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週刊スモールトーク (第172話) 世界の名言(1)~偉人編~

カテゴリ : 人物思想

2012.06.23

世界の名言(1)~偉人編~

■記号とメッセージ

言葉は文字の羅列にすぎないというのは、シェークスピアの戯曲が言葉の集まりにすぎないというのに似ている。ジャンルが音楽なら、モーツァルトの楽曲は音符の集まりにすぎないというようなもの。何も分かっちゃいない、と一刀両断にされそうだが、この手の屁理屈は世界中にあふれている。

言葉と音楽は、記号というよりは、メッセージに近い。記号の役目は「識別」だが、メッセージは人の魂を揺さぶるから。ところが、強力なメッセージは、人の運命、時に、歴史を変えることさえある。ただ、そうなるかどうかは、受け取る側次第。受信者の心の感度、共鳴度にかかっているからだ。つまり、メッセージの主体は、送信側ではなく受信側にある。だから、世界は日々、メッセージにあふれているのに、それを受信できる人は少ない。

メッセージの形は言葉と音楽だけではない。ビジュアル(映像)もその一つ。元NHKアナウンサーの鈴木健二氏は「人は自分の仕事をするために生まれたのだ」という題目で、次のように書いている。

かねてから私は、高名であると否とを問わず、この人は人生の中で何かを成し遂げた、あるいは成し遂げつつあるなと感じさせる人物に共通しているのは、青春時代に大きく心を揺り動かされた言葉や本や出来事にめぐりあっていたり、忘れられない良き日を持った人間であると、書きもし言いもしてきた。

・・・

今、私は日本初の形で、個人のボランティアにより文化を通しての地域おこしの活動に微力を投じているが、この原因は旧制弘前高校生であった終戦直後の時代に、福祉施設で、1人の12、3歳ぐらいの精神薄弱の少女が、皆の洗濯を一日中し続けていた姿を目撃して大きな感動を受け、いつかあの子のように生きて行きたいという想いを抱いたからであった。
(歴史街道1993年6月号/PHP研究所から引用)

自分が授かった人生を受け入れ、遮二無二に生きる様は、万人の心を打つ。それがどんな人生であっても。だから、メッセージは言葉、音楽、映像・・・媒体をとわないのである。ただ、記録・保存という点では、音楽と映像はテクノロジーに大きく依存している。というわけで、古代からのメッセージといえば「言葉」しかない。

たとえば、古代エジプトのパピルスには、
「近頃の若いモンは・・・」
という一節がでてくる。これが名言かどうかはさておき、人間の心の作用は大して変わっていないようだ。

ということで、心に響く言葉のメッセージ、世界の名言、格言、金言、(迷言)を収集していこう。

■科学者の名言

名言はたいてい、偉人のものと相場は決まっている。なぜなら、偉人が吐いた言葉なら、世間が勝手に広めてくれるから。たとえば、

Stay hungry, Stay foolish(貪欲であれ、愚直であれ)

かつて、この言葉を知る人はほとんどいなかった。ところが、2005年6月12日、スタンフォード大学の卒業式で、アップルのスティーブン・ジョブズが口にするや否や、世界中に知れわたった。カタログの背表紙に埋もれていた地味な言葉が、一夜にして名言になったのである。スティーブン・ジョブズによれば、この言葉は「ホール・アース・カタログ(全地球カタログ)」の最終号の背表紙に書かれていたという。

しかし、この言葉は、スティーブン・ジョブズの実績と人生をだぶらせて初めて、強力なメッセージになりうる。だって、言葉だけみれば、
「ハングリーになれ、バカになれ」
一体何の話だ?

つまり、同じ言葉でも、偉人が吐けば「名言」?ということで、まずは科学の世界からみていこう。科学者なんて専門バカだから、名言が数式だったりして、などどあなどってはいけない。分野は何であれ、何かを成し遂げた人は、普遍的なルールを見つけるのがうまいからだ。

アルベルト・アインシュタインは、歴史上最も有名な科学者、そして、天才の代名詞にもなっている。アインシュタインは、26歳のとき、「光量子仮説」、「ブラウン運動の理論」、「特殊相対性理論」の3つの論文を発表したが、それぞれ単独でもノーベル賞に値するという。その後、ノーベル賞を受賞し、数々のエピソードと名声に包まれ、この世を去った。アインシュタインは、死の間際、遺言を口にしたが、それがドイツ語だったため、後世には伝わらなかった。そのかわり、生前、たくさんの名言を残している。

一度も失敗したことがない人は、一度も新しいことに挑戦したことがない人である
(Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.)

