BeneDict 地球歴史館

BeneDict 地球歴史館
menu

週刊スモールトーク (第188話) ユニクロ上海の張り紙~尖閣は中国の領土~

カテゴリ : 社会経済

2012.12.09

ユニクロ上海の張り紙~尖閣は中国の領土~

■撤退か残留か

中国から撤退、それとも、残留?

一体、どっちが得なのだろう?

ちなみに、世界一の危機管理能力をもつトヨタは ・・・ 「玉虫色」。

では、「玉虫色」がベスト?

そうとも言えない。トヨタは特別だから。2012年9月の反日暴動以降、中国でのトヨタ車の販売台数は半減したが、今期は増益予想。つまり、中国がどっちに転ぼうが大勢に影響はないわけだ。そんな、無敵の世界企業を真似ても、墓穴を掘るだけである。

じつは、中国から撤退するのも地獄なら、残るのも地獄。そこで、みんな地獄をうろつく鬼の頭数を数えている。どっちが、”より”危険か見極めるために。一方、こんな消去法をあざ笑うかのように、アグレッシブに「中国残留」を決めた企業がある。ユニクロだ。

ユニクロは、カジュアル衣料品の生産と販売を行うトップメーカーである。「フリース」というありきたりの衣料品で、世界企業にのし上がった勝ち組だ。生産、販促、販売、どこをとってもスキがない。すべてが一枚岩として考え抜かれているのだ。創業者の柳井社長は、希有のビジネスマンといっていいだろう。

ところが、そんな絶好調のユニクロに水をさすような事件が起こった。上海ユニクロ店の張り紙事件である。

2012年9月15日、反日暴動の最中、上海のユニクロ店舗のショーウィンドウに、
「支持釣魚是中国固有領土」(尖閣諸島は中国固有の領土であることを支持する)
の張り紙が貼られた。すると、その写真がウェイボー(中国版ミニブログ)に投稿され、日本でも大騒ぎになった。

そして、驚くなかれ、1日に1200万件以上のアクセスがあったという。アクセス数としてはとてつもない数で、本当は大喜びしたいところだが、問題はその内容 だ。
・ 「もうユニクロの服なんか買わない」
・ 「売国奴」
・ 「おまえのところはどうなっているのか」

一部、店長の立場に立って、仕方がないという意見もあったが、全体としては、「非難轟々(ごうごう)」だった。

一方、ユニクロ側の反応は ・・・

2012年9月18日付のプレスリリースでは、
・ 店舗の現地従業員の独自の判断で、会社の指示ではない。
・ 約40分後、撤去した。

ところが、翌21日付のプレスリリースでは、
・ 張り紙の掲示は地元警察の要請による。

に差し替えられた。

しかし、この一連のコメントは、リスク管理の視点でみると、誉められたものではない。

なぜか?
・ 現地の従業員の独自の判断 → 悪いのは従業員で、会社は関係ない
・ 約40分後、撤去した → 40分位いいジャン(時間の問題ではない)
・ 張り紙は地元警察の要請による → 会社も従業員も悪くない

張り紙を貼ったことは仕方がない部分もあるが、こういう言い訳がましいコメントに終始すると、次のような反論が起こりうる ・・・

何をどう言いつくろうが、「尖閣諸島は中国固有の領土」の張り紙のおかげで、パナソニックや平和堂のように、焼き討ちにあわなくてすんだじゃないか。それに、プライドをかなぐり捨てて、自衛に走ったことも事実。どんな事情があろうが、やったことはたったこと。

つまり、こういうこと ・・・

■寓話「ミッキーのコンビニ強盗」

ある日、コンビニに強盗が押し入りました。その時、お店には、店員が2人いました。ミッキーとドナルドです。ドナルドは、強盗を見るとすぐに逃げ出しましたが、ミッキーは果敢に強盗に立ち向かいました。ところが、運悪く、ミッキーは強盗に刺されて死んでしまいました。

さて、世間はミッキーとドナルドのどっちを支持するのか?

