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週刊スモールトーク (第230話) 世界は作り物であるⅠ~夢製造機~

カテゴリ : 思想科学

2013.11.03

世界は作り物であるⅠ~夢製造機~

■神々の道具

昔、アップルの初代Macが登場し、パソコンがまだ輝いていた頃、雑誌でこんな一文を見つけた。

「カネ儲けのためにプログラムを書く”下品”な連中」

さしずめ、ビル・ゲイツとマイクロソフトは、この「下品な連中」の一番の頭目だろう。神々の力を秘めた「プログラム」を”下品”なカネ儲けの道具に堕落させたのだから。

なんてことを言うと、あちこちから非難の声があがりそうだ。

プログラミングで生計を立てているプログラマーからは、
「一体、何様のつもりだ!」

プログラミングと何の関係もない人たちからは、
「プログラムだけが上等だと思っているんじゃないか!」

でも、プログラムは上等とか下等とか、そんな”下品”な尺度で測れるものではないのだ。プログラムは行き着くところは「シミュレーション」、つまり「天地創造の工作機械」なのだから。

100年後、あるいは数百年後、脳科学とコンピュータテクノロジーが密結合し、究極の遊びが出現するだろう。仮想世界を五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)で体験する夢のエンターテインメントだ。毎晩見る「夢」を格段にグレードアップした「人工夢の世界」。もちろん、わざわざ「眠る」必要はない。覚醒時に、いつでも体験できるのだ。

これを実現するのが「夢製造機」!とネーミングはカンタンなのだが、作るのはマジで難しい。まず、脳と夢の科学的な解明は欠かせない。では、医学(脳)と心理学(夢)はどこまで進んでいるのだろう?

じつは ・・・

心理学は疑似科学みたいなものだし、医学は脳の「ハード面」しか扱えない。つまり、脳の「ソフト面(例えば夢)」を厳密に扱う科学は存在しないのだ。原理・法則が分からない以上、どんなハイスペックなコンピュータを使っても、「シミュレーション」のしようがない。

とはいえ、実現するのは100年単位の未来なので、詳細は目をつぶって、グランドデザインにフォーカスすることにしよう。

■夢製造機

「夢製造機」は大きく3つのコンポーネントからなる。脳と夢製造機をつなぐ「脳インターフェイス」、仮想世界を生成する「世界生成ユニット」、仮想世界でアバターを設定する「アバター生成ユニット」である。以下、詳しくみていこう。

【1】 脳インターフェイス

 「世界生成ユニット」が生成した世界を、人間の視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の情報に変換し、さらに、脳の神経パルスに変換し、各感覚に対応する脳の部位に流す(夢製造機 → 脳)。

それに対する脳のリアクション「神経パルス」を電気信号(ひょっとして光信号かな)に変換し、「世界生成ユニット」に送信する(脳 → 夢製造機)。

以上、脳と夢製造機が交信しながら、リアルタイムで仮想世界を生成していく。ただし、仮想世界のすべてのデータは夢製造機で保持し、脳は一時的な記憶データー以外保持しない。

【2】 世界生成ユニット

 夢製造機が創り出す仮想世界には、現実世界同様、自然・人間・文明が存在する。これらすべての要素は物理法則に従って変化し、さらに、相互作用によって新しい要素を生み出していく。この仮想世界の生成と更新を担当するのが世界生成ユニットだ。

つまり、夢製造機は現実世界をシミュレーションしているのである。

【3】 アバター設定ユニット

 ユーザー(体験者)は、仮想世界の住人の意識を奪い、憑依する。このアバター(化身)によってユーザーは仮想世界を体験できる。ただし、同時に憑依できるのは一人だけ。複数の意識が混濁すると頭がおかしくなるから。

でも ・・・

一人遊びに飽きたら、複数の住人に憑依し、混濁した意識を楽しむのも面白いかも。ただし、精神に障害をきたすか、心臓発作を起こすかもしれないので、TVゲーム同様、プレイ時間を決めておいたほうがいいだろう。

■仮想世界と現実世界

つぎに、夢製造機の使用法について。

ベッドに横たわり、脳インターフェイスを頭に装着する。つぎに、プレビュー映像をみながら、自分が体験したい世界を選ぶ。地球史の過去・現在・未来、ファンタジー、SF、どんな世界も思いのまま。原理上、
「天地創造=プログラミング」
なので何でも造れるわけだ。

ここでコワイ予言を一つ。

その昔、コンピュータといえば大型コンピュータで、大組織の一部の人しか使えなかった。ところがその後、パソコンが登場し、コンピューターは一人一台の時代になった。それと同じように、夢製造機も最終的には一人一台の時代が来る。