シンプルな言葉だが、奥が深い。じつは、個人的に成果主義が好きになれない理由がここにある。何の仕掛けもない単純な成果主義を導入すれば、誰も挑戦しなくなるからだ。難易度の高い仕事ほど失敗しやすいので、「やったもん負け」というわけだ。もちろん、そんな組織から、革新的な商品やサービスが生まれるはずがない。

現実はただの幻想である。非常にしつこいものではあるが
(Reality is merely an illusion, albeita very persistent one.)

科学者らしくない、でも、詩人でもない、不思議な表現だ。たしかに、夢は1話完結だが、現実は過去を引きずる。だから、現実の方が、ずっと”しつこい(persistent)”わけだ。現実がまともで、夢は幻想だと感じるのはそのためだろう。しかし、夢から覚めたら現実があるように、現実から醒めたら(死んだら)、別の世界があるのかもしれない。とすれば、現実も幻想・・・

無限なものは2つある。宇宙と人間の愚かさだ。そのうち、宇宙については、私には分からない
(Two things are infinite : the universe and human stupidity ; and I’m not sure about the universe.)

アインシュタインお得意のブラックジョーク。どうやら、アインシュタインは人間に愛想を尽かしていたらしい。そして、その集大成とも言うべき名言が、

第3次世界大戦はどんな武器で戦うのか分からないが、第4次世界大戦は棒と石で戦うだろう
(I know not with what weapons World War III will be fought, but World War IV will be fought with sticks and stones.)

未知の大量破壊兵器で文明は一旦滅ぶが、それでも懲りずに、第4次世界大戦に突入。ところが、「毛皮のパンツ」の時代に戻っているので、ロクな武器がない、というわけだ。テーマはもちろん「おバカな人間」。名言というよりは、金言だろう。それに、この予言、当たらずとも遠からずかも。少なくとも、マヤの2012年人類滅亡の予言よりは?

また、若者に向けた名言もある。

常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことだ

誤解をまねかないよう、補足しておくと、アインシュタインは、はた迷惑な奇行を推奨しているわけではない。アインシュタインの奇行は人畜無害だったし、基本、温厚な紳士だったので。ただ、常識に頼ると判断を誤ると言っているのだ。

2012年6月11日、東京都議会の共産党は、東京都葛飾区の公園から25万1000ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されたと発表した。ちなみに、埋め立て処分できる基準値は8000ベクレル/kg。本当は大変な事態なのに、政府もマスコミも世間も騒がない。すっかり、慣れてしまっている。「ゆでガエルの法則」そのままだ。

福島原発事故から、1年以上たった東京でこれなら、福島はおしてしるべし。政府、東電、マスコミの「常識」は、がれき処理と除染による復興で、「福島県の全避難」は考えていない。放射性物質は除去できないことは、チェルノブイリが証明しているのに。10年たって、あの時の「常識」は間違いだったではすまない。

さらに、2012年6月14日、福島沖で漁の再開に向けた試験操業が始まった。海に放出された放射性物質1万5000兆ベクレルはどうなった?もうすっかり、消えたとでも?そんなわけないでしょう。たとえ、
「試験の結果、安全でした」
と宣言したところで、誰が信じるだろうか。福島県知事の福島米の安全宣言など、この手の「偽り」は枚挙にいとまがない。

そもそも、業者と消費者の利害は一致していない。消費者は安全を、業者は売上げを望んでいるわけだから。こんな状況で、漁を再開する?それで、売れなければ、風評被害?何かが狂っている。

もちろん、業者にも言い分はあるだろう。10年たっても、危険じゃないかもしれない!もちろん、その可能性もある。でも、事が人命にかかわるなら、最悪を想定し、備えるべきでは

