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週刊スモールトーク (第145話) 大洪水時代(4)~シュメール宇宙人説~

カテゴリ : 歴史終末

2010.08.01

大洪水時代(4)~シュメール宇宙人説~

■大洪水の仕組み

大洪水伝説のいくつかは史実だろうし、文明が丸ごと破壊されたこともあっただろう。だが、
地球を丸呑みにする大洪水
となると話は別だ。

科学的に考えてみよう。地球を丸呑みにするには、膨大な水が必要だが、そんなものをどこからもってくるのだ?問題はまだある。ノアの方舟やギルガメシュ叙事詩によれば、大洪水の後、しばらくして、水が引いたとある。ということは、
「地球を呑み込むほどの大量の水が放出し、その後、全部消えた?」
これは説明が難しい。

地球は水の惑星と言われるが、その97.5%は海水である。すると、残り2.5%の水で、地球を丸呑みする必要がある。では、その2.5%の水はどこにあるのか?

多い順に列挙すると、

1.氷河

2.地下水

3.湖・河川

4.大気中の水蒸気

さて、大洪水を引き起こすのはどれ?まず、「増水後、まもなく減水」を考慮すると、「1.氷河」はムリ。地球上の氷を一気に溶かし、その後、一気に冷やす?デススターから熱線砲を照射し、その後、冷却砲を浴びせる・・・まぁ、こんな程度の説明しか思いつかない。だいいち、北極海の氷に限れば、海に浮いているので、溶けても海面は上昇しない。

「2.地下水」も、「増水後の減水」がクリアできない。もちろん、「3.湖や河川」は初めから地表にあるので、増水には貢献しない。ということで、大洪水の原因になりうるのは「4.大気中の水蒸気」のみ。

大気中の水蒸気は、雨や雪となって陸や海に降りそそぎ、それが蒸発して、大気にもどる。この循環で、地球の水の量は一定に保たれているわけだ。ただ、何かの理由で、この循環水が一気に地表に降り注げば、洪水になりうる。だが、問題は水の量だ。循環水が地表に表出したとして、海面をどれだけ押し上げるか?さっそく計算してみよう。

・循環する水量=490,000,000,000,000トン

・地球の表面積=509,949,000,000,000平方メートル

なので、循環水が一気に地表に降り注ぐとすると、

・海面の上昇=490,000,000,000,000÷509,949,000,000,000≒1メートル

たったの1メートル!この単純な計算は陸地のデコボコを無視しているので、実際はもう少し上昇するだろう。とはいえ、この程度では、地球を丸呑みにするのはムリ。

そこで、「氷河+地下水+湖・河川+大気の水蒸気」のすべてが一気に地表に表出したとしよう。その場合は、

・海面の上昇=75メートル

海面が75メートルも上昇すれば、沿岸部の都市はすべて水没する。世界の主要都市の多くは海沿いなので、一応、地球規模の大洪水にはなる。とはいえ、地球を呑み込むにはほど遠い。現在、最も高地にある首都はボリビアのラ・パスで、標高3650メートル。なので、「地球上の生物を絶滅させる」ためには、3000メートル超の海面上昇が必要だ。つまり、ありったけの水を放出しても、ノアの大洪水は起こせない。

■津波説

一方、水が地球外から持ち込まれたという説もある。これなら、水の量に制限はないが、「増水後の減水」はやはり説明できない。地球空洞説を容認するなら別だが。そこで、発想を変えて、「じつは大洪水ではなく、大津波だった」。これなら、増水後の減水も説明がつくし、海面を1キロメートル上昇させることも可能だ。ただし、地震による津波ではムリ。地形にもよるが、波高が30メートルを超えることはまれだからだ。

今から、6500万年前、地球に直径10kmの隕石が衝突した。場所は、南北アメリカのつなぎ目、ユカタン半島。その時の衝突エネルギーは、核弾頭ミサイル6000万個分。想像を絶する大破壊で、地球上の生物種の60%、海洋生物の75%が絶滅した。この衝撃で、高さ数千メートルの津波が発生し、メキシコ湾沿岸には高さ1キロメートルの津波が押し寄せた言う。地球を呑み込む大洪水ならこれしかない。

ところが、「地球大洪水」には、もっと”まともな”説もある。

「地球を呑み込む大洪水」→じつは、地域限定の小洪水

「すべての動物のつがいを船に乗せた」→食用に、庭の家畜を乗せた

面白くも何ともない。そう、頭が良くて、常識のある識者というのは、こんな”まとも”な発想しか出てこないのだ。

たとえば、ギルガメシュ叙事詩に記された大洪水はシュメールで起こっている。この地には有名なティグリス河・ユーフラテス河が流れている。中でも、ティグリス河は山の支流が本流に合流するため、増水しやすい。1日で水位が4メートルも上昇したこともあったという。古代の町なら、丸ごと水没だ。高地から見下ろせば、地球を丸呑みにする大洪水・・・なるほど、これで一件落着。