【ドナルド派】
ドナルドは現実的で利口だが、ミッキーはカッコつけて命を落とした愚か者。

【ミッキー派】
ミッキーは可哀想だけど立派。ドナルドは生き残ったけど嫌な奴。

もし、【ドナルド派】が多数を占めたら、世界はどうなるか?
「自分さえよければ、他はどうでもいい」
が社会に蔓延し、欲と悪が支配する世界になる。

一方、【ミッキー派】が多数を占めれば、
「身の危険をかえりみず、責任を果たすことは正しい」
が社会に浸透し、正義と善が支配する世界になる。

この寓話は「尖閣諸島は中国固有の領土」張り紙事件と相似だが、もちろん、ミッキーになるか、ドナルドになるかは個人や企業の自由。

だが、これだけは言える。

個人であれ企業であれ、目指すのは「ミッキーが尊敬される社会」。でないと、あっという間に、世界は欲と悪に支配される。

では、今回、ユニクロはどう対処すれば良かったのか?

非のある所をひたすら謝り、余計なことは一切言わない。具体的には、
「ユニクロは国家間の外交問題に対し、いかなる立場も取っておりません。今回それに反してしまったことを心からお詫び申し上げます。今後は、このようなことが起きないよう社員教育に努めてまいります」
以上

これで、店舗の大型ガラスが割られるかもしれないが、日本人と中国の良識人は、ユニクロはいさぎよい「信念のある企業」と一目置くようになる。さらに、生命線の「ブランドイメージ」も格段にアップし、大型ガラスの損害など吹き飛ぶだろう。これが、わざわい転じて福となす。

■ユニクロだけが非難された理由

ところで ・・・

今回の反日暴動で、「尖閣諸島は中国固有の領土」の張り紙を貼ったのは、ユニクロだけではなかったらしい。ではなぜ、ユニクロだけが非難をあびたのか?

私見だが、ユニクロの社長の発言が原因ではないか?実際、ネット上にはそういう意見が散見する。

ユニクロの柳井社長は、今回の反日大暴動があった後も、中国から撤退するつもりはないと断言している。以下、その理由。
・ 中国は生産拠点としては世界最大で最適。
・ あれぐらい優れた労働者がいる国はない。
・ こういう国はほかにない。
・ これは中国だからできる。他の国ではできない。

間違ってはいないし、こういう時期じゃなかったら、誰も気にも留めなかっただろう。

しかし ・・・

ユニクロはあの「張り紙」のおかげで助かったかもしれないが、多くの日本企業が破壊され、焼かれ、略奪されている。さらに、日本国そのものが、一方的に経済制裁され、領海侵犯までされている。

中国に宣戦布告されたに等しいこんな状況で、柳井社長は、手放しで中国を礼賛しているわけだ。自分の商売しか眼中にない証拠だろう。ところが、もっと分かりやすい証拠もある。

■柳井社長 Vs 私的コメント

柳井社長は、日経ビジネス(2012年10月8日号)で、日本の政府と国民を辛辣(しんらつ)に批判している。以下、その内容と私的コメント ・・・

【柳井社長】
日本人は単純に領土問題だと思っていますが、中国の人は戦争だと思っています。
【コメント】
日本人もそう思っている。領土問題は戦争以外に解決できないことは、歴史をみれば明らか。それに、日本人は中国人よりフェアな歴史を学んでいる。さらに、中国の公船が日本の領海を侵犯していることもみんな知っている。そんな状況を反映して、ネット上では徴兵制や核武装まで論じられている。それでも、日本人は戦争と思っていない?日本人をバカにしすぎ

【柳井社長】
今回の領土問題は中国の利益に反するものなので、中国側は絶対に譲歩しないと言っているでしょう。あのような発言をはじめとして、彼らの本意を理解しないと
【コメント】
「彼らの本意を理解せよ」「尖閣は中国領だと認めよ」
しかないですよね。発言の重大さ理解しています?