こんな時こそ、アインシュタインの「常識=偏見のコレクション」を思い起こし、福島の未来を考えるべきだろう。がんばろう、みたいなきれい事ではなくて、真剣に。福島に住んでいる人たちが、自分の恋人や家族だったら、どんなアドバイスをするのか?それが真の解決方法だと思うのだが。

■発明家の名言

科学者の代表がアインシュタインなら、発明家の代表はエジソン。まずは、超有名な名言から。

天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」

ところが、エジソンにハメられそうになったニコラ・テスラは、

天才とは、99%の努力を無にする1%のひらめきのことである

エジソンとテスラの不仲は周知だが、この名言バトルからもそれが伝わってくる。とはいえ、このままではエジソンはただの道化。そこで、彼の名言をもう一つつけくわえよう。

私は一度も失敗していない。うまくいかない1万通りの方法を見つけただけだ

これを「失敗は成功のもと」と解釈する向きもあるが、的外れだと思う。エジソンにとって、世間で言う失敗は、成功と一体化していて、その接点において間然とするところがない。つまり、エジソンの頭には失敗という概念がないのだ。エジソンの人格は誉められたものではないが、事が発明になると、さすがに際立つ。

じつは、この手の名言は他の分野にもゴロゴロしている。たとえば、第2世界大戦のイギリス首相ウィンストン・チャーチル。彼は、ヨーロッパ全土を征服し、怒濤のごとく襲いかかったドイツの猛攻をたえしのぎ、イギリスに勝利をもたらした。そのチャーチルはこんな名言を残している。

成功とは意欲を失わずに、失敗に次ぐ失敗を繰り返す能力のことだ
(Success is the ability to go from one failure to another with no loss of enthusiasm.)

ルネサンス最大の芸術家ミケランジェロも同じことを言っている。

天才とは永遠の忍耐である

心が熱くなる。「強い」というのは、こういうことなのだ。

■哲学者の名言

つぎに、人文科学の世界。まずは、哲学者フリードリッヒ・ニーチェから。

真実の山では、登って無駄に終わることは決してない

偽りの山なんか登ってもいいことないぞ、人生の無駄だぞ、だから、真実の山に登れ、と言っているのだ。言葉は分かるのだが、どうもピンとこない。ところが、アップルのスティーブン・ジョブズが同じことを言っている。しかも、こっちの方がずっとわかりやすい・・・

子供のころ、通りの向かいのやつがフォルクスワーゲンのビートルを持っていた。彼はそれをポルシェにしようとマジで考えたんだ(外見は似ている)。そして金と暇さえあればそのフォルクスワーゲンにアクセサリーを取り付けて派手に飾り立てた。完成してみるとポルシェにはならなかった。派手でぶざまなフォルクスワーゲンになったのさ。なにをやるかは慎重に選ばなければならない。自分が本当に好きなことを選んで、それがやりがいのあることだったら、あとは脇目もふらず取り組めばいい。
(月刊アスキーから引用)

これが、偽りの山に登ること、そして、真実の山に登ること。それにしても、スティーブン・ジョブズの「たとえ」はキレとコクがある。並外れた表現力だ。

話をもどして、ニーチェ。じつは、ニーチェの名を不滅ならしめた名言は別にある。単純で素朴、しかもたった5文字・・・

神は死んだ

強烈・・・よく、宗教界から抹殺されなかったものだ。それはさておき、神が存在するかどうかもわからないし、神なら死ぬわけがないし、それを全部のんだとしても、一体、誰が何のために殺したのだ?