ということで、なんとも退屈な落とし所に落ちてしまった。これで終わり?いや、真実がみんなが納得する「常識的な答え」とは限らない。そもそも、大洪水伝説はノアの方舟とギルガメシュ叙事詩だけではないのだ。

■全長1kmの大船

旧約聖書によれば、ノアの方舟は全長135m、全幅23m。一方、ギルガメシュ叙事詩のウトナピシュティムの船は全長60m~120m、全幅60m。木造船にしては大きいが、じつは、もっとデカイ船もある。出典はバビロニアの神官ベロッソスが記した「バビロニア史」。この書版が成立したのは紀元前3世紀なので、ノアの方舟やギルガメシュ叙事詩より新しい。

「バビロニア史」にも大洪水の記述があり、内容はノアの方舟、ギルガメシュ叙事詩ソックリ。

違いは主人公の名前くらいだ。

1.ノアの方舟→ノア

2.ギルガメシュ叙事詩→ウトナピシュティム

3.バビロニア史→クシストロス

という具合。

ところが、大きく食い違う点がある。舟のサイズだ。「バビロニア史」に登場する舟のサイズは、全長5スタディオン、幅2スタディオン(※1)。スタディオンは、古代バビロニアで使われた長さの単位で、
1スタディオン≒180メートル
すると、全長900メートル、全幅360メートル!ちなみに、2010年、世界最大の船で全長458メートル。なんとその2倍。

これほど長大だと、テコの原理が効いて、船体にとてつもない力が加わる。木造なら船体構造を維持することさえ難しい。もっとも、舟と言っても洪水が引くのを待つだけなので、航行する必要はない。剛性(丈夫さ)だけが取り柄の「浮かぶ箱」でもいいわけだ。

また、「バビロニア史」には、舟はアルメニアの山脈に漂着したとある。アルメニアは高地にあり、3000メートル級の山も珍しくない。その一つがアララト山だ。アララト山は、古くから、アルメニア人のシンボルとされてきた。また、ノアの洪水伝説によれば、方舟が漂着したのがこのアララト山。

ベロッソスの「バビロニア史」によれば、近くに住むアルメニア人たちはノアの方舟のアスファルトをはがし、持ち帰って毒消し(お守り)にしたという(※1)。ベロッソスは、ギルガメシュ叙事詩を原典にしつつ、アルメニアに伝わる方舟伝説も書き足したのかもしれない。とすると、信憑性が高い。それがノアの方舟だったかどうかは別として。

■洪水伝説の系譜

ということで、世界にはたくさんの大洪水伝説がある。ヘブライ、メソポタミア、ギリシャ、インド、アステカ、マヤ、南米のインカ、北米のホピ族、そして中国・・・枚挙にいとまがない。

ただ、次の4つのイベントを含んだ洪水伝説は、ヘブライとメソポタミアに限られる。

1.神は、地球上の生物を滅ぼすため、大洪水をおこした。

2.神は、大洪水から逃れる方法を1人の人間に教えた。

3.彼は、言われるまま舟を造り、家族と動物を乗せた。

4.洪水の後、舟は山に漂着し、彼らだけが助かった。

じつは、この「ノアの方舟系・大洪水伝説」にはオリジナル(元祖)が存在する。「古代シュメール語版・大洪水伝説」だ。ここで、ノアの方舟系・大洪水伝説の系譜を整理しよう。

【古代シュメール語版】
    |→【ギルガメシュ叙事詩】

   |→【アトラ(ム)・ハシース物語】(異端の書?

 

【ギルガメシュ叙事詩】
    |→【ノアの方舟】
    |→【バビロニア史】

つまり、すべては「古代シューメル語版」に通ず。この「古代シューメル語版」は、20世紀初頭、シュメールの町ニップルで発見された。ところが、残念なことに、全体の2/3が消失している。しかも、ギルガメシュ叙事詩のように類似の書板が見つかっていないので、消失部をおぎなうこともできない。一方、書かれた時期は紀元前3000年~紀元前2500年なので、ギルガメシュ叙事詩の最古バージョン「古バビロニア版」より1000年も古い。

ここで、「古代シュメール語版」を要約しよう。

1.神々が人間を創造した後、5つの町をつくった。

2.その5番目の町がシュルッバクだった。

3.神々は人間の種を滅ぼすために大洪水をおこそうとした。

4.神エンキはシュルッバクの主ジウスドゥラに大洪水の計画を教えた。

5.ジウスドゥラは船を作り、大洪水から逃れ、人間と動物の種子を守った。

6.ジウスドゥラは氷遠の生命を与えられ、楽園ディルムンに住んだ。

ジウスドゥラは、この物語の主人公で、ノアの方舟のノア、ギルガメンュ叙事詩のウトゥナピシュテムに相当する。ちなみに、「ジウスドゥラ」とはシュメル語で「永遠の生命」の意味。ということで、

