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週刊スモールトーク (第155話) 本の未来Ⅱ~ウェブ書籍~

カテゴリ : 社会科学

2011.05.14

本の未来Ⅱ~ウェブ書籍~

■マスメディアの歴史

本はやがて「陶磁器」になる。つまり、実用品ではなく骨董品。いよいよ、電子書籍の時代?そうでもない。電子書籍は一時的に世間をにぎわすだろうが、最終的には「次世代ウェブ」に吸収される。さらに、10年を待たずに、書籍、雑誌(漫画)、アニメ、ドラマ、ゲーム、ニュース ・・・ あらゆるコンテンツが「次世代ウェブ」にのみこまれていく

歴史を15世紀にさかのぼろう。グーテンベルクが活版印刷術を確立し、初めて、文書の大量コピーが可能になった。現代の印刷本である。結果、一部の階級が独占していた「知」が広く大衆にまで広がった。これが「大衆知の第1革命」である。その功績で、本は「史上初のマスメディア」の名誉を手にしたが、欠点もあった。「文字とイメージ」しか扱えないこと。

時代は進んで、1906年のクリスマスイブ、米国のレジナルド・フェッセンデンは史上初のラジオ番組を放送した。無線局も番組も自前で、自ら聖書を朗読してみせた。こうして、フェッセンデンはラジオ放送史の第1ページにその名を刻んだ。

ラジオには本や新聞にないアドバンテージがあった。「速報性」である。ラジオは印刷は不要だし、伝搬速度は電波の速度、つまり光速。こと、スピードに限れば、ラジオは宇宙一だった。ところが、そんなラジオにも欠点があった。「音」しか扱えないこと。

その30年後、1935年、ドイツで世界初のテレビ放送がはじまった。その翌年の8月には、ベルリンオリンピックが開催され、ヒトラーの気合いの入った演説と、選手たちの熱い戦いが中継された。テレビは「動画と音と文字」が扱え、しかも、ラジオの「速報性」まで備える。まさに、究極のマスメディア、テレビの時代は永遠に続くかと思われた。

ところが、1977年、全く新しいメディアが登場する。パソコンである。この年、アップル社が発売したAppleⅡは、市場に氾濫する「なんちゃってパソコン」を一掃し、現代のパソコンのスタンダードを確立した。AppleⅡは、文字、イメージ、アニメーション、音にくわえ、テレビにはない機能も備えていた。対話機能(インターラクティブ性)である。このユニークな仕掛けは、新しいエンターテインメント「コンピュータゲーム」を創造し、映画と並ぶ「テレビゲーム市場」にまで発展した。

一方、テレビゲームにゲームを奪われたパソコンは、インターネットに活路を見いだした。ウェブ(Web)である。ウェブとは、無数のウェブページを相互に参照できるシステムで、インターネットの根幹をなす。仕組みはいたって簡単、ウェブページのキーワードに別のウェブページの住所(URI)を埋め込んでおき、そのキーワードがクリック(タッチ)されると、その住所(URI)に対応するウェブページを表示するのである。ちなみに、このような関連づけを「リンクを張る」と呼んでいる。

一見、オモチャのような仕掛けだが、パーフォーマンスは絶大だ。ウェブページに張られた「リンク」をたどるだけで、知識を無限に深掘りできる。いわば、「飛び込む本」。また、キーワードを検索エンジンで直接調べることもできる。つまり、「ウェブ + 検索エンジン」は究極の知のツール、「大衆知の第2革命」と言っていいだろう。

ということで、こんな凄いものがあるのに、なんでわざわざ電子書籍?「紙の本」なら「骨董品」としての価値はあるだろうが。

■電子書籍 Vs ウェブ書籍

この「週刊スモールトーク」は、もちろんウェブ。それを電子書籍にすると、どんないいことがあるのか(読者にとって)?たとえば、アマゾンから出版するとして、先ず、アマゾンと契約し、電子書籍フォーマットに変換し、アマゾンのサイトにアップロードする。それを読者がダウンロードして読む。ただし、有料 ・・・

え?カネとるのかよ、そこまでして読みたくねー、で終わるに決まっている。こんな独りよがりのたわごとを、誰がカネを払ってまで読みますか?しかり!