その時、ユーザーは夢製造機を自らプログラムするようになるだろう。

その結果 ・・・

人間は自分の人生を自ら創り出すようになる。つまり、自分の人生を選べるようになるわけだ。これは人類史上最大の革命になるだろう。

なぜなら ・・・

現実世界と仮想世界(現在は夢)の価値が逆転するから。思い通りになる仮想世界が人間の主世界になり、現実世界は生命維持の役割しか果たさなくなる。人生の主客転倒が起こるわけだ。

話を夢製造機の使用方法にもどそう。

体験したい世界を選んだら、あとは「Start」ボタンをおすだけ ・・・ おっとその前に、終了の設定をお忘れなく。でないと、仮想世界を永遠に彷徨(さまよ)うことになる。終了のタイミングはプレイ時間か、特定のイベントで設定するのがいいだろう。

但し、刺激が強いので、Max時間は決めておいたほうがいい。長時間やり込むと、自律神経のバランスが崩れるから。遊びで、自律神経失調症じゃ、シャレにならない。

終了条件を設定したら、いよいよ、「Start」ボタンON ・・・ その瞬間、視覚から嗅覚にいたるすべての感覚は、夢製造機に乗っ取られる。結果、ユーザーの五感はすべて現実世界から仮想世界へワープする。

しかし、ここで問題が一つ。

仮想世界に入った時、この世界をユーザーにどう認識させるか?

つまり ・・・

「偽りの世界」と自覚させるのか、それとも、「現実」だと思い込ませるのか?

よりリアルに楽しむなら後者だろう。しかし、その場合、ユーザーは仮想世界と現実世界の区別がつかなくなる

具体的に説明しよう。

まずは、体験中 ・・・ 仮想世界も現実世界も、本人が「現実」と思い込んでいる以上、完全に等価である。

つぎに、体験終了後 ・・・ 仮想世界の場合は、その一つ上位の世界(現実世界)にもどり、これが仮想世界だったと気づく。一方、現実世界の場合は、死んだ後、魂がその一つの上位の世界にもどり、生まれ変わりの世界だったと気づく。

生まれ変わり?

「生まれ変わり」は科学的に証明されたわけではない。そこで俗説で説明すると ・・・

我々は過去の記憶を消し去り、現実世界(遊び場)に生まれてくる。そして、波瀾万丈の人生を体験し、この世を去る(死ぬ)。その瞬間、魂は肉体から抜けだし、現実世界から、元の世界に回帰する。そこで、現実世界は作り物だったと気付くわけだ。そして、再び記憶を消し、生まれ変わり、別の人生を体験する。これを「生まれ変わり」、または「輪廻転生(りんねてんしょう)」とよんでいる。

「生まれ変わり(輪廻転生)」は五感で探知できないし、科学的に証明されたわけではない。とはいえ、「存在しない」ことが証明されたわけでもない。だから、生まれ変わりを頭ごなしに否定するのはフェアではない。じつは、この手の過ちは歴史上枚挙にいとまがないのだ。

たとえば、電磁波(電波)。

19世紀、偉大な科学者マクスウェルは、自ら考案した「マクスウェルの方程式」から、電磁波の存在を予言した。ところが、見ることも感じることもできない。そのため、誰も信じようとはしなかった(科学者でさえ)。ところが、今では「電磁波」の存在を疑う者はいない。電磁波を否定すれば、TVも無線機もGPSもスマホも全部否定することになるから。

だから ・・・

見えないから、聞こえないから、証明できないからといって、全否定するのは間違っている。それに、「生まれ変わり」を前提に考えると、つじつまが合うことが多い。

というわけで、完全に信じているわけではないが、「生まれ変わり」を前提とすれば ・・・

仮想世界も現実世界も、体験終了後は、一つ上位の世界に戻り、それまでが「偽りの世界」だったと気づく。つまり、体験者視点では(主観的にみれば)、
現実世界=仮想世界

■世界を構成する物質

では、体験者主観で「等価」なら、客観的にみても、
「現実世界=仮想世界」
と言い切れるだろうか?

たとえば、飲食店に陳列されている「食品サンプル」。美味そうに見えるが、誰も見ていないからと盗み食いする人はいないだろう。見た目は本物だが、中味は別物だから。

これを、現実世界と仮想世界にあてはめると、どうなるか?

イメージしやすいよう、仮想世界をTVゲームにおきかえてみよう。たとえば、2014年にリリースされるプレステ4は素晴らしい!サンプル映像を見る限り、実写と見まごうばかりだ。極度の没入感に浸れば、現実と錯覚するかもしれない。

でも、食品サンプル同様、見た目は同じでも「中身」が違うのでは?

現実世界の物は「実物」だが、仮想世界の物はコンピュータの「データ」に過ぎない。つまり、「作り物」。だから、現実世界と仮想世界は別物というわけだ。

でも ・・・ 本当にそうだろうか?

そもそも、「実物」って何?

固くて重くて確かな物?