「尖閣諸島=中国領」をのんで、ユニクロが中国で商売繁盛すればオッケー、が見え見え。しかも、文面から、彼の親中・反日は「文化や国民性の好き嫌い」ではなく「人口=消費者の頭数=売上」、つまり、欲得ずくであることがわかる。いくら、店舗を綺麗に飾りつけても、中味は醜悪。日本人がそれに気づいたから、1200万件の抗議アクセスがあったのだ。それに、ここが肝心なのだが ・・・ ユニクロは中国からも尊敬されていない。

【柳井社長】
日本は外交も、今回の件への対応も幼稚ですよね。情けない
【コメント】
政府をバカにするだけで、具体案を一つも出していない。もちろん、「尖閣諸島を中国領と認めよ」とは口が裂けても言えないだろうが。もし、政府を「幼稚、情けない」呼ばわりするなら、具体案を示すべき。たぶん、
「それは政府の仕事」
と切り返すだろうが、それなら、
「政府の仕事に口を出すな」
でしょ。

【柳井社長】
日本、中国とも、あまり物事を知らない人が感情的になっています。 偏狭な愛国心、とでも言いましょうか。
【コメント】
「偏狭でない」愛国心って何でしょう?日本も中国も韓国も愛する心?それ、愛国心ではないですね。国語の勉強をしましょう。この人の発言は、矛盾だらけだが、もちろん、バカではない。あれだけ商売上手なのだから。とすれば、何か、魂胆があるはずだ。ところが、さすがに、「尖閣を中国に渡せ」とは言えない。そこで、話をすり替えて、誤魔化そうとするのだが、そこで論理が破綻して、トンチンカンになっている。

【柳井社長】
日本政府と中国政府は本当に戦争をしてもいいんですか。
【コメント】
もちろん、彼は戦争など望んでいない。もし、戦争になれば、中国にあるユニクロの工場と店舗は没収、資産も凍結され、大損こくから。でも、前述したように、領土問題は戦争でしか解決できない。さて、どうしたものか。もちろん、尖閣諸島を中国にプレゼントするしかない。でも、さすがに、それは言えない。そこで、再び話をすり替えて ・・・ 分かりやすい人である。

【柳井社長】
もし僕が総理大臣なら直ちに中国に行って話をします。
【コメント】
行けば。ただ、どっちにするか決めてから行くこと。分かっているとは思うが、中国は「尖閣諸島=中国領」のためなら、日中核戦争さえ辞さないつもりだ。つまり、戦争がいやなら、尖閣諸島を中国にプレゼントするしかない。中学生でも分かる2択問題。さて、どっち?

【柳井社長】
僕が一番残念なのは、政治家のみなさんが、領土問題を軽いテーマだと考えていることです。ですが、 領土問題は戦争になる可能性があるんですよ。
【コメント】
あの無邪気な野田総理でさえ、
「尖閣諸島が日本固有の領土であるのは明らかである。だから、領土問題は存在しないし、いかなる妥協もしない
と断固たる態度をとっている。どこが、軽く考えているのでしょう?

【柳井社長】
まずは早く解決してもらいたいですよね。一番被害を受けるのは、我々のような企業や両国の国民です。
【コメント】
被害を受けるのは「両国」の国民!?焼き討ち、略奪、暴行で被害にあっているのは「日本」だけでしょう。アタマ大丈夫?

【柳井社長】
お互いに喧嘩していいわけがないでしょう。
【コメント】
それは中国に言うべき。反日暴動、経済制裁、領海侵犯で喧嘩ふっかけているのは中国でしょ。でも、日本に言えても、中国には言えない。「反日・親中」と指弾されるのはあたりまえですね。

こうしてみると、この人の本性が見えてくる。

尖閣諸島問題が自分の商売の邪魔をしているのが気に入らない。ところが、尖閣問題は領土問題なので、「日中戦争」か「尖閣を中国にプレゼント」しかない。もし、日中戦争なら自分は大損をこくが、さりとて、尖閣を中国に渡せとは口が裂けても言えない ・・・ そのムシャクシャ、イライラを日本政府にぶちまけているだけ。それが手に取るようにわかる。

しかも、柳井社長の論調は「すべてお見通し」と高ビー、そのくせ、内容は矛盾だらけで、トンチンカン。しかも、「商人」のご都合主義が丸見え ・・・ ん~、だから不快なのかな。