事情は複雑だ。段階をおって説明しよう。

「神は死んだ」は、ニーチェの著書「ツァラトゥストラはかく語りきに」の中で、主人公のツァラトゥストラが吐く言葉である。じつは、ニーチェは、キリスト教の教え、
「右の頬を打たれたら、左の頬も出しなさい」
が気に入らなかった。

キリスト教は、イエスの死後、ローマ帝国で激しい迫害にあった。もちろん、相手は地中海世界を征服した大帝国、力では勝ち目はない。そこで、
「力=悪→力で負けても、神の目線では我々の勝利」
という、負け惜しみ的な教義に身を任せ、なされるがまま、死んでいったのである。

ニーチェはここをついた。勝ち目がないなら、素直に悪態をつけばいいのに、いびつな教義で自分を偽り、優越感にひたっている。そんなのは、人間本来のあるべき姿ではない、まやかしだ。だから、人間はもう神を信じることができない。信じる者がいない神は、もはや神ではない。だから、神は死んだ、と言い切ったのである。

では、どうすればよいのか?これが、ニーチェの「超人思想」へとつながる。やられたら、やり返す、それくらいの意思と力をもつべし。そして、強くなりたい欲求を素直に受け入れ、それに従うべし。自然であること、現実に目を向けること、そして、前向きに雄々しく生きること。というわけで、ニーチェがいう「超人」はサイボーグのことではない。

ニーチェは、おそらく、天才だった。その類い希な知性を恩師に認められ、弱冠24歳で、大学教授になっている。順風満帆、その後も、さぞ素晴らしい人生になったのだろう・・・ところが、最期は発狂して病死。

さて、哲学者最後を飾るのは、ショーペンハウアー。この名言を初めて読んだとき、10秒間呼吸が停止した(心臓ではない)。

人生において初めの40年は本文であり、あとの30年は注釈である

■政治家の名言

科学者、哲学者とくれば、つぎは政治家だろう(根拠はない)。世界を切った張ったするのだから、さぞかし、とんがった名言を残しているのだろう。ということで、まずは、ヒトラーから。絵葉書を売って食いつないだ貧しい青年が、ドイツの首相にまで上りつめ、第二次世界大戦までひきおこした・・・期待できるぞ。

大衆の心は中途半端なものや迫力のないものに対しては一切鈍感である

狂信的になった大衆だけを操作できる

いきなり炸裂、ヒトラーの人生そのままだ。良し悪しはさておき、言行一致していることはたしか。ヒトラーの戦略と戦術は、思いっ切りの良さが特徴だが、それが功を奏し、一時期、ヨーロッパ全土を支配した。このときの領土は、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、スカンジナビア半島にまでおよび、かつてのローマ帝国の最大版図を凌駕する。歴史上最大のヨーロッパ帝国である。

このドイツ第3帝国の原動力となったのがヒトラーだが、彼に同調し、死の瞬間まで仕えたのがゲッベルスだった。彼は、ナチスドイツの宣伝省の大臣として、国民をたくみに洗脳し、戦争に駆り立てた。広告代理店に勤務する友人によれば、ナチスは宣伝広告の教科書だそうだが、ゲッベルスの名言がそれを示唆している。

宣伝は、気楽に楽しめる娯楽の中に、気づかれないように仕込む

宣伝をキャッチフレーズ化し、大衆の不満、疑問、欲望を刺激し暴発させる

宣伝は、知識レベルの低い階層に合わせる

宣伝広告の核心を突く黄金則だ。さすがはゲッベルス、宣伝の天才と言われただけのことはある。世界中の民主主義国家が、ナチスドイツをファシズムと非難しながら、利用できるところはしっかり利用しているわけだ。

余談だが、ゲッベルスは最後はいさぎよかった。ヒトラーの取り巻きが、次々とベルリンを脱出する中、ゲッベルスだけが家族と共に死を選んだのである。ヒトラーが、再三、逃げのびろと命じたにもかかわらず。

話をヒトラーにもどそう。あれだけの事をやってのける人物は、どんな人生観をもっていたのだろう?

勝負する人間のみが世界の本質を意識する

永続性も、究極性も存在しない。あるのは変動のみ

まさに、キワモノ人生観。ところが、ヒトラーは女性に関しても、面白い言葉を残している。

「結婚の欠点は権利が生じることである。その点では愛人のほうがはるかにいい。義務は少ないし、何もかもプレゼントという次元で話がすむ

おみごと!理にかなっている。実際、ヒトラーにはエヴァ・ブラウンという愛人がいた。ところが、ソ連軍がベルリンに侵攻すると、総統官邸地下壕で、ヒトラーはエヴァ・ブラウンと結婚する。そして、その直後に自殺。結婚とは死?これはシュールだ。

ヒトラーの女性観をもうひとつ。こちらは、かなり意味深だ。

若い娘の教育は最高に楽しい。18から20まではロウのように柔軟だ

想像するとドキドキするのはなぜだ?