つまり、週刊スモールトークを電子書籍にした瞬間 ・・・
「有料 → 読者は雲消霧散 → 作者は意気消沈 → 週刊スモールトーク廃刊」
つまり、誰も得をしない。

ここで、「電子書籍」とウェブで公開する「ウェブ書籍」を比較してみよう。

 
ウェブ書籍
電子書籍
仕掛け インターネットのウェブサイト 電子書籍システム
おカネ 無料 有料
ダウンロード 不要 必要
電子デバイス ブラウザが動作すれば何でもいい 電子書籍リーダー
データの更新
常に最新データで読める
再ダウンロードする必要あり

表を見る限り、
ウェブ書籍 >> 電子書籍

もちろん、この法則は”お気軽”週刊スモールトークだけでなく、”高尚な”小説、雑誌、専門書、漫画にもあてはまる。

ではなぜ、作家や出版会社は電子書籍に執着するのか?ウェブはカネにならないから。グーグル・アドセンス(Adsense)のような広告もあるが、チャリ~ン ・・・ ランチ代にもならない(週刊スモールトークの場合)。一方、電子書籍なら、本よりは安いが、カネはとれる。

そんな欲深い一派を尻目に、ウェブサイトで漫画を無料公開している漫画家がいる。ただし、絶版になった作品だけ。「絶版=作品の死」なので、タダで読んでもらうほうがマシ、というわけだ。もちろん、旧作を読んで、新作を買ってくれる人もいるだろう。つまり、「旧作の無料公開」を「新作の宣伝広告費」とみているわけだ。ん~、なかなかのビジネスマン。

一方、新作をウェブで公開している漫画家もいる。ただし、こちらは有料。会員制にしておカネを取っているのだ。もっとも、電子書籍とは違い、仲介業者が中抜きにされている。つまり、作家と読者だけの世界。これがコンテンツのあるべき姿だろう。そもそも、クリエーターが生む価値をピンハネして暮らそうなんて浅ましいぞ ・・・

こういう状況の中、欲深い一派は日本電子書籍出版社協会を設立し、生き残りを目論んでいる。頭にあるのは、
1.おカネを徴収するには?
2.不法コピーを防ぐには?

読者の都合はどこへ行った?

ウェブは無料コンテンツでにぎわっているのに、そんな強気で大丈夫かなぁ?

すでに、ウェブはブログが花盛り。おかげで、みんな文章が上手くなった。批評、エッセイ、小説 ・・・ プロ顔負けのコンテンツが山ほどある。有料?ほー、どんな素晴らしい内容でしょう?の世界。それに、課金の仕組みはウェブでもできる。というわけで、有料・無料をとわず、電子書籍に未来はない。また、ダウンロードやデータ更新の面倒くささ、デバイスの自由度からみても、ウェブ書籍は電子書籍を圧倒する。

どう考えても、電子書籍は教科書や大御所の作品以外では成立しない。では、小説家や漫画家はどうやって食っていくの?心配無用。今でも、小説や漫画だけで食っている人はほとんどいない。つまり、困るのは大御所だけ。コンテンツの未来は「ウェブ&フリー(無料)」と割り切ったほうがいい。

その兆しは、すでにゲーム市場にあらわれている。テレビゲームは据え置き型からポータブル(DS、PSP)へシフトし、さらに一気にスマートフォンへ。アイフォン(iPhone)やアンドロイド(Andoroid)の台頭は目覚ましい。ところが、そこで待っていたのは恐ろしい「フリー(タダ)の世界」 ・・・

ゲームの地殻変動はさらに続く。ゲームが行き着いたスマートフォンには、別の革命が待ちうけている。パソコンの先を行く、
ブラウザゲーム(ウェブアプリの一つ)」

このプラットフォームが普及すれば、ゲームだけでなく、コンピュータソフト(アプリ)、本、漫画、アニメ、ドラマ、ニュース、すべてのコンテンツはウェブに大統合される。もちろん、売る側目線の「電子書籍」が入る余地はない。「大衆知の第3革命」はそこまで来ているのだ。

《完》

by R.B

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