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週刊スモールトーク (第156話) ブラウザゲーム ~お手軽ゲームの未来~

カテゴリ : 社会科学

2011.06.12

ブラウザゲーム ~お手軽ゲームの未来~

■ゲーム革命

コンピュータゲームが産声を上げて40年、人間の一生にも満たないのに、驚くべき進化をとげた。ハードを見ても、

「ミニコン→パソコン→テレビゲーム機→ポータブルゲーム機(DS、PSP等)」

ここで一息と思いきや、一気にスマートフォンへ。100年間、ガソリン車のままの自動車と比べれば、せちがらい世界である。

アイフォン(iPhone)やアンドロイド(Android)をクドクド説明するまでもなく、スマートフォンの未来は明るい。あんな板切れ一枚で、電話、メール、サイト閲覧、買い物、電子書籍、ゲーム、カメラをカバーするのだから。もっとも、

「画面が小さい、操作がしづらい」

と文句を言う人たちもいる。そういう人には、iPadがおすすめだ。今後、個人市場では、iPadのようなタブレットPCがパソコンに取って代わるだろう。

そして今、コンピュータゲームは、

「専用機(テレビゲーム機)→汎用機(スマートフォン)」

というパラダイムシフトが起こりつつある。これは、20年前の

「汎用機(パソコン)→専用機(テレビゲーム機)」

の真逆。プラットフォームの根本が変わるわけで、20年に一度のゲーム革命と言っていいだろう。

しかし・・・

今回のゲーム革命は、プラットフォームだけでなく、「ゲームの作り方」まで変わろうとしている。じつは、これまでゲームと言えば「ネイティブアプリ」だった。ネイティブアプリとは、コンピュータの頭脳(CPU)が直接理解できる「ネイティブ(母語)」で書かれたプログラムのことである。Windows用アプリはMacでは動かないし、その逆も真なり、という互換の話。ネイティブアプリの良いところは高速、悪いところは、特定のハードでしか動作しないこと。なので、複数のハードに対応するには、ハード事にプログラムを作りなおす必要があった。

とはいえ、これまでは、パソコンならWindows、ゲーム機ならプレステ、Wii、XBox、DSのどれか一つに対応すれば良かった。ところが、スマートフォンとなると話は別。機種が多すぎて対応できないのだ。そこで、グーグルのアンドロイド(Andoroid)のような標準OSも出てきたが、完全な機種互換は難しい。もちろん、アイフォン(iPhone)は、そもそもがハードもOSも違うので互換はない。

では、パソコン、テレビゲーム機、アンドロイド、アイフォン、どんなデバイスでも動くゲームは作れないの?作れます!

これらのデバイスはハードもOSも違うが、「ウェブブラウザ」は必ず動作する。であれば、「ウェブブラウザ」で動くゲームを作れば、どんなデバイスでも動くのでは?しかり!というわけで、「ウェブブラウザ」環境で動くゲームのことを「ブラウザゲーム」と呼んでいる。ところで、「ウェブブラウザ」って何?

■ウェブブラウザ

「ウェブブラウザ」とはウェブサイトを閲覧するためのソフトで、今では知らない人はいないだろう。

代表的なものとして、

1.エクスプローラー(Explorer):1番手だが、シェア降下中。

2.ファイアフォックス(Firefox):伸び悩み。

3.クローム(Chrome):シェア上昇中。

4.サファリ(Safari):アップルならコレ。

5.オペラ(Opera):影が薄い。

※シェアが高い順(2011年6月時点))

ウェブブラウザは単に「ブラウザ」ともよばれる。これさえあれば、どんなデバイスでも、ウェブサイトを閲覧できる。ウェブサイトとは、インターネットの情報発信基地で、単に「サイト」とよばれることが多い。今では、ほんとんどの企業、組織がウェブサイトを公開している(中には個人も)。公開する目的は、商売、自己PR、自己満足、他人の中傷・・・といろいろ。

ここで、ウェブサイトの仕組みを見てみよう。ウェブサイトは複数のウェブページからなり、各ウェブページは「HTML」というコンピュータ言語で書かれている。え?文字とイメージに見えるけど、ウェブページってプログラム?HTML言語は汎用プログラミング言語ではないが、文章とイメージでページを作るための専用言語(マークアップ言語)である。だから、厳密にはウェブページはプログラムではない。

???

百聞は一見にしかず、実際にウェブページの中味を見てみよう。お使いのブラウザがエクスプローラなら「表示-ソース」を選択するだけ。すると、文章とイメージのはずのウェブページが、意味不明の宇宙語(HTML言語)に一変!そう、これがウェブページの正体なのだ。どこからどう見てもプログラム・・・ということで、ウェブページは広い意味でプログラム

この「宇宙語(HTML言語)」プログラムを実行するのがブラウザで、その結果として、見映えの良いウェブページが表示される。つまり、HTML言語で書きさえすれば、Windows、Mac、アイフォン、アンドロイド、ケータイ、何であってもウェブページを描画できる。であれば、普通のアプリ(ソフト)も、HTML言語で書けばどんなデバイスでも動く?しかり!