このヒトラーと死闘を繰り返したのが、ソ連の最高指導者スターリンだった。1941年6月22日、ヒトラーは300万の大軍をロシア全土に侵攻させた。迎え撃つソ連赤軍も300万。史上最大の陸上戦「バルバロッサ作戦」である。当初、フランスを1ヶ月で征服したドイツ軍は、ソ連赤軍を圧倒した。ところが、ドイツ軍は首都モスクワ40kmまで迫りながら、結局は敗退。スターリンはヒトラーに勝ったのである。

さて、そのスターリンだが、あの強面(こわおもて)から、頭脳明晰、冷酷無比、敵も味方もビシバシ粛正、と勝手に想像してしまう。実際、スターリンはヒトラーに優るとも劣らない傑物だったらしい(善悪の話ではない)。スターリンの側近がこんな言葉を残している。

「スターリンは自分が何を望んでいるかをはっきり理解していた。頭のてっぺんから足の先までリアリストで、甘いところはまったくない。話し方も簡明、直截にポイントをつく。無駄な言葉は一言もなかった」

これまでの経験によれば、
「自分が何を望んでいるか理解している人=ぶれない人

こういう人は何を聞いても即答するし、決断も速い。そして、必ずとはいわないが、大きな成果を上げている。一方、こういうのを敵に回すとやっかいだ。ヒトラーもスターリンにしてやられたのだから。

大国の政治家が世界に与える影響力はハンパではない。常人の1000万倍ものレバレッジがかかっている。テキトー?いや、根拠がある。ヒトラーが起こした70年前の戦争でさえ、数千万人が死んでいるのだから。ましてや、大量の核兵器を抱え込んだ現代なら、文明そのものが滅ぶ可能性もある。その瀬戸際までいったのが、1962年のキューバ危機だった。

1962年10月14日、アメリカの偵察機U-2が、キューバでソ連製の弾道ミサイルを発見した。その報告を受け、アメリカ政府と軍部は仰天した。それもそのはず、アメリカの目と鼻の先に、核ミサイルを並べられたのだから。アメリカはミサイルの撤去を要求し、以後14日間、激しい駆け引きが続いた。その結果、アメリカのケネディとソ連のフルシチョフの忍耐と決断により、第三次世界大戦(全面核戦争)は回避された。

アメリカ合衆国第35代大統領、ジョン・F・ケネディは女好きだった。そのため、弟の司法長官ロバートはスキャンダルをもみ消すため、手段を選んでいる余裕はなかった(職権乱用)。ところが、そんな不道徳なケネディも、キューバ危機のような国家存亡、いや人類の存亡がかかった局面では、最高の仕事をしたのである。では、そのケネディの名言とは?彼の人生を象徴する言葉が残っている。

あなたの敵を許しなさい。しかし、絶対に名前を忘れてはなりません

地味・・・でも、外交や人間関係でさぞかし苦労したんですね。でも、ゼンゼン許してないじゃん。

一方のフルシチョフの名言。

「世界は2つの陣営に分断され、互いに相手を絶滅させるための手段をもつに至った。しかし、戦争は避けることができる。核の時代においては、平和共存こそが唯一の合理的選択なのだ

この時の指導者が、ケネディとフルシチョフで本当に良かった。もし、ヒトラーとスターリンだったら、人類の歴史は1962年で終わっている。

ここで、時代を大きくさかのぼろう。古代の政治家といえば、やはり、ガイウス・ユリウス・カエサル。広大なガリアを征服し、ローマの帝政の基礎を築いた独裁官だ。政治家としても軍人としても超一流、しかも、女性にもてまくった(ハゲ頭だったのに)。さて、そんな偉人の名言とは。

「およそ、人のなすことには潮時というものがある。一度そのさし潮に乗じさえすれば幸運の渚に達しようが、乗りそこなったら最後、この世の船旅は災難続き、浅瀬に突っ込んだまま一生身動きが取れなくなる」

ライブドアのホリエモンの人生を彷彿させる。チャンスとみたら、すべてを賭けて勝負にでる!彼はそれに見事成功し、夢のような人生を駆け抜けた。カエサルがルビコン河を渡って、独裁官にのぼりつめたように。ということで、成功の秘訣は、さし潮に乗じること?