では、「物」について考えてみよう。

この世界の物質はすべて「原子」でできている。さらに、原子を分解すると原子核と電子になり、原子核を分解すると陽子と中性子になる。そして、この分解作業の最後に行き着くのが「素粒子」だ。

ところが、この素粒子がくせもので、「物質」でもあり「波」でもあるという。黒でもあり白でもある、固体でもあり気体でもある、動物でもあり植物でもある、と言っているようなもので、まるで幽霊ではないか。

で、これのどこが「実物」なのだ?

それはそうだが、コンピュータのデータよりはよっぽどマシ!

でも ・・・

本当にそうだろうか?

確かに、TVゲームの仮想世界は「デジタルデータ」の集合体にすぎない。とはいえ、メモリ上に「電子」という実体が存在するのも事実。

では、原子と電子で何が違うのだ?

・・・・・・

結局、現実世界と仮想世界は、原子と電子の差があるだけで、作り物であることに変わりはない。であれば、それ(現実世界)を創った創造主がいる。創造主がいる以上、それが住む上位の世界もあるはずだ。

というわけで、本物にみえる「現実世界」も、一つ上位の世界で造られたシミュレーション「作り物」にすぎない。実際、「宇宙は神の一撃で始まった」と主張する著名な学者もいるのだ。

さて、話がここまできたら、とっておきの話をしなくては ・・・

古代ギリシャの哲学者プラトンのイデア界である。プラトン哲学は、キリスト教の異端「グノーシス主義」や西洋神秘学「ヘルメス学」に影響を与え、怪しいサブカルの匂いもするのだが、発想がユニークで面白い。そこで、その一部を紹介しよう ・・・

プラトンは、物質界の上にイデア界があると考えた。イデアとは永遠不滅の真実で、究極まで抽象化されていて、実体(実物)をもたない。そのため、劣化することも朽ち果てることもないという。我々が住む物質界はイデア界をひな形に模造したもの、つまり、「作り物」というわけだ。

大昔に、こんなことを考えていたとは驚きだ。きっとプラトンは天才だったのだろう。なにしろ、プラトンが考えた「世界モデル」は、2000年後、コンピュータで仮想世界を創るプログラマーにとって重要な設計図なのだから。

話が散乱したので、ここで一度整理しよう。

「神は細部に宿る」を真に受けて、物質をどんどん分解していくと ・・・

現実世界は「素粒子」に、仮想世界は「電子」に行き着く。どちらも、物質であり波である ・・・ どっちやねん ・・・ どちらでもあり、どちらでもない。人を食ったような話だが、こうなると、

「存在」って何?

という恐ろしい疑問もわいてくる。

まぁ、それはさておき、プラトン流の世界観は本当かもしれない。物質界の上に本物のイデア界が存在し、そのテンプレート(ひな形)として、物質界が実体化されている ・・・ とすれば、現実世界も「作り物」ではないか?

ということで、体験者視点からみても、世界の構成要素からみても、仮想世界と現実世界は同じモノ。

では、世界を形成するもう一つの要素「法則(ルール)」はどうだろう?

■世界を支配する法則

現実世界と仮想世界を支配する「法則」について考えてみよう。

たとえば ・・・

なぜ、リンゴは落ちるのか?

重力が存在するから。

ではなぜ、重力が存在するのか?

そんなの知るかよ、神に聞いてくれ!

このイライラは仮想世界で考えると、分かりやすい。

たとえば、TVゲーム ・・・

トランシルバニアのとある古城、あなたはその一室にいる。クラシックな装飾に素晴らしい調度品 ・・・ だがそれに見とれているヒマはない。

古城に巣くうゾンビーが、あなたの命を狙っているのだ!

ではなぜ、ゾンビーは人間を襲うのか?

礼を尽くしてゾンビーに尋ねても食われるだけなので、勝手に想像すると ・・・

そんなの知るかよ、サタンに聞いてくれ!

この世界の「神・サタン」は、もちろん、カバンをたすきがけにしたプログラマーである。彼こそがゾンビーが人間を襲うようプログラムした張本人なのだ。そこで、その理由をプログラマーに聞いてみよう。

たぶん、彼はこう答えるだろう。

そりゃあ、面白いからだよ。

なるほど、ゲームなんだから。

つまり、こういうこと ・・・

世界の法則の「仕組み」が理解できても、「目的」が分からなければ、創造者が存在する。「目的」を知るのは創造者だけだから。創造者がいるなら、それが住む世界も存在する。つまり、仮想世界の上位に現実世界があるのと同様、現実世界にも上位世界があるわけだ。

ということは ・・・

夜見る「夢世界」も、

TVゲームが創り出す「仮想世界」も、

我々が本物と信じている「現実世界」も、

すべて、同じ「作り物」。

《つづく》

by R.B

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