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週刊スモールトーク (第102話) 崩壊する都市文明

カテゴリ : 社会

2008.01.05

崩壊する都市文明

■プチ カタストロフィー

2008年正月。21世紀に入り、すでに7年が経過した。年明け早々、暗い未来を吹聴する悲観論者、バラ色の未来を熱く語る楽観主義者、こんなレトリックな正月風景はいつもとかわらない。もっとも、希望に満ちた昭和40年代とくらべると、数の上では、悲観論者が楽観論者を圧倒する。嫌な予感がする今日この頃だ。

一般に、未来予測と言えば「当たるか当たらないか」。予測の意味を考えれば、まぁ、当たり前なのだが、忘れてはならないのが、バイアスがかかっているかどうか。権威づけされた予測は、たいてい、それを口にする者の利害に歪められているからだ。たとえば、地球の温暖化にブレーキをかけようとする京都議定書に対し、アメリカのブッシュ大統領はこう公言した。
「京都議定書は非科学的だ。こんな目標を達成できる国はない」

京都議定書は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素など温室効果ガス削減の目標を定めている。この二酸化炭素排出の主因となっているのが、石油などの化石燃料だが、ブッシュ家が石油利権と密結合しているのは公然の秘密。京都議定書をのめば、石油の消費量は激減し、石油利権はそこなわれる。みえみえの魂胆と、バカでも分かる図式だ。いずれにせよ、予測の文面が真実であったとしても、裏に潜む真意を見逃せば、彼らのもくろみに加担することになる。だから、予測を棒読みするのは危険だ。

第二次世界大戦が終って半世紀以上、われわれは、世界規模のカタストロフィー(破局)から逃れてきた。キューバー危機のように、全面核戦争の縁に立ったこともあったが、アメリカの指導者とソ連の指導者に救われた。ケネディとフルシチョフは、まぎれもない人類の恩人だ。後世、全面核戦争が起こったとき、人類はあらためて、ケネディとフルシチョフの功績を思い起こすだろう。

何ごとも周期があるのかもしれない。地球上の生物種は、この2億5000万年の間で、2600万年ごとに大量絶滅しているという。おそろしく長い周期だが、周期がある以上、何か原因があるはずだ。つまり、偶然ではなく必然。月の満ち欠けの周期は29.5日、季節の周期は365日、氷河期の周期は10万年。いずれも、仕組みはわかっているが、2600万年の周期ともなると、原因を特定するのは難しい。

古代マヤ暦にからめて、2012年12月22日に世界は終わるという予言がある。この予言は、187万2000日(約5128年)というマヤ暦の長期暦によっているが、もっと周期の短いプチ カタストロフィー(破局)もあるかもしれない。ここ数年、起こっている自然災害や人災をみていると、そんな気がしてくる。

未来を予測し、災いに備えることは大切だが、必要のない場合もある。陽子崩壊隕石衝突全面核戦争。現実に起これば、逃げも隠れもできないわけで、備える必要はないだろう。やっかいなのは、中途半端な災いだ。助かる人と死ぬ人がいる場合。全員死ぬならあきらめもつくが、助かる者がいれば欲も出てくる。

ということで、神経をとがらせるべきは、全滅ではなく、もっと身近な?大災害。たとえば、大津波が人口密集地を直撃すれば、何千、何万という犠牲者がでるが、海辺に住まなければいいわけだ。そこで、いつ起こってもおかしくないプチ カタストロフィーを挙げてみよう。
1.地球温暖化
2.水資源の枯渇
3.限定核戦争
4.パンデミック(世界的な感染爆発)

■地球温暖化

京都議定書が決議された後も、地球温暖化の問題はさまざまな議論をよんでいる。悲観論者と楽観論者がいるわけだ。たとえば、温室効果ガス(二酸化炭素やメタンガスなど)が、地球の温暖化を引き起こしているという説、そうではないという説。ブッシュ家のように後者を支持する人たちは、二酸化炭素の排出を減らすために、石油消費を減らす必要はないと公言している。