■経営者の名言

ホリエモンが登場したところで、経済界に目を向けてみよう。スティーブン・ジョブズは「新しい価値」を生みだす天才だが、世界一の商売上手といえば、石油王ジョン・ロックフェラーだろう。実際、ビルゲイツが登場するまで、お金持ちの代名詞といえば、ロックフェラーだった。彼の名言はふるっている。

良い経営とは、普通の人に優れた人の仕事の仕方を示すことにある

さすが、言うことなし。じつは、作家ドン・マークウィスも同じことを言っている。

成功者とは世の中で忙しくしている残りの人々の才能を考え出す人のことである

こっちの方がわかりやすいかな。でも、雇われの身としては、素直に感動できない。

ということで、スティーブン・ジョブズは自ら「価値」を生みだし、ロックフェラーは人に「価値」を生ませた。大成功を目指すとして、どっちが良いか?はあまり重要ではない。個人の価値観によるからだ。ただし、ビジネスで大成功を収めるには、一つ絶対条件がある。

誰もやらないことをやること

ジョブズは、Mac、iPod、iPhone、iPadと世にない商品を生み出した。でも、ロックフェラーは、石油を掘っただけ?

たしかに、ロックフェラーは新しい石油、新しい採掘方法を発明したわけではない。だが、もっとも凄いことをやっている。小金持ちが、油田を掘り当てるのに夢中だった時、ロックフェラーは、石油を運ぶ鉄道に目を付け、輸送を丸取りしようとしたのだ。結果、ロックフェラーに輸送を独占された他の業者は、高い輸送料を払うハメになり、競争力を失っていった。そして、最終的には、アメリカの石油産業はロックフェラーのスタンダードオイルに独占されたのである。ということで、ロックフェラーの「誰もやらないこと」とは、石油産業を「システム」でとらえたこと。

同時代、もう一人、商売の達人がいた。鉄鋼王アンドリュー・カーネギーである。カーネギーは、鉄鋼に人生を賭け、大成功をおさめた。その後、慈善家に転身し、財産のほとんどを寄付したが、カーネギーホールもその一つである。彼は、人一倍計算高い人物だったが、こんな言葉を残している。

最初の人が牡蛎(カキ)を得、二番目の人がその殻を得る

二番煎じはダメ、ということ。じゃあ、日本の電機メーカーを後追いで成功した韓国のサムスンや、電子受託製造(EMS)で世界最大手にのし上がり、シャープまで買収した台湾の鴻海(ホンハイ)は?全部物真似では?

ノー!

サムスンもホンハイも、自社の企業価値を、「製品」においているわけではない。何を作るかではなく、いかに作るか、つまり、彼らのアドバンテージは「経営スピード」にある。ビジネス、戦争、スポーツ、ジャンルは何であれ、スピードは最強の武器になるからだ。だから、サムスンとホンハイは、基本、何をやっても成功するだろう。

仰々しい名言がつづいたが、もっと、庶民的な格言・金言はないの?じつは1つある。P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)の創業者ジェームス・ギャンブルの言葉だ。

「満足な仕事ができないと思ったときは、素直に自分のレベルに合った仕事を探しなさい。たとえそれが石割りであっても」

身にしみる言葉だ。仕事で失敗し、妻(夫)や子供に逃げられ、友人にも見放され、人生に絶望したとき、どんなに励みになるだろう。しかも、現実的で具体的、暗闇の中に一筋の「希望」が見えてくる。合掌・・・

ところが、それを否定する格言もある。

希望とは、覚醒時に見る夢である

さて、どうしたものか?

《つづく》

by R.B

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