ノアの方舟系・大洪水伝説の起源はシュメールだった・・・

ところで、そのシュメールだが、何から何まで謎だらけ。

■謎の文明シュメール

紀元前3500年頃、シュメールは歴史上初の都市国家を建設した。灌漑農耕により農地が拡大し、人口が増え、支配階級や職人・商人も出現した。さらに、歴史上最古の「楔形文字」を使い、他国と交易も行った。

ところで、その頃の日本は・・・

縄文時代中期、人々はまだ竪穴式住居で暮らしていた。小さな集落を形成し、木器や土器をつくり、ドングリやクリを食べていたのである。生きるのに精一杯・・・今もたいして変わらない気もするが。

ということで、シュメールが高い文明をもっていたことは確かだ。つぎに、シュメールの歴史年表を見てみよう。

紀元前3500年:メソポタミア南部に都市国家シュメールが出現する。

紀元前2600年:ギルガメシュ王が都市ウルクを統治する。

紀元前2350年:都市ウルクがシュメールを初めて統一する。

紀元前2300年:アッカド王国が興り、シュメールを併合する。

紀元前2250年:アッカド王国に異民族が侵入し、大混乱になる。

紀元前2200年:混乱に紛れ、シュメール都市ウルがアッカド王国から独立。

その後間もなく:ウルにエラム王国が侵攻し、シュメールは完全に滅亡する。

上記の年表によれば、シュメールは紀元前3500年頃、メソポタミア最南端のティグリス・ユーフラテス河畔に”突然”出現する。ここで、”突然”としたのは理由がある。じつは、この地方には紀元前8000年頃からウバイド文化という農耕文明が存在した。ところが、この文明の担い手はシュメール人ではないらしい。しかも、後を継いだはずのシュメール人はウバイド文化をほとんど継承していない。つまり、紀元前3500年頃、シュメール人はこの地に”突然”高度な文明を築いたのである。

文明は、たいてい小さな集落から始まり、段階的に発展していく。だから、高度な文明が”突然”出現するのは不自然である。このような例外文明はまだある。古代インドの都市モヘンジョダロだ。この町はインダス文明最大の都市で、突然出現し、突然破棄された。モヘンジョダロとシュメールにはもう一つ共通点がある。初めに高度な文明が出現し、その後、ほとんど進化しなかった点だ。モヘンジョダロにいたっては、むしろ退化している。誰かに与えられただけなので、自力で発展させられなかった?

シュメールの歴史年表にもどろう。その後、サルゴン王がアッカド王国を建国し、地中海やアナトリア半島まで領土を広げた。やがて、この地域は、セム系語族(アラビア語・ヘブライ語など)が優勢になり、シュメール人は歴史から完全に消える。しかも、彼らが使ったシュメール語は地球上のどの言語系統にも属さない。つまり、シュメールは地球の文明の中で完全に孤立しているのだ。だが、シュメールの謎はこれだけではない。

■シュメール宇宙人説

シュメールの謎に大胆不敵な説を唱える人がいる。ニューヨーク在住のゼカリア・シッチンだ。彼は、古代ヘブライ語をはじめ、様々な言語を学び、フリンジ(疑似科学)な著作に余念がない。ただ、一部熱心な信奉者がいるので、神経を逆なでするようなツッコミは差し控えたい。以下、ゼカリア・シッチンの著書「失われた王国」(※3)より・・・

紀元前4000年、惑星ニビルは大気が薄くなり、惑星表面の熱を保持できなくなった。そこで、惑星ニビルの科学者たちは、金の粉末を空高く浮遊させ、大気の機能を回復させることにした。惑星ニビルの統治者アヌ(メソポタミア神話の神々の王)は、地球に基地を建設し、金を採掘するよう命じた。

ある時、金鉱で採掘作業をしていたアヌンナキ(メソポタミア神話では神々の総称)が反乱をおこした。彼らは本来は宇宙飛行士なので、肉体労働がイヤになったのである。

そこで、エンキ(メソポタミア神話の創造神エア)は、アヌナンキに代わる労働者を創ることにした。地球の東アフリカに生息する猿人に、アヌンナキの遺伝子をくわえ、「合成労働者」を創造したのである。この人造人間には生殖能力がなかったが、エンキとニンフルサグは改良を重ね、完全なモデルをつくりあげた。彼は「アダム」と名づけられた。

