタン ・・・ 日本は「アメリカのポチ」だから。

「ポチ」は飼い犬の代名詞なので、意味するところは ・・・ 言えない。

でも、卑屈になる必要はない。日本がアメリカのポチになるのは、お国のため、国民のため。というのも、日本は、アメリカの核で守ってもらわないとパンツ一丁、どころか、丸裸なのだ。だから、中国やソ連から核ミサイルで脅されたくなかったら、ポチになるしかない。

一方、日本と真逆なのが中国だ。21世紀以降、輸出大国にのしあがり、かつての日本と同じ立ち位置にある。ところが、中国はアメリカの言いなりになっていない。それどころか、楯突いている。輸出産業を守るため、「元安・ドル高」介入を続けているのだ。名指しで、為替操作国と言われても屁のカッパ。

なぜか?

中国は日本のバブル発生の根本原因を「プラザ合意=円高・ドル安」と見抜いているから。だから、元をドルにリンクさせ、元高・ドル安にならないよう徹底抗戦しているわけだ。

もっとも、中国はアメリカのポチになる必要がない。中国は核保有国なので、自分は自分で守れるから。つまり、核を保有すれば自立でき、核を持たないなら、哀れなポチになるしかないのだ。

■バブルが発生した理由

さて、ドル買い介入で失敗した日本政府は、その後、どうしたのか?

円高不況を克服するために、強力な景気対策を実施した。ところが、想定外の偶然が重なり、平成バブルの原因をつくることになる。

このとき、政府が実施した景気対策は金融緩和と公共投資で、定番中の定番。

まず金融緩和だが、世の中におカネをバラまいて、景気を刺激すること。

不況になると、人は物を買わなくなるので、メーカーは生産量を減らす。結果、設備投資も減って、設備メーカーの売り上げも落ちる。一般企業も設備企業も儲からないので、サラリーマンの所得も増えず、ますます、物が売れなくなる。つまり、負のスパイラル。

そこで、金融緩和の出番だ。

具体的には、公定歩合を引き下げるのである。

公定歩合とは、中央銀行(日銀)が、民間の金融機関におカネを貸し出す際の金利。公定歩合が下がると、金融機関が企業に貸し出す金利も下がるので、おカネが借りやすくなる。すると、企業の手持ちの資金が増えるので、設備投資や給料のベースアップにつながる。企業も個人もフトコロ具合が良くなるので、景気も上向く(はず)。

このように、日銀主導で、世の中のおカネを増やすことを金融緩和という。

ところで、効果はあった?

あんまり。

というのは ・・・

円高で、企業は工場を海外に移転していたので、国内の設備投資は増えなかったのだ。さらに、この頃、大手企業は資金調達を、銀行からの借り入れから、直接金融にシフトしていた。具体的には、自社株を発行したり、社債を発行して、資金を調達するのである。

その結果、銀行など金融機関に莫大な資金がダブついた。企業が借りてくれないなら、他に投資するしかない。おりしも、金融自由化や国際化で、金融機関が投資しやすい環境になっていた。そこで、金融機関は株、債券などの投資に手を染めたのである。一般企業も、本業よりも、投資に精を出した。ついでに、個人も右へならえ。こうして、働かずして儲ける「財テク」が一大ブームになったのである。

結果 ・・・

株、債券、投資信託などの金融商品、さらに、不動産に大量の資金が流入した。資産の総量が同じなら、2倍の資金が流入すれば、資産価格は2倍になる。これが、バブルの正体なのだ。つまり、景気が良いからバブルが発生するわけではない。金余りがバブルを生むのである。

とはいえ、額に汗して稼ごうが、財テクで稼ごうが、おカネが増えれば、財布のヒモはゆるくなる。こうして、消費が増え始め、実体経済も好転し始めた。

これを加速したのが、原油価格の急落だった。

1985年、サウジアラビアが、原子力発電の普及に危機感を覚え、生産調整をやめたのである。

これまでは、原油価格が下がると、産油国は生産を減らし、「需要 > 供給」に誘導し、原油価格を引き上げていた。ところが、生産調整をやめたので、原油価格はジリジリ値を下げた。その結果、1980年2月に「1バレル 42.8ドル」だった原油価格は、1985年に「9.9ドル」まで急落した。これは、原油を輸入に頼る日本にとって大きなアドバンテージになった。エネルギーコストと原材料費が安くつくから。

さらに ・・・

この頃、公定歩合は、プラザ合意時点の「5%」から「2.5%」の史上最低金利にまで下がっていた。そのため、資金が調達しやすくなり(特に中小企業)、景気高揚の圧力になった。さらに、内需拡大、市場開放、金融自由化を柱とする前川リポートが提出され、10年間で430兆円の公共投資が発表された。

これだけ条件がそろえば、景気は好転する。実際、1987年の春から、景気は回復に向かった。そこで、日銀は、公定歩合を上げる(金融引き締め)準備を始めた。金利を上げて、おカネを借りにくくし、景気の過熱をさますのである。放っておくと、「カネ >> モノ」が進み、インフレになるから。

ところが、そんな矢先 ・・・

1987年10月19日、ニューヨーク株式市場で大暴落が起こった(ブラックマンデー)。すわ、1929年の世界大恐慌かと、世界は固唾を呑んだが、大事には至らなかった。ところが、これで、日銀の公定歩合引き上げは見送られた。

なぜか?