そこで、ビジネスマンとして尊敬する柳井社長にアドバイス ・・・ そんな回りくどい言い方はやめて、
「オデは中国で商売している。このままじゃ、商売あがったりだ。あんな小さな島の一つくれてやれ、それで、中国と仲良くなればいいジャン(オデの商売大繁盛)」
と言い切る方が、よっぽど、すがすがしい。

たぶん、袋だたきにあうとは思うが、
「あからさまな売国奴だが、正直だから、いいんじゃね
と誉めてくれる人が、1000万人に1人ぐらいはいるかも。いや、1億人に1人、やっぱり、ムリかな。

■自分さえ良ければ病

そもそも、ユニクロは露骨な「日本なんか相手にしない」企業。社内の公用語も英語だし、雇用も納税も海外にシフトしつつある。外人を多数採用し、英語のできない日本の若者をこきおろし、「泳げない者は沈めばいい」と言い切っている。

つまり ・・・

ユニクロは日本に貢献しようとする意識が欠落している。当然、ユニクロの発展と国益は一致しない。これは、グローバル企業の宿命だが、なぜかユニクロは、
「自分さえよければ ・・・」
のイメージが強い。

じつは、エコノミストで同志社大学教授の浜矩子もそこを突いている。

浜矩子は、「文藝春秋」で、ユニクロのような低価格販売は、企業の利益を圧迫させ、人件費の切り下げにつながっていると批判している。さらに、ユニクロのような経営を、
自分さえ良ければ病
とまで言い切っている。おそらく、彼女が言いたいのは ・・・

中国の激安人件費、桁違いの労働力を利用することで、異常に安い商品が大量に出回るにようになった。結果、中国以外の国々の雇用が減り、世界中で人件費が下がり、所得も減ってしまった。
中国はアジアに失業を輸出している
と言われるゆえんである。モノは安くても、給与が安ければ、消費者に何のメリットもない。結局得したのは、中国とユニクロだけ、というわけだ。

まぁ、しかし、世界は資本主義なんだし、中国でもどこでも行って金儲けに精を出すのは自由。

しかし ・・・

自分のご都合主義を普遍的な国益に見せかけて論じるのはやめたほうがいい。ユニクロは広告主なので、マスコミは持ち上げるだろうが、利害のからまないネット世論では通用しない。そもそも、柳井社長が言うほど、日本政府も国民もバカではない。もし、ユニクロを一流ブランドに育てたければ、国や社会に貢献する姿勢も打ち出す必要がある。

■民間の活力の限界

以前、丹羽・中国大使が、日本人を非難し、中国を擁護したことがあった。さっそく、日本中で非難の声があがった。日本の国益を守るはずの大使が、中国の国益を優先したのだから。彼は、伊藤忠(商社)の社長時代、大きな成果をあげているが、商人の資質と公人の資質は別ものなのである。

現在、学校の教員や公務員の世界で、「民間の活力の導入」が叫ばれているが、この2人をみる限り、「民間の力」には限界がある。そもそも、彼らの根っこにあるのは「自分の商売繁盛」。そんな人間が、まことしやかに国家論を論じても、誰も耳を傾けないだろう。

もちろん、すべてのビジネスマンがそうだというわけではない。ベンチャーキャピタリストの原丈人のように「公」の立場で「国家論」を論じるビジネスマンもいる。彼の著書「21世紀の国富論(平凡社)」は、正義と真実、そして誠実さがヒシヒシ伝わってくる。15年前、彼は、自分が投資するアメリカのベンチャー企業家たちを連れて金沢に来たことがあるが、その時の印象そのままだ。

さて最後に、トヨタにしろ、ユニクロにしろ、グローバルビジネスを展開する企業は、中国から撤退する気配はない。日本では、「反中」の意識が高まっているのに。

ところが ・・・

トヨタの車には何の偏見もないが、ユニクロの商品だけは買いたくない ・・・ なぜだろう?

「ユニクロ」のロゴに不快なイメージを感じるから。

商品をそんな風に選ぶのは間違っている?

そんなことはない。

そもそも、「ブランド」とは「イメージ」のことなのだから。

でも、そこを熱く語るつもりはない。買いたくなければ、買わなければいいのだから。

by R.B

関連情報