こうして、「合成労働者」が金の採掘を行い、アヌナンキは肉体労働から解放された。ところが、アヌナンキの中に人間の娘を妻とし子供を産ませる者もあらわれた。エンリル(メソポタミア神話の風と嵐の神)は、これを苦々しく思った。

ある時、科学者たちが驚くべき報告をする。地球の南極にある氷冠(氷の塊)が不安定になっており、次に惑星ニビルが地球の近くを通りすぎる時、その引カで、氷冠が大陸から滑り落ちるというのだ(惑星ニビルは3600年周期の超長楕円軌道で太陽を周回するという)。そうなれば、世界中で大洪水がおこり、太洋と地表の温度が突然変化し、未曾有の大嵐が吹き荒れるという(大嵐の記述はギルガメシュ叙事詩にもある)。

この報告を聞いたエンリルは地球を放棄することにした。そして、宇宙船で脱出する命令をくだしたのである。すると、人間(合成労働者)の生みの親エンキとニンフルサグは、

「人間はどうするのだ?」

と尋ねた。エンリルは言った。

人間は抹殺する

そして、エンリルはすべてのアヌンナキたちにこのことは秘密にしておくように誓わせた。

ところが、壁に話しかけるふりをして、エンキは自分に忠実なジウスドゥラ(古代シュメール語版・洪水伝説の主人公)に「ティパツ」をつくるように指示した。それは潜水できる船で、大洪水がきても、ジウスドゥラと家族、そして動物たちは生きのびることができる。そうすれば、地球上の生命が絶えることはない。

やがて、巨大な洪水がおこり、その後、水は引いた。エンリルは、人間が生きていたことを知り激怒したが、すぐにおさまった。アヌンナキが地球上にとどまるごとができるとわかったからである。人類が生きながらえ、増加し、アヌンナキの助けになれるように、人類に3つの文明が与えられた。これが、人類文明の起源となった。

さては、奇想天外なトンデモ説。

ところが・・・

シュメールから出土した粘土板に、これを暗示するような記述がある。たとえば、ウェルド・プランデルのプリズム形刻文「W・B444」には、つぎのように書かれている。
「大洪水が起こった。大洪水が来たあと、王が天より降った。王はキシュにいた」(※1)

キシュとは古代シュメールの実在した町。

これをシッチン風にアレンジすると、
「大洪が起こった。大洪水が来たあと、支配者(エイリアン)が天より舞い降りた。支配者はキシュに住み、人間を統治した」

ここで留意すべきは、プリズム形刻文「W・B444」は、「神話」より「歴史年表」に近いという点だ。

一方、ギルガメシュ叙事詩にも同じような記述がある。
「シュルッパクは、お前も知っている町だが、ユーフラテス河の河岸に位置している。それは古い町で、中に神々が住んでいた」(※1)

たいていの神話では、神は天にいるものだ。間違っても、町で人間と暮らしたりはしない。ところが、
町中に神々が住んでいた
じつは、神々とはエイリアンのことで、人間を統治し、人間に知恵を授けるために、町に住んでいた?

前述したノアの方舟系・大洪水伝説の系譜で、最も興味深いのは「アトラ(ム)・ハシース物語」だ。この書版は、ギルガメシュ叙事詩の発見者ジョージスミスが、アッシリアの古都ニネヴェで発掘したものである。内容はギルガメシュ叙事詩ソックリだが、他の書版にない驚くべき記述がある・・・

労働を肩代わりさせるために創造された人間が増えすぎ、神々を悩ました。立腹したエンリル神は人間を滅ぼすことをもくろむが失敗する。そこで、大洪水をおこすことにした。ところが、エア神から洪水を知らされたアトラ(ム)・ハシースは船に家族や動物を乗船させ、大洪水から逃れた。アトラ(ム)・ハシスが助かったことでエア神は神々から非難された。そして、再び人間が増えすぎることのないように戦争と不妊が定められた(※2)。

さて、「アトラ(ム)・ハシース物語」はギルガメシュ叙事詩系の書版でありながら、異色の洪水伝説にみえる。正典でありながら、異色の聖書とされるヨハネの黙示録を彷彿させる。だが、こんなこと、大した問題ではない。問題は、

労働を肩代わりするために創造された人間

シッチン説は荒唐無稽、と言い切れない理由がココにある。じつのところ、我々は何も分かっていないのかもしれない。

《完》

参考文献:
(※1)「ギルガメシュ叙事詩(ちくま学芸文庫)」矢島文夫著/筑摩書房
(※2)「シュメル―人類最古の文明(中公新書)」小林登志子著/中央公論新社
(※3)「失われた王国―古代「黄金文明」の興亡と惑星ニビルの神々」ゼカリア・シッチン著竹内慧訳/徳間書店

by R.B

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