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週刊スモールトーク (第184話) 日中尖閣戦争(7)~海戦と地上戦~

カテゴリ : 戦争歴史

2012.11.11

日中尖閣戦争(7)~海戦と地上戦~

■制海権

「制空権」が確保できれば、次は「制海権」だ。

空軍は海軍・陸軍の天敵だが、燃料が切れるのが早い。つまり、長居はできないわけだ。敵の戦闘機を蹴散らし、帰還したら、その間に、尖閣に増援部隊を送り込まれた、ではシャレにならない。

そこで、長居するために「制海権」が必要になるわけだ。船は燃費がいいし、軍需物資も海上で補給できるから。

ということで、日本の海自(海上自衛隊)は、制海権を確保するために、中国本土と尖閤諸島の間に艦隊を配置するだろう。出撃する日本艦隊は、護衛艦と潜水艦を中心に編成される。

まず、護衛艦の主力になるのは「イージス艦」だ。

「イージス艦」とは、戦艦・巡洋艦・駆逐艦のような艦種をさすのではなく、「イージスシステム」を搭載するすべての艦船をさす。

では、「イージスシステム」とは?

アメリカが開発した「統合防衛システム」で、450km彼方の敵機を、最大で200機まで探知・識別し、同時に10機を攻撃できる。

具体的には、

①目標を探知する「SPY-1レーダー」

②探知した目標を分析し、攻撃命令をくだす「コンピュータシステム」

③目標を攻撃する「スタンダード対空ミサイルシステム」

で構成されている。恐ろしく高度な電子制御システムで、1隻1000億円以上するという。

さらに、最近では、「ミサイル防衛(MD:Missile Defense)」機能も追加されつつある。一般に、弾道ミサイルは航空機とは比較にならないほど、撃ち落とすのが難しい。実際、第二次世界大戦のナチスドイツのV2ロケットは、迎撃はおろか、探知することもできなかった。

そして、今は・・・

探知はできるが、撃ち落とすのは至難、とあまり状況は変わっていない。弾丸で弾丸を撃ち落とすようなもの、と揶揄(やゆ)されるほどである。ところが、それを可能にするのが「ミサイル防衛(MD)」だ。今後、海自の「こんごう型護衛艦(イージス艦)」に装備される予定だという。

じつは、対中国戦で最も懸念されるのが中国の弾道ミサイルだ。日中尖閣戦争が勃発したとして、戦域が尖閣諸島におさまるなら、日本が優位に立つだろう。しかし、中国がなりふりかまわず、日本本土や沖縄の基地に弾道ミサイルを撃ち込めば、状況は一変する。空自も海自も、深刻なダメージを受ける可能性があるからだ。

ということで、弾道ミサイルの問題がなければ、イージス艦を保有する日本が有利になる。もっとも、中国にも、「中華イージス」とよばれる「蘭州(らんしゅう)級駆逐艦」がある。ただし、スペックと練度で、アメリカ生まれ、日本育ちの「イージス艦」にはかなわないだろう。「蘭州」級駆逐艦が出撃しても、空自の戦闘爆撃機「F-2」の空対艦ミサイルで足止めされる可能性が高い。

また、中国には、1998年にウクライナから買い取った空母「ワリャーグ」がある。中国自慢の空母だが、艦載機を含め、空母部隊の運用には高い技術と訓練が必要だ。近々、本格運用できるとはとても思えない。

ということで、制空権に続いて、制海権も日本がとるだろう。

■潜水艦戦

ところで、もう一つの海戦、潜水艦戦はどうなのだ?

第二次世界大戦中、潜水艦といえば、日本のイ号潜水艦とドイツのUボートだった。特に、日本海軍のイ号潜水艦「イ400型」は、世界に類のない「潜水空母」だった。全長122mという超弩級の大型潜水艦で、ミサイル型原子力潜水艦が登場するまで世界一を誇った。ただし、艦載機は3機だったが。

3機で一体何ができるのだ?というツッコミはナシ。「潜れる」空母というのが凄いのですね。

では、今は?

「対潜水艦作戦」能力では世界一!

これには、歴史的な背景がある。ソ連がまだ元気だった冷戦時代、日米の軍事共同作戦では、日本は「敵潜水艦の駆逐」に特化していたからである。

もし、日本が攻撃を受けたら、日米安保が発動され、アメリカ軍が出動する。その中心となるのが、空母打撃群だ。空母打撃群とは、空母を中心に、護衛艦、潜水艦、補給艦で編成される艦隊で、現在、最強の攻撃力を誇る。じつは、空母艦隊には超音速魚雷という天敵がいるが、実用化されるまでにまだ時間がかかるだろう。ということで、日本の海自は、この空母打撃群を敵潜水艦から守る役目を担ってきたのである。

ところが、不思議なことに、日本の潜水艦は「原子力潜水艦」ではない。ディーゼルエンジンで発電機を回し、電気を起こし、それでモーター(スクリュー)を回す。もちろん、潜水中にこれをやると、ディーゼルエンジンの燃焼で、艦内の酸素が瞬く間になくなる。結果、クルー全員が窒息死!