だが、これは間違っている。地球温暖化のような、長期的かつ大規模な災害を引き起こす可能性があれば、すべての原因に対処すべきだ。つまり、「疑わしきは罰する」。だから、京都議定書に反対する人は、目立ちたいか、利害がからんでいるか、バカか、のいずれかだ。もし、カタストロフィーを引き起こす可能性があるなら、100%証明する必要はない。そんな暇があったら、最悪に備えたほうがいい。手遅れになれば、「すべてなかったことにしよう」ではすまされないからだ。

たとえば、南極やグリーランドの氷床がとけだせば、海面の水位が数メートル上昇するという報告がある。そうなれば、地球の多くの都市は海に沈む。古代より、町は海沿いに建設されているからだ。東京なら、海面が1メートル上昇するだけで、数百万人が被害を受けるという。まして、海面が数メートルも上昇すれば、被害は想像を絶する。南太平洋には、海抜1メートル未満の島々が多数存在するが、一国丸ごと消滅する場合もあるだろう。被害は水没する国にとどまらない。大量の難民が発生し、周辺国におしよせ、深刻な問題を引き起こすだろう。

一方、水位が上昇しないという説もある。ところが、2007年、気になる現象が起きている。北極海の氷が、2007年だけで30年分もとけだしたというのだ。北極海の氷は海に浮いているため、とけても海面の水位は変わらない。問題は、温暖化が急加速している点だ。

また、地球温暖化は、別の災害もひきおこす。地球全域で、熱帯化がすすみ、かつてない巨大な台風(ハリケーン・サイクロン)が発生するようになる。日本の木造家屋など、ひとたまりもないだろう。また、砂漠化もすすみ、100年に一度起こるような大かんばつが、ひんぱんに起こるようになる。結果、深刻な水飢饉が起こり、水が資源戦争の主役になる可能性もある。

■水資源の枯渇

日本で暮らしていると、水資源の危機といわれてもピンとこない。ところが、地球全体で見ると、事態はかなり深刻だ。具体的な数字を見てみよう。水不足に直面している人々は、西暦2000年で5億人、2025 年には30億人に達するという。また、水の感染症で、毎日1万~2万人もの子供達が死んでいる。水が不足しているだけでなく、水質まで汚染されているのだ。たかが水と思うなかれ、水がなければ人間は1週間も生きられない。水は、空気につぐ緊急性の高い資源なのだ。

世界的にみれば、日本は水資源の豊かな国だが、最近は様子がおかしい。夏場の気温が上昇し、2007年の夏には、観測史上最高の40度を記録した。まるでインド。昔は、30度を超えると、酷暑と言われたものだ。そのためか、水の供給制限が珍しくなくなっている。一方、世界の水不足はさらに深刻だ。アフリカのみならず、メキシコ、イランでも深刻な水不足が起きている。かつて、油田を求めて、世界大戦が起こったが、次は水資源を求めて紛争が起こるかもしれない。石油は代替可能だが、水はそうはいかない。水資源をめぐる紛争は、生死を賭けた戦いになるだろう。

一方、日本のように周囲が海で囲まれていれば、海水の淡水化で真水を得ることができる。ただし、内陸部はそうはいかない。水不足からくるカタストロフィーは、地域に大きく依存しているのだ。水不足を危機としてとらえるなら、住む場所を考える必要がある。求人数、通勤の便、ネオン街の有無ではなく、
1.海岸に近いか、大きな湖がある
2.水源から住宅地まで水を引き込むスペースがあり、その間の勾配が小さい
3.人口が少ない
を優先すべきだ。もちろん、隕石が海に落ちたら、沿岸沿いは全滅だが、水飢饉が起こる確率のほうが高いだろう(たぶん)。

■限定核戦争

アメリカとロシア、アメリカと中国との間で、核戦争が勃発すれば、全面核戦争はまぬがれない。一方、北朝鮮、インド、パキスタン、イスラエル、テロ組織が核兵器を使う場合、局所的な核戦争ですむだろう。この中で、懸念されているのが、テロ組織による核の使用だ。