日本が金利を引き上げれば、金利の高い円に、アメリカの資金が大量に流れ込む。そうなると、株価暴落で金融収縮を起こしているアメリカ経済にトドメをさすことに ・・・ そんな大それたこと、ポチにはできません!

こうして、利上げは、1989年の5月まで延期された。つまり、公定歩合は、2年間、最低金利の2.5%で放置されたのである。

世の中におカネがダブつくのはあたりまえ。

金利が史上最低で借金しても負担にならないし、担保さえあれば、銀行はいくらでもおカネを貸してくれる。バブルで不動産が高騰し、担保価値も上がる一方だから。つまり、

「どうか、おカネを借りてください」

なのである。

こうして、企業の資金は潤沢になったが、本業に資金需要があるわけではない。景気が完全に回復していないので、設備投資の必要がないから。そこで、資金のほとんどが財テクに回ったのである。結果、資産と名のつくものは軒並み暴騰した。

こうして、バブルが発生したのである。

ここで、バブル発生の原因を「イベント視点」で整理すると、
1.円高・ドル安(プラザ合意)で、円高不況が発生。
2.金融緩和(金利を下げる)が功を奏して、景気が好転。
3.金融引き締め(金利を上げる)に入ろうとした矢先、ブラックマンデー。
4.金融引き締め延期で、カネ余りがおこる。
5.余ったカネが資産に流入し、資産が暴騰する。
6.バブル発生。

つまり、バブルとは資産が適正価格から乖離して暴騰することなのである。

それ ・・・ 大問題なのでは?

モノによる。

株、ゴルフの会員権、絵画は転売が目的なので、どれだけ値上がりしようが、痛い目にあうのは最後に引いた者だけ。つまり、ババ抜き。だから、大勢に影響はない。

ところが ・・・

土地はそうはいかない。適正価格を超えて暴騰すると、本来の目的で使用できなくなる。たとえば、取得価格、固定資産税が高過ぎると、住むにはもったいないし、アイスクリームのような単価の低い商売は成り立たない。

であれば ・・・ 土地は売るのが一番。というわけで、土地の転売が横行したのである。

当時、土地を転売する輩(やから)を「地上げ屋」とよんだ。彼らは、都心の住宅密集地を中心に買い占め、更地にして転売するのである。これで、購入価格の数倍から数十倍の値で売れた。適正価格もなにもあったものではない。このような悪質な土地の転売を「土地転がし」とよんだ。

当然、国民から非難の声があった。地上げ屋だけではなく、無為無策の政府に対して。そこで、政府は、バブル退治にエースを登場させた。「平成の鬼平」こと、日銀の三重野総裁である。

■バブルが崩壊した理由

1989年12月、三重野康が第26代日銀総裁に就任した。彼は、まず、金融引き締めを行った。金利を上げて、おカネを借りにくくし、市中のおカネの量(通貨供給量)を減らすのである。そうすれば、「カネ < モノ」になり、インフレは沈静化し、狂乱物価もおさまる。

さらに、1990年3月、土地の転売を防ぐため、不動産業融資の総量規制が通達された。これが効果絶大だった。土地を転売しようにも、資金が調達できないのだから。結果、高値で買う者がいなくなった。

とはいえ、土地をそのまま持っていても、高い税金をとられるだけ。そこで、値を下げて売る者が現れた。こうして、売りが売りをよんで、地価は急落、「土地神話」は崩壊したのである。

それしても、なぜ、「神話」がこうもカンタンに崩壊したのか?

じつは、「神話」は伝聞や憶測で作られた「思い込み」に過ぎない。合理的な根拠があるわけではないのだ。だから、ウソと認知された瞬間、崩壊するのである。

とはいえ、「土地神話」が生まれたのには、それなりの根拠があった。

まず、人口が増えれば、土地の価格は上がる。土地には限りがあるので、「需要 > 供給」になるから。そして、戦後、日本の人口は一貫して増え続けた。

さらに、生産年齢(15歳~64歳の労働人口)が、それ以外の非労働人口の2倍以上であれば、経済は発展するといわれる。バブル期はまさにこれだった。だから、土地が上がるのは当然だったのである。

ところが、1999年に労働人口は減少に転じ、2008年には総人口までが減少に転じた。土地の需要が減って、供給が変わらないのだから、「需要 < 供給」で地価が下がるのはあたりまえ。

つまり、土地神話の崩壊は、理論的にも説明できるのだ。

ただし、バブル崩壊の先陣を切ったのは土地ではない。株式市場である。このときの株価をみてみよう↓

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土地急落の直接原因となった不動産業融資の総量規制は、1990年2月。ところが、その3ヶ月前に、株価の急落が始まっている。株価が地価に先行しているわけだ。つまり、株価は景気を先読みする力があるのだ。

こうして、株、不動産、ゴルフの会員権、絵画、あらゆる資産が暴落し、バブルは崩壊した。その後、出口の見えない不況が20年以上続く。

これが「失われた20年」なのである。

by R.B

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