そこで、潜水中は、ディーゼルエンジンではなく、バッテリーでモーターを回すのである。もちろん、スノーケルを使えば、ディーゼルエンジンで潜航できるが、敵に丸見え。なので、作戦中はムリ。

なんだ、第二次世界大戦の潜水艦と、同じじゃないか。

イエス!

でもちょっと違う。非大気依存推進(AIP)がついているから。

非大気依存推進とは、潜航中も、スノーケル無しで、ディーゼルエンジンを駆動できるシステムである。では、燃焼に必要な酸素はどうするのか?艦内の大気を使わず、液体酸素を気化して使う。なるほど、これなら、クルーが窒息死する心配はない。

非大気依存推進には、いくつか方式があるが、海自の「そうりゅう型潜水艦」はスターリング機関を採用している。スターリング機関の原理は、蒸気機関をイメージするわかりやすい。

シリンダーにはヘリウムガスが封入してあり、シリンダーを外部から加熱すると、ガスが膨張する。次に、シリンダーを冷却するとガスが収縮する。この膨張と圧縮を繰り返せば、ピストン運動が発生し、最終的に回転力が得られる。つまり、蒸気機関と同じ外燃機関なのである。また、加熱には、液体酸素から得た酸素とケロシンを燃焼させ、冷却には海水を使う。

この「そうりゅう型潜水艦」は、スターリング機関を使えば、10日間ぐらいは連続潜航できるという。一見凄そうだが、第二次世界大戦中のドイツの潜水艦「エレクトロボート(ⅩⅩⅠ型)」は88時間(3.6日)、連続潜航することができた。しかも、非大気依存推進を使わず、大容量のバッテリーだけで。ところが、エレクトロボートが実戦に投入されることはなかった。その前に、ドイツが降伏したからである。

対潜水艦作戦は、まず、潜水艦の探知から始まる。その主役になるのが「対潜哨戒機」だ。そして、この点で日本は世界一。抜群の潜水艦探知能力を誇る「対潜哨戒機P-3C」を80機も保有しているからだ。

「対潜哨戒機P-3C」は、3つの方法で、潜水艦を探知する。

まずは、音波探知。ソノブイを海面に投下し、海中の敵潜水艦の音を探知し、艦種と位置を特定する。

つぎに、電波探知。潜水艦は無線交信するためには、浮上する必要がある(電波は海中ではほとんど伝わらない)。その時、発する電波で敵潜水艦を探知するのである。

最後に、磁気探知。潜水艦は鋼鉄の塊なので、存在そのものが、地磁気を乱す。それを探知すれば、潜水艦の位置が分かるわけだ。ただし、探知距離が短いので、まず、音波探知で海域を絞り込み、磁気探知で正確な位置を割り出す。

さらに、P-3Cは、ハープーン対艦ミサイル4発を搭載できるので、水上艦艇も攻撃可能だ。しかも、高々度から探知・攻撃できるので、護衛艦にくらべ、遠距離から攻撃できる。対「中華イージス」にも威力を発揮するだろう。

もちろん、潜水艦探知には、潜水艦も有効だ。中国の原子力潜水艦はエンジン音が大きいので、「そうりゅう」のパッシブソナーで十分探知できるだろう。パッシブソナーとは、探知用の音波を発信せず、敵艦の出す音をひたすら聴音するソナーのことである。

一方、アクティブソナーはより積極的だ。探知用の音波を発信し、その反射波で敵を探知するのである。音波版レーダーと考えるとわかりやすい。ただし、音波を出すので、こちらの存在も知られてしまう。ちなみに、日本の潜水艦のソナー探知能力は非常に高いといわれている。

そして、敵潜水艦を補足したら、ただちに、魚雷を発射し、撃沈する。

というわけで、P-3C、イージス艦、潜水艦が連携すれば、日本の対潜水艦作戦は無敵だろう。

■空爆

日本側は、空自と海自が連携し、制空権と制海権を確保しつつ、空爆を開始する。

硫黄島の戦いでは、日本軍は地下壕を掘って、空爆と艦砲射撃を無力化したが、尖閣諸島の中国軍にはそれができない。時の日本政府が、よほどマヌケでない限り、間をおかず、奪還作戦を実行するから。結果、中国軍の歩兵は、むき出しの状態で、空爆にさらされることになる。