このようなアプリのことを「ウェブアプリ(ウェブアプリケーション)」とよんでいるのである。

■ウェブアプリVsデスクトップアプリ

その昔、コンピュータで仕事をするには、PCが1台あれば十分だった。ネットワークにつなぐ必要もない。文章の作成、表計算、ファイルのセーブ・ロードも、PC1台で完結する。これが「デスクトップアプリ」だ。ところが、先の「ウェブアプリ」はネットワークにつなぐのが大前提。

ネットワークにつなぐ分、ウェブアプリは何をするにもややこしい。クラインアント(ユーザー側PC)とサーバー(ネットワーク側PC)が通信しながら処理するからだ。

たとえば、ファイルをロードするだけでも、

1.クライアント側でファイルロードを指示。

2.指示がクライアントからサーバーに送信される。

3.指示に従いサーバーがファイルをロード。

4.ロード結果がサーバーからクライアントに送信される。

5.クライアント側でロード結果を表示。

つまり、クライアントの役割は、指示(入力)と表示(出力)で、処理そのものはサーバーで行う。これが、ウェブアプリの核心だ。

では、なぜこんなメンドーなことをするのか?ユーザーの管理が楽ちんだから。たとえば、ソフトにバグが見つかったり、機能が強化された場合、デスクトップアプリなら、ユーザーがバージョンアップしなければならない。ところが、ウェブアプリなら、ソフトはサーバーにあるので、サーバー側(業者)がバージョンアップする。ユーザーは何もしなくていいわけだ。

さらにデータの管理も手間いらず。デスクトップアプリなら、ユーザーがディスクを準備し、データ管理も自分で行う(バックアップ含めて)。ところが、ウェブアプリならサーバー側でディスクを用意してくれるし、データ管理もおまかせ。

つまり、ウェブアプリは、ブラウザが動くショボイPCを1台を用意するだけでいい。この仕組みを極限まで追求したのが「クラウド」だ。クラウドは、特に期間限定の業務で威力を発揮する。たとえば、政府のエコカー減税業務。処理する数が膨大なので、コンピュータの数も半端ではない。ところが、期間限定なので、自前でコンピュータをそろえると後が大変だ(廃棄するしかない?)。

ところが、クラウドなら、自前でハードもソフトもそろえる必要はない。すべてクラウド業者が用意する。つまり、クラウドはモノではなくサービスにお金を払うわけだ。数十年前、計算機センターはコンピュータの使用料で儲けたが、それと同じ。

一方、クラウドに不信感をもつ人もいる・・・クラウド?データはサーバー側にあるって?そのサーバーはどこにあるんだ?秘密?おいおい、大丈夫か?どこの馬の骨ともわからない連中がのぞき見したら、どうするんだ!実際はそう簡単ではないのだが・・・ところが、そんな心配が現実になってしまった。

2011年4月27日、ソニーの「プレステ」ネットワークに何者かが不正侵入し、合計1億人以上の個人情報が漏洩した。クレジットカード情報が流出した可能性もあるという。すったもんだのあげく、インターネットセキュリティ史上最大の情報流出事件になってしまった。「自前」じゃなく「クラウド」なんかに頼るからだという非難もあるが、本末転倒だろう。問題はクラウドではなく、ウェブアプリ、さらにはインターネットにあるからだ。そもそも、クラウドを利用しようが、自前でシステムを構えようが、セキュリティリスクは大して変わらない。

もちろん、今回の事件で、ウェブアプリやクラウドが衰退することはない。すでに、インターネットは文明の大動脈になっているし、代替品も見あたらない。セキュリティを強化しながら、発展させていくしかないだろう。

■ウェブアプリの問題

ところが、ウェブアプリにはもっとやっかいな問題がある。ネットワークがないと何もできないこと。たとえば、飛行機や地下鉄では全く使えないし、普通の電車でも、3G(無線)はいいが、WiMAX(無線)はダメ。そのうえ、どんな単純な処理も、クライアントとサーバーが通信が間に入るので、レスポンスは最悪

ということで、ゲームはムリ。

そもそも、世界を救うのに忙しいゲーマーは、1/10秒を競っている。たかが”指”の運動と思うなかれ、本人はいたって本気なのである。動作がモッサリ?とんでもない、ことは命にかかわるのだ?!

ウェブアプリの問題はまだある。今のHTML言語だと、テキストとイメージしか扱えない。え?ウェブサイトでフツーにムービー見れますけど。あれは、HTMLではなく、Flash(プラグインソフト)でやっているのだ。ところが、Flashを使うにはインストールが必要になる。え?ウェブアプリのメリットは「インストール不要」だったはず。矛盾してません?

そこで、こんな不満を解消するために策定されたのが「HTML5」だ。

「HTML5」はHTML言語の新しいバージョンで、2012年3月に勧告される予定である。ちなみに現在のバージョンは「HTML4.01」で、差は1もないが、中味は別モノ。

「HTML5」は、最近進化が著しいJavaScript言語と組み合わせれば、テキスト、音、静止画、動画を統合する万能プラットフォームが生まれるかもしれない。さらに、この万能プラットフォームから、書籍でも、漫画でも、映画でも、ゲームでもない、全く新しいメディアが生まれる可能性もある。もちろん、そうなれば、

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by R.B

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