理由は2つある。第1に、核爆弾の小型化がすすんだこと。現在のポータブル核兵器は、起爆装置と核物質がモジュール化され、トランクで持ち運ぶことができる(かなりでかいが)。第2に、自爆テロなら、核ミサイルや爆撃機のような大がかりはユニットは不要だ。核弾頭を爆発地点まで運んで、スイッチを押すだけでいい。また、旧ソ連が解体された後、核物質の盗難事件が何件も起きているという。ロシア政府も認めているので、たぶん、事実だろう。もし、それがテロリストの手にわたったら。

現在、毎日のように、地球上のどこかで自爆テロが起こっている。自分の命とひきかえに事を成すというのは、究極のモチベーションがあるわけで、そこを理解しない限り、問題は解決しない。今の対処療法では、核テロが起こっても不思議ではない。9.11事件をみれば明らかだ。一方、核兵器による自爆テロは、地域限定なので、住む場所さえ間違えなければ、命は助かる。テロの目的を考えれば、核爆発地点は、人口密集地帯、つまり、都市。核テロを避けるには、寒村に住むに限る

■パンデミック

1346年のある日、シチリア島にジェノヴァの商船が着岸した。ところが、不思議なことに、誰も船から降りてこない。乗組員のほとんどが死んでいたのである。死体に外傷はなく、皮膚が黒ずんでいたことから、人々は疫病ではないかと疑った。これが、歴史上有名な14世紀ヨーロッパのペスト大流行の始まりである。

その2年後、ヨーロッパ全土で数百万人が死んだ。イタリアの美しい街フィレンツェでは、6ヶ月の間に、町の半数が死んだ。この疫病が神よりくだされた罰だと信じた苦行者たちは、互いの肉体にムチうちながら、町から町へと移動した。その結果、ペストはさらに広がった。

このペストが発生したのはクリミア半島と言われている。時代を200年ほどさかのぼろう。1243年、チンギスハーンの子孫は、ロシアにキプチャク ハーン国を建国した。そこにチュルク語を話す部族がいたが、彼らとこの地に住むモンゴル人はタタールと呼ばれるようになった。

1346年、タタールはクリミア半島にあるジェノヴァの植民都市カッファを包囲した。そのとき、タタール側にペストが発生し、多数の犠牲者がでたのである。ところが、タタールはこの疫病を細菌兵器として利用した。ペストで汚染された死体を、カタパルトで城壁の中に撃ち込んだのである。城内はたちまち地獄と化した。そのとき、カッファを出航したジェノヴァ船は無事シチリア島についたが、乗組員は全員死んでいた。ペストに感染していたのである。

ヒトに感染するペストは、皮膚ペスト、腺ペスト、肺ペストに大別されるが、14世紀にヨーロッパを襲ったのは、腺ペストである。腺ペストは、股の下や脇の下のリンパ腺が腫れることからこの名がついた。放置すれば、30~75%が死ぬ。一般に、ペストはペスト菌に感染したネズミの血を吸ったノミに刺されると発症する。発症後、ペスト菌が肝臓やスイ臓に達し、そこで繁殖して、体中に毒素をまき散らす。結果、意識がなくなり、心臓の機能も低下、1週間ほどで死に到る。このときのペストの大流行は、1351年に収束したが、それまでに、ヨーロッパだけで、2500万人が死亡したといわれる。ヨーロッパの全人口の1/3である。

凄まじい犠牲者の数だが、別の事件も起こっている。ユダヤ人の虐殺である。人々が、ペストで次々死んでいく中、
「ユダヤ教徒が毒を井戸に投げ込んだ」
というウワサが流れ、ユダヤ教徒のせいにされたのである。この風聞を信じたキリスト教徒たちは、ユダヤ人をいたるところで虐殺した。たとえば、スイスのバーゼルでは、多数のユダヤ人が建物に押し込まれ、建物ごと焼き殺された。

こうして、14世紀に大流行したペストは、ヨーロッパに壊滅的打撃をあたえた。ただ、幸いだったのは、大航海時代が始まる前だったことである。もし、その後だったら、世界的な感染爆発(パンデミック)を引き起こしていただろう。また、このときのペストの流行は、その後の社会の仕組みまで変えた。農民の数が激減したため、農民の地位が向上し、封建制が崩壊したのである。結果、フランス ブルボン王朝に代表される中央集権国家体制へと時代は変わっていく。