空爆を行うのは、福岡県築城基地の「F-2」戦闘爆撃機だろう。じつは、この「F-2」はいわくつきである。

1980年代、「FS-X(次期支援戦闘機)」計画が持ち上がったとき、日本悲願の国産開発が期待された。開発を担当するのは、大平洋戦争中、名機「零戦」を開発した三菱重工である。ところが、アメリカの横やりで、日米共同開発に変更されてしまった。また、国内でも、軍需産業復活とか、次元の低い中傷が飛び交っていた。

ところが・・・

そのスキに、中国がステルス戦闘機を開発してしまった。もし、このステルス機が実用レベルなら、日本の「F-15」でも太刀打ちできない。F-15のスペックがどれほど高くても、見えない敵は攻撃できないからだ。一方、こっちは丸見え。どちらが勝つかは子供でも分かる。つまり、ステルス機に対抗できるのは、ステルス機だけなのである。

じつは、アメリカのステルス戦闘機「F-22ラプター」なら、中国のステルス機など敵ではない。じゃあ、「F-22ラプター」を買えば?日本はお金持ちなんだし。ところが、アメリカは売ってくれない。ハイテク過ぎるので、技術が漏れるのがイヤなのだという。そこで、格落ちのステルス機「F-35」を奨められている。

つまり、こういうことだ。

最良の兵器は、日本に売ってあげないけど、日本が兵器を開発するのは許さない・・・戦後70年経ったけど、まだ日本はアメリカの属国なんですね。

あのとき、「FS-X」を国内開発していたら、今頃は日本もステルス機を開発していただろうに。国の安全保障に直結する戦闘機を他国に依存してどうするのだ?同盟国のアメリカが売らないと言っているんですよ!じつは、こういうバカをやらないために、中国は「兵器の国産化」に執念を燃やしているのである。

皮肉な話だ。19世紀末、日本は富国強兵に勤め、それを怠った中国(清王朝)を、日清戦争でやぶった。ところが、今は真逆だ。日本は、優れた人材と技術、そしてマネーを有しながら、気持ちの悪い平和主義で国の未来を台無しにしようとしている。

国防と科学技術は国の要(かなめ)である。それを育てるためには、可能な限り、自国で兵器開発するしかない。そして、日本にはその能力もお金もある。それでも、やらない?これだけ、中国に脅かされているのに・・・正気の沙汰とは思えない。

さて、その日米共同開発の賜(たまもの)が「F-2」である。空対艦ミサイルを最大4発搭載しているので、艦船や地上ユニットを攻撃できる。また、戦闘機同士の空中戦でも高いスペックを誇る。いわば、万能型の戦闘爆撃機だ。ということで、制空権を確保すれば、「F-2」の空爆は成功するだろう。ただし、中国のステルス機が実用レベルでないという条件付きで。

また、空爆の効果が不十分なら、護衛艦から艦砲射撃もありうる。敵の火器の届かない距離から、護衛艦の127ミリ速射砲で集中砲火を浴びせれば、歩兵はひとたまりもないだろう。

■地上戦

空爆の効果が確認できれば、あとは、歩兵による島の制圧だ。

普通の歩兵では危険なので、特別の戦闘訓練を積んだ西部方面普通科連隊や特殊作戦群の部隊が投入されるだろう。上陸した中国軍は、携帯式地対空ミサイル、携帯式対戦車ロケット(対戦車、対ヘリ)、12.7m機関銃、迫撃砲、地雷を持ち込んでいるだろうが、空爆によるダメージが大きければ、そのまま降伏するかもしれない。そうでなければ、白兵戦だ。

空爆や歩兵支援に、攻撃用へリ「AH-64Dアパッチ・ロングボウ」が投入される可能性もある。ただし、歩兵が携行する地対空ミサイル(HN-5)は要注意だ。赤外線誘導装置付きで、自立推進するので、低速の攻撃用ヘリにとって脅威になる。ということで、空爆の中心は、やはり「F-2」戦闘爆撃機。

いずれにせよ、制空権と制海権を掌握すれば、上陸した中国軍は補給や支援が絶たれる。よって、降伏は時間の問題だ。

以上のシミュレーションは、指導者の個性による偶発性や、想定外のイベントは考慮されていない。これで事が進むなら、日本は尖閣諸島を奪還できるだろう。もちろん、現実はそんな単純ではない。

たとえば、シミュレーションの時間軸をもっと広げると・・・

日本が尖閣諸島を奪還したとして、その後、どうなるのか?

尖閣諸島は日本の領土で決まり?

そんなわけがない。中国が認めるはずがないではないか。

では、どうなる?

アメリカが仲裁に入り、中国がそれをのまない限り、行くところまで行く。その場合、中国に残された手段は「核弾道ミサイル」のみ

《つづく》

参考文献:
週刊現代10月6日号講談社
自衛隊4大国防戦!日本侵略Xデー別冊宝島宝島社

by R.B

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