■疫病が発生する理由

一方、14世紀のペスト大流行は起こるべくして起こったとも言える。11世紀、ヨーロッパでは大開拓時代が始まり、食糧生産は増え、人口も急増した。ところが、14世紀に入ると、食糧生産が伸び悩む一方で、人口だけが増加し、人口過剰になっていた。つまり、
「人口>食糧 → 栄養状態の悪化 → ヒトの抵抗力が低下」
疫病が大流行する温床ができあがっていたのである。さらには、ガイア(地球)の中に、人口を抑制する秘密の仕掛けがあり、それが起動したという仮説もある。とすれば、人口が66億人(2007年)に達し、まだ増加を続ける現状をみれば、ヒト族への新手の大リストラが起こるかもしれない。

疫病の中には、奇病と呼ばれるものもある。眠り病、この不気味な名の奇病が、1900年から7年間、ウガンダのヴィクトリア湖周辺で流行した。激しい頭痛と倦怠感から始まり、猛烈な睡魔と昏睡をへて、死に至る。結局、20万人のアフリカ人が死んだが、ウガンダの宗主国イギリスが思い切った隔離政策を行ったことで、事態は収束した。

眠り病は、ウィルスによって脳がおかされる病気で、アフリカの「トリパノソーマ病」として知られていた。元々は、地域限定の風土病だったのに、ヨーロッパ人がアフリカ大陸を開拓し、植民地化したため、病気が広がったのである。今流行のグローバリゼーションはこんな恐ろしいリスクを抱えている。

ここで、疫病に起因するカタストロフィーを列挙しよう。
1.エイズウィルスが突然変異で空気感染する。
2.鳥インフルエンザ(H5N1型)が突然変異し、ヒトからヒトヘ感染する。
3.根絶したはずの天然痘が復活する。
4.未知のウィルスが発生する。

どれが起こっても、パンデミック(感染爆発)は避けられない。地球が高速輸送手段で密結合されているからだ。この中で、発生が確実視されているのが「2.鳥インフルエンザ」だ。ここで、鳥インフルエンザがパンデミックに至るプロセスを見てみよう。
1.ヒト以外の動物で、新型ウィルスが発生(H5N1型の発生を確認)。
2.新型ウィルスが、ヒトに感染する形に変異(1997年香港で確認)。
3.新型ウィルスが、ヒトからヒトに感染する形に変異。
4.パンデミック

2008年1月時点では、上記の第2段階にとどまっているが、第3~第4段階へ進むのは時間の問題だと言われている。もし、パンデミックが現実に起これば、恐ろしい被害をもたらす。1920年に発生したパンデミック「スペイン風邪」では、感染者は6億人、死者は4000万人に達した。まだ、世界の人口が20億人、交通機関も未熟な時代である。現在のような交通機関が発達した環境で、新型ウィルスが発生すれば、数日で世界中に広がるという。日本だけで、最悪数百万人が死亡すると予測されている。こんな恐ろしい災難から身を守るには、ヒトがまばらで、ヒトの出入りが少ない寂れた寒村に住むしかない。

■崩壊する都市文明

今我々は、人類滅亡とまではいかないが、何千万、何億という犠牲者が出るかもしれないプチ カタストロフィーに直面している。一方、住む場所さえ間違えなければ、難を逃れることもできる。一般論として、水資源などの自然の恵みが豊富で、住人が少なく、人の出入りも少ない場所だ。たとえば、沿岸沿いの地方都市近郊。逆に、最も危険なのは「人口過密地帯=大都市」だろう。巨大台風、水不足、核爆発、疫病、何が起こっても、大都市なら、被害は加速する一方で、逃げ場もない。利便性と効率性を追求した結果、都市は冗長性を失い、かつてない危険にさらされている。

参考文献:
スチュワート・フレクスナー/ドリス・フレクスナー著 「世界大惨事事典」講談社

by